武田薬品、バイオ医薬品メーカー Shire plc に買収提案を検討 

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武田薬品工業は3月28日、 アイルランドに本拠を置くバイオ医薬品メーカーのShire plc に対する買収提案を検討していることを明らかにした。

何らかの提案を行うことを検討していることは事実だが、その検討はごく初期かつ調査段階であり、現時点においてShire社の取締役会に対していかなる提案も行っていないとしている。
英国の企業買収関連法に基づき、武田薬品は4月25日までに提案を行うかどうかを表明する必要がある。

買収提示額は500億ドル(約5兆3000億円)近くに上る可能性があり、日本企業の海外企業買収としては過去最大級で、実現すれば武田薬品は世界大手の一社に躍進することになる。

Bloombergによれば、過去の買収は下記の通り。

買収企業 買収先 億ドル
SoftBank Sprint 397
SoftBank ARM Holdings 300
日本たばこ Gallaher 190
サントリー Beam 156
武田薬品 Nycomed 137


2011/5/23 武田薬品、Nycomed社を買収


武田薬品は、事業成長を加速するため、重点領域(消化器系疾患領域、オンコロジー領域、ニューロサイエンス領域およびワクチン)を中心とした様々な戦略オプションを常時検討している。

同社では、Shireの買収は次のようなメリットがあり得ると考えている。

  • 同社の重点領域である消化器系疾患領域、オンコロジー領域、ニューロサイエンス領域の強化
  • 稀少疾患における世界トップクラスのShire社のフランチャイズが加わることによる、「患者さんに革新的な専門分野の治療薬をお届けするリーディングカンパニーになる」というビジョン達成の促進
  • 重点領域にフォーカスする研究開発戦略のさらなる強化
  • 重点領域における高分子薬を中心とした後期開発パイプラインの強化による、パイプラインや創薬能力の補強
  • 米国市場での成長機会を見込んだ市場戦略バランスの最適化
  • 両社の強固な財務プロファイルによる財務的バリューの向上

Shire は、「希少疾患の患者さんのため尽力するバイオテクノロジー分野のグローバル・リーディング・カンパニーです」と称している。

1986年に何人かの起業家が、多くのアンメット・メディカル・ニーズを満たす方法を探るため、Shire を設立し、まず、骨粗しょう症の治療または予防を望む患者向けにカルシウムの様々なサプリメント製品を発売した。

1990年代半ばには、新たな領域に事業を拡大し、臨床パイプラインの開発を通じて新製品を市場に導入するため、最初の戦略的買収に乗り出し、以来、20年あまりの間に20社以上と合併し飛躍的な成長を続けてきた。

買収の歴史:

買収相手 主要製品、分野
2005 Transkaryotic Therapies, Inc. ソーム蓄積疾患治療薬:生物学的製剤の開発、希少疾患に注力
2007 New River Pharmaceuticals ADHD(注意欠陥・多動性障害)
2008 Jerini 遺伝性血管性浮腫(Hereditary Angioedema )の治療薬開発
2013 SARcode 眼科領域に参入
2013 ViroPharma 遺伝性血管性浮腫治療薬
2016 Dyax
2015 NPS 消化器内科領域の事業を強化
2016 Baxalta 3つの治療領域(血液、免疫、腫瘍)に進出
希少疾患の患者のため尽力するバイオテクノロジー分野のグローバル・リーディング・カンパニ
ーに


Baxaltaの買収・合併は、Shire にとって過去最大規模の買収で、合併を通じて新たに3つの治療領域(血液、免疫、腫瘍)に進出し、従業員数は3倍以上に増え、市場をリードするいくつかの医薬品を獲得し、臨床開発プログラムと臨床パイプラインを拡大した。

2015/1/17 アイルランドの製薬 Shire Pharmaceuticals 、米バイオ医薬品 NPSを買収

2015/8/8  アイルランドのShire Pharmaceuticals、Baxalta に買収提案


なお、Shire は2014年7月、2013年初めに米Abbott Laboratoriesからスピンオフして誕生したAbbVie Inc. に買収されることで合意したが、AbbVie は2014年10月15日、Shire Pharmaceuticals 買収を撤回すると発表した。

米政府が9月22日に節税目的の本社移転の抑制を狙った新規則を発表したため、国外に会社を設立することを含む買収効果が不透明になったと判断したもの。
AbbVie による買収案の撤回により、Shire は違約金16億ドルを受け取った。

2014/10/20 買収・合併による節税目的の海外移転禁止の動き強まる

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