ExxonMobil、ロシアのRosneftとのJVを解消

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ExxonMobilはこのたび、当局への届け出で、米国がロシアへの制裁を拡大したのに伴い、昨年後半にRosneftとのパートナーシップを止めることを決定したと明らかにした。

撤退に伴う税引後の損失は約2億ドルと少ないが、潜在的にオイルリッチのロシア領北極圏での採掘の希望を打ち砕くこととなり、Exxonの会長兼CEOであったRex Tillerson現国務長官の遺産を抹消することとなる。

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Tillersonは2011年に北極圏での掘削を期待し、Rosneftとの契約に調印した。Exxonの技術・経験と、Rosneftのこの地域で持つ権利を結びつけるものである。

Rosneftは2011年にBPとのグローバルな戦略的提携が破綻した後、BPに代わる提携先を探していたが、2011年8月30日にRosneftとExxonMobilは両社が北極海と黒海の開発、技術協力、米国その他での共同事業の実施で合意したと発表した。

両社はこれに先立ち、黒海の海底油田の開発で合意しているが、これを包含した。

2011/9/1 Rosneft、石油開発でExxonMobil と提携

Rosneft とExxonMobilは2013年6月、2011年に締結した戦略的協力協定の進展状況を発表した。両社は2012年4月16日、戦略的協力協定を実施する契約を締結した。 

1)黒海と北極海(Kara Sea)開発のJV

2つのJV、黒海(Tuapse Block)のTuapsemorneftegaz SARL、Kara SeaのKarmorneftegaz SARLが設立され、活動を開始する。
ともに、Rosneftが66.67%、ExxonMobilが33.33%を出資する。

これらの開発資金は合計で32億ドル以上とみなされており、大半はExxonMobilが負担する。

2)北海の7ブロック追加

本年2月、両社は戦略的協力の範囲を拡大、北海の7つのブロックを追加した。ロシア領北海のChukchi Sea、Laptev Sea、Kara Seaの鉱区で、約60万平方kmに及ぶ。

近くJVを設立する。

3)西シベリアのタイトオイル開発

西シベリアでタイトオイルを開発するJVの設立を準備中。

Rosneft が51%、ExxonMobil が49%出資する。

4)ロシア極東でLNGプラント建設

2013年末までにLNGプラントの立地、天然ガス液化技術、運営形態を決定する。
現在のところ、プラントはサハリン1に建設する見込み。

Rosneft のSechin社長は、サハリン1計画に30%出資するサハリン石油ガス開発(SODECO;石油公団・伊藤忠・丸紅等のJV)や同じく20%出資するインドのONGC Videshを参加させる可能性があると述べた。
また、
生産能力は年500万トンを想定しており、既にこれを上回る購入希望があるという。

Rosneft は6月21日、丸紅及びサハリン石油ガス開発(SODECO)との間でLNG供給の覚書(Heads on Agreement)に調印した。
丸紅に年間125万トン、SODECOに100万トンを供給する。

これらに加え、両社は6月11日に、Arctic Research Centerの設立と、世界中の他の地域で技術を共同利用する契約に調印した。

Arctic Research Centerの出資比率はRosneftが 66.67%、ExxonMobil が33.33%で、第一段階の費用200百万ドルはExxonMobilが負担する。第二段階の250百万ドルは両社が折半する。

2013/6/24 Rosneft とExxonMobil、戦略的協力関係を促進 

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しかしながら、ロシアによるウクライナ侵入、クリミヤ半島併合を受け、米国は2014年に制裁に踏み切った。

既存のエネルギー関連の取引には影響を与えないが、Rosneft のCEOのIgor Sechin との事業を全て禁止した。

Exxonは制裁の例外扱いを申請したが、認められなかった。米財務省は昨年、ExxonがSechin との新しい契約に調印したとして200万ドルの罰金を科した。(Exxonは不当として訴訟)

米国は2017年に、2016年の米大統領選挙に不当に介入したとして、ロシアへの制裁を拡大した。

Tillerson国務長官は、ロシアがウクライナ政策を元に戻し、クリミヤを返却するまでは制裁を続けると強硬である。

ここにきて、ExxonMobil はRosneftとのパートナーシップの解消に踏み切った。

これに対し、Rosneftは、将来 Exxonがプロジェクトに復帰するのを期待するとしている。


なお、両社はサハリン-1計画に参加しているが、ExxonとRosneftは、今回のExxonの撤退はこの計画には影響を与えないとしている。

事業主体 ・エクソンネフテガス社
 (米、エクソン・モービル子会社、オペレーター、30%)
・サハリン石油ガス開発(株)(通称:SODECO)
 (日、石油公団・伊藤忠・丸紅等 出資30%)
・ONGCヴィデッシュ社(インド、20%)
・サハリンモルネフテガス・シェルフ社(ロシア、11.5%)
・ロスネフチ・アストラ社(ロシア 8.5%)
投 資 額 約120億ドル以上
開発鉱区 オドプト、チャイヴォ、アルクトン・ダギ
推定可採
埋 蔵 量
①石油    約23億バレル
②天然ガス 約4,850億立方メートル


<石油>サハリン島を東西に横断し大陸側に至るパイプラインで運搬、そこからタンカーで日本等へ輸出
 

<ガス>日本へは、北海道の内陸の一部(石狩平野)を経由する海底パイプラインにより運搬する予定であったが、 パイプライン敷設が漁業補償問題で進んでいないほか、最大需要家になるとみられた東京電力も購入に難色を示したため、この計画は白紙となった。
エクソンは中国と交渉。

  2006/8/31 サハリン原油の初購入

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