米財務省は4月23日、ロシアのアルミ大手 UC Rusal に対する経済制裁を一部猶予すると発表した。
米企業に求めるUC Rusal との取引停止の発動時期を6月5日から10月23日に延ばした。UC Rusal と取引する米国以外の企業に対する二次制裁も課さない。
世界生産の1割近くを担うUC Rusal の供給が減るとの観測から市場では価格が高騰し、フランスやドイツの産業界が制裁の適用除外を求めていた。
財務省は、「米国のパートナー、同盟国への影響を考え」修正したとしている。欧州に配慮することでロシアに対する足並みをそろえる狙いがあるとみられる。
付記
トランプ政権は2018年12月19日、ロシアのアルミニウム生産会社、ルサールの大株主である新興財閥のオレグ・デリパスカ氏が持ち分を大幅に減らす合意が成立したことを受け、一旦発動した同社への制裁を解除する方針を明らかにした。米財務省によると、議会が阻止しない限り、30日後に実施される。
財務省は2019年1月27日、ルサールと同社大株主の複合企業 En+ グループ及び電力大手ユーロシブエネルゴの3社を制裁対象から外すと発表した。
ルサール制裁でアルミ価格が高騰し、欧州経済などに悪営業を与えることを配慮した。
米財務省は3月15日、2016年大統領選への介入とサイバー攻撃に関与したとして、ロシアの5団体と19人を対象に経済制裁を科すと発表した。
制裁対象の個人・団体は、米国内の資産が凍結され、米国民は制裁対象者・団体との取引が禁じられる。
更に、米財務省は4月6日、ロシアが2016年の大統領選にサイバー攻撃などを通じて介入したことに加え、クリミア半島やウクライナ、シリアで続くロシアの攻撃姿勢を挙げ、プーチン大統領とつながりを持つオリガルヒ(新興財閥)7人や関係企業12社に対する追加制裁を発表した。企業や政府関係者を対象に米企業との取引を禁止する。
https://home.treasury.gov/news/featured-stories/treasury-designates-russian-oligarchs-officials-and-entities-in-response-to
そのなかに、プーチン政権に近い新興資本家のOleg Deripaskaと、同氏が率いるアルミ大手のUC Rusal が入った。
Oleg Deripaskaについて、財務省は「腐敗したロシアの制度から巨額の富を得てきた」と、理由を説明している。
Deripaska has said that he does not separate himself from the Russian state. He has also acknowledged possessing a Russian diplomatic passport, and claims to have represented the Russian government in other countries. Deripaska has been investigated for money laundering, and has been accused of threatening the lives of business rivals, illegally wiretapping a government official, and taking part in extortion and racketeering. There are also allegations that Deripaska bribed a government official, ordered the murder of a businessman, and had links to a Russian organized crime group.
同氏関連では、UC Rusal の他に、資産管理会社のBasic Element Limited、投資会社のB-Finance Ltd.、エネルギー関連企業でUC Rusal の親会社のEN+ Group、電力会社のEuroSibEnergoが制裁対象となっている。
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2000年3月にOleg Deripaska等がアルミ精錬所や原料のボーキサイトを産出する鉱山を統合して Rusal を創業した。
2006年に、アルミ製造ロシア第2位のSUALと、スイスの商社Glencoreのアルミニウム部門を約300億ドルで買収し、Rusalと統合して、UC Rusal とした。
新会社はボーキサイト鉱山、アルミナ、アルミ精錬、アルミフォイル生産設備を所有する。
出資比率は RUSAL 66%、SUAL 22%、Glencore 12%であった。
2006/9/5 ロシアのアルミ最大手RUSAL、同国2位のSUALを買収
これにより、UC Rusalは当時の世界1位のAlcoaと並んだ。
その後、中国勢が急伸し、現在のシェアは下記の通り。
なお、UC Rusalは、世界最大手のニッケルメーカーのMMC Norilsk Nickelの株式の25%を保有している。
少し古いが、2009年のニッケル生産量は30万1千トンで世界全体の22%、パラジウム生産量は280万オンスで世界の38%であった。
米国によるUC Rusal制裁の影響は大きい。
London Metal Exchangeや米国のChicago Mercantile ExchangeグループはUC Rusal製アルミの取り扱いを止めた。この結果、国際市場では需給の逼迫懸念が強まった。
アルミ相場は先週、追加制裁発表前に比べて一時3割以上も急騰し、ほぼ7年ぶりの高値をつけた。ニッケルやパラジウムの価格も上昇した。
日本はアルミ新地金の供給をすべて輸入に頼り、そのうち15%程度をロシアから調達している。
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