TPP-11 に署名

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米国を除く TPP 参加11カ国は3月8日午後、チリのサンティアゴで新協定「TPP 11」に署名した。これを受け、各国は国内手続きに入る。採択した閣僚声明では「迅速に発効させるために国内手続きを完了する決意」と強調した。

正式名称は包括的及び先進的なTPP」(CPTPP: Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership)で、世界のGDPの13%、貿易額の15%を占める。

なお、現時点で、韓国、台湾、インドネシア、タイ、フィリッピン、コロンビア、英国がTPP-11に関心を示している。


付記 5月18日午後の衆院本会議で与党などの賛成多数で可決した。

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TPP 参加12カ国は2016年2月4日、ニュージーランドの最大都市オークランドで協定文に署名した。

日本は2017年1月20日(Trump大統領の就任日)に、閣議決定を経て、協定の国内手続の完了をニュージーランドに通報した。
ニュージーランドは2017年5月11日、手続きを完了した。(2国目)

参加12カ国は10月5日の閣僚会合で、協定を発効する条件として、
・すべての参加国が署名後2年以内に議会での批准手続きを終えるか、
・2年以内に参加国すべてが手続きを終了できなかった場合、TPP全体のGDPの85%以上を占める、少なくとも6か国が批准手続きを終えることと決めた。

発効には合計GDPの85%以上が必要なため、米国(60.4%)と日本(17.7%) の批准は必須となる。

2015/10/13 TPP の発効条件

その米国のDonald Trump 次期米大統領は2016年11月21日、ビデオメッセージを発表し、2017年1月20日の就任初日に「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)から脱退する意志を表明する」と宣言した。

2016/11/23 Trump 次期米大統領、「就任初日にTPP離脱通告」を確認

Trump大統領は2017年1月23日、TPPからの離脱を宣言、米通商代表部(USTR)は1月30日、TPPからの離脱を参加各国に書簡で正式に伝達した。

Presidential Memorandum on January 23, 2017
 
Presidential Memorandum Regarding Withdrawal of the United States from the Trans-Pacific Partnership Negotiations and Agreement

  ・TPPから永久に離脱する。(再交渉の可能性も明確に否定)
  ・米国の産業を振興し、労働者を保護し、賃金を上昇させる 2国間貿易交渉を始める。

これにより、参加12カ国の名目GDPの85%以上の6か国の批准による発効は不可能となった。

その後、日本が中心となり、米国を除く11カ国での交渉を行った。

米国を除くTPP署名11カ国は2017年11月11日、新協定(TPP 11)について大筋合意の詳細な内容を発表した。

一連の交渉では「凍結項目」の取り扱いが最大の焦点となった。

各国が米国に配慮し譲歩を余儀なくされた計60項目超を米国が復帰するまで「凍結」するよう要求したが、調整の結果、最終的に20項目の凍結が決まった。
このうち11項目は医薬品の開発データの保護期間など知的財産分野だった。

農産物などの輸入関税の撤廃・削減などは変更せず。
 また、繊維で関税撤廃・削減の対象を厳しく制限する原産地規則に関する項目も含まれなかった。

・4項目は継続協議(2018年1月に下記の通り解決)

マレーシア:国有企業の優遇策の制限
ブルネイ:石炭産業のサービス投資ルール
カナダ:文化保護のための国内企業優遇
ベトナム:労働の紛争処理 

・ 農産物の緊急輸入制限(セーフガード)の発動基準などは発効後に見直し可能

・ 新協定は11カ国が署名後、6カ国の国内承認手続き完了してから60日後に発効
  (元の協定にあった「参加国のGDP総額の85%以上」という条件は削除した。)

・ 新協定の正式名称は「包括的および先進的なTPP」(CPTPP: Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership

2017/11/17 TPP 11 と RCEP

米国を除く環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加11カ国は2018年1月23日、前日に続いて首席交渉官会合を東京都内で開き、11カ国による新たな協定(TPP 11)の正式合意にあたる署名式を3月8日にチリで開催することで合意した。

継続協議の4項目のうち、
マレーシアとブルネイは「凍結」で決定 (「凍結」は22項目に)
カナダとベトナムは、
各国との間でルールの適用を一定期間猶予する内容のサイドレター(補足文書)を交わすことで決着した。

2018/1/27 カナダ、TPP 11 署名

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新協定では今後の新規加盟国の扱いについて、前文で「この協定への加入を歓迎する」と表明している。
そのうえで、新たに加入する際の条件として第5条で「締約国が合意する条件に従うこと」と規定している。


現時点で、韓国、台湾、インドネシア、タイ、フィリッピン、コロンビア、英国がTPP-11に関心を示している。

米国でも、TPP離脱で農産物、畜産物などで豪州、カナダ、ニュージーランドなどに市場を奪われる懸念が強い。

トランプ大統領は2018年2月23日、豪首相との会談後の記者会見で、
TPPは「米国にとって良くない協定」と改めて批判、米国にとって良い内容になれば復帰すると表明したが、多国間よりも2国間の協定を優先する立場も示した。

仮に米国が新協定に参加する意向を示した場合は、すべての締約国の合意を得なければ、事実上加入できない仕組みになっている。

茂木経済再生担当大臣は、「TPPは、極めて高い水準であるとともに、各国のさまざまな利益を調節した、いわばガラス細工のような協定だ。一部だけを取り出して再交渉する、修正するということは極めて困難だ。ただアメリカの考えも機会を見て聞いてみたいと思っている」と述べた。

なお、米国のTPPへの復帰の見込みが無くなった場合には、締約国が協定内容の見直しを要請できるとする「見直し条項」が加えられている。

日本が参加国を対象に設定した乳製品などの輸入枠は、米国の参加を前提とした規模であった。

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