建設石綿訴訟の控訴裁判決、一人親方も救済

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1945年頃から2010年までに建設現場で働き、建材用アスベスト(石綿)を吸って肺がんや中皮腫などになったとして、首都圏の元建設労働者や一人親方と遺族ら354人が、国と建材メーカー42社に計約117億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が3月14日、東京高裁であった。

1審の東京地裁は2012年12月、原告170人に総額10億6394万円の賠償を命じた。
一人親方については、国は責任を負わないとし、メーカーについては、
共同不法行為は成立しないとした。屋外作業については、危険性を容易に認識できたと言えないとした。

今回の控訴審では、1審判決から賠償額を増額し、「一人親方」(被災者ベースで150人ほど)を含む327人に計約22億8140万円を支払うよう国に命じる判決を言い渡した。

一人親方については、「建設現場で労働者とともに作業に従事した一人親方らは法律上、保護される」と指摘した。労働安全衛生法の趣旨などに照らし、有害物の規制や職場環境の保全については、労働者以外も保護対象になると判断した。

メーカーへの請求は、「健康被害との因果関係が立証されていない」などとして、棄却した。

屋外作業に関わっていた原告も救済の対象にならなかった。

判決は、1972年頃には、少量の石綿粉じんにさらされても中皮腫を発症し得るとの医学的知見が集まっていたことなどから、「国は屋内で建設作業に従事していた労働者らについて、遅くとも1975年10月(改正特定化学物質障害予防規則施行日)には防じんマスクの着用などを義務付けるべきだった」と指摘した。
1審で明確に示されなかった終期を2004年9月30日(改正労働安全衛生法施行令施行日前日)とした。

1審判決では、遅くとも1981年以降に対策をとっておれば、多くの被害を防止できたと結論づけており、今回、国の責任期間を6年早めた。

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地裁段階ではこれまでの7件、高裁では今回を含め2件の判決があった。控訴審はほかに札幌、大阪、福岡の各高裁で係争中で神奈川訴訟は最高裁で争われている。

2012年5月の横浜地裁は国もメーカーも無罪としたが、他はすべて国の責任を認めた。

建材用アスベストについては、一人親方について国の賠償責任を認めたのは初めて。

メーカーについては、2016年1月の京都地裁、2017年10月の横浜地裁、
2017年10月の東京高裁判決で一部メーカーの責任が認められている。
他は、発症原因のメーカーが特定できないなどとして認めていないが、2017年2月の札幌地裁は国と建材メーカーによる損害補償制度の創設の必要性を指摘した。

過去の判決については、下記を参照。

2017年10月30日 建設現場でのアスベスト被害で高裁で賠償命令、一審逆転 

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