テーマは、中国の、技術移転・知財・イノベーションに関する、法律・政策・慣行・行動についての通商法301条による行動となっている。
Presidential Memorandum on the Actions by the United States Related to the Section 301 Investigation
内容は次の通り。
大統領は2017年8月14日、不公正貿易での制裁も視野に、中国に対する通商法301条に基づく調査を開始するよう指示した。
米通商代表部(USTR)は8月18日、中国による知的財産権の侵害を対象に通商法301条に基づく調査を開始したと発表した。
2017/8/18 米大統領、通商法301条で対中調査指示
USTRは下記の調査結果を大統領に報告した。
1) 中国は、JV規制、出資制限、その他の投資制限などの外国企業の中国での所有制限を使って、米国企業から中国企業への技術移転を強要している。
また、監査やライセンス手続きなどを使い、技術移転を求め、米国の投資や技術の価値を下げ、米国企業のグローバルな競争力を弱めている。
2) 中国は、技術供与の条件に制限を加えるなどにより、米国企業の投資や活動に重要な制限を加えたり、介入している。
結果として、米国企業は、中国側をアンフェアに利する条件でライセンスをすることとなる。
3) 中国は、最新の技術、知財を得られるよう、中国企業による米国企業や資産への投資・取得をシステマチックに行い、中国政府の産業計画に重要と思われる産業への大規模技術移転を行っている。
4) 中国は米国企業のコンピューターネットワークに不法に侵入している。それにより、中国政府は知財、事業秘密、秘密の情報にアクセスしている。これは、科学技術の進歩、軍の近代化、経済発展といった中国の戦略開発目的を支えている。
このため、下記を命じる。
USTRは、米国の通商を制限するような中国の不合理な、差別的な行動、政策、方針に対応する通商法301条の下での全ての行動をとること。
その行動に、中国製品への関税の増加を含めるかどうかを検討すること。
このため、USTRは15日以内に対象となる候補の製品と追加関税率のリストを公表すること。
その後、関係省庁と協議のうえ、最終リストを公表すること。
大統領令の60日以内に、状況を大統領に報告すること。
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USTRは米経済の被害額を年500億ドルと断定した。
USTRは15日以内に制裁関税を課す中国製品のリストを作成するが、約1300品目を想定している。
ホワイトハウス高官は、制裁対象の製品は、知財侵害の被害額と同規模の500億ドルと説明したが、トランプ大統領はその後に「600億ドルになるだろう」と述べた。
USTRによると、対象製品に航空宇宙や情報・通信技術、機械などが含まれるという。リストを向こう「数日」中に公表する。
これらに25%の関税を課す。
大統領は同時に、米財務省に中国企業の対米投資を制限するよう指示した。同省は60日以内に具体策を決める。中国の政府系企業などが最新技術の確保を狙って米国企業を買収するのを避ける狙いがある。
大統領はさらに、中国の知財侵害をWTOに提訴するよう要求した。
大統領は、中国によって「知的財産権が著しく侵害される状況が続いており」、貿易への影響は年間で数千億ドルに達すると指摘した。ホワイトハウスで署名する際に、「多数のうちの第1弾だ」と記者団に語った。
As a candidate, I pledged that if elected I would use every lawful tool to combat unfair trade, protect American workers, and defend our national security.
Today, we took another critical step to fulfill that commitment.
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これに対し、中国政府は猛反発している。
中国大使館は「強烈な不満と断固とした反対」とする声明を発表した。「中国は貿易戦争を望まないが、恐れてもいない。あらゆる挑戦に対応できる自信と能力がある」とし、「米国は慎重に政策を決め、米中双方の経済貿易関係を危うくしないよう求める。他人を傷つけようとして自らを害する結果となることを避けるべきだ」と制裁関税の発動を見送るよう求めた。
元中国商務部次官は、「対中貿易戦争の宣戦布告だ」と述べ、「中国は貿易戦争を恐れていないし、避けようとしないだろう。われわれには自動車輸入、大豆、航空機、半導体の分野で、反撃できる多くの手段がある。トランプ大統領はこれが極めて悪いアイデアであり、勝者はおらず、両国にとって良い結果は出ないと知るべきだ」と指摘した。
米国が通商拡大法232条に基づき鉄鋼やアルミニウムに追加関税をかけることへの対抗措置としては、商務部は3月23日、米国から輸入するワインやドライフルーツ、豚肉などを対象に最高25%の関税を上乗せする準備をしていると発表した。対象は米国の2017年の輸出額で約30億ドル分。
鉄鋼・アルミの輸入制限の撤回や中国側が受けた損失の補償を求めて交渉し、まとまらなければ先ず、ワイン、果物、ナッツ、継目なし鋼管など120品目(輸入額10億ドル)を対象に15%を上乗せする。
その後もさらに交渉を続け、決裂すれば、豚肉、アルミニウムのスクラップなど8品目(輸入額20億ドル)を対象に25%を上乗せする。交渉期限は明らかにしていない。
この措置は、緊急輸入制限(セーフガード)への対抗措置として、WTO協定でも認められている。
鉄鋼やアルミニウムの輸入制限は米東部時間3月23日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)に発動された。同時刻以降に米国に輸入された製品から追加関税を徴収する。
ホワイトハウスはカナダ、ブラジル、メキシコ、EU、オーストラリア、アルゼンチン、韓国への関税を5月1日まで猶予する方針を示した。完全に除外するかどうかは各国と貿易問題などを交渉して決める。
日本は除外対象にならなかった。
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