ZTEは1985年に深圳市中興半導体有限公司(Zhong Xing Telecommunication Equipment Company Limited)として設立され、以降、携帯電話網設備、携帯電話端末、無線製品、ネットワークプロダクトなどの開発および生産を主に手がける。
ZTEは米国でAT&T やT-Mobile US、Sprint など携帯電話大手にスマートフォンを供給する一方、Qualcomm、Microsoft、Intelなど米企業の製品を採用している。
Qualcommの半導体などスマートフォンに不可欠な部品を含め、米サプライヤーから技術を得られなくなる。禁止期間の7年間は次世代となる第5世代無線通信技術への移行で重要な時期と重なる。
今回の措置は同社に深刻な打撃を与えるとみられる。ハーシュホーン元商務次官は「ZTEが問題を解決できない場合、廃業に追い込まれる可能性が高い。米国外の銀行や企業でさえ、多くがZTEとの取引を望まない」と指摘した。
また、米企業はチップセットなどの対象製品をZTEに直接輸出することも、第三国を通じて輸出することも、直ちにできなくなる。
付記
台湾経済部はこのほど、米国の制裁に合わせ、中興通訊(ZTE Corporation)を輸出制限の対象に指定した。台湾企業が同社に輸出する場合は許可が必要となる。
台湾のMediaTec (聯發科技) は同社への製品供給を一時停止した。
日本では、ZTEジャパンが2008年に設立され、日本の消費者および通信事業者向けに、最先端の携帯端末やスマートフォン、有線・無線の通信ネットワーク・ソリューション、データカード等の製品とアフターサービスを提供している。
なお、Qualcomm、Microsoft、Intel などの代わりに日本企業がZTEに製品を供給するのではないかとの報道が米国の一部にあるが、トランプ政権の反感を買うことを恐れ、積極的に供給する企業はないと思われる。
別途、米連邦通信委員会(FCC)は4月17日、国内の通信会社に対し、安全保障上の懸念がある外国企業から通信機器を調達するのを禁じる方針を決めた。対象企業は今後詰めるが、華為技術(Huawei Technologies)と中興通訊(ZTE Corp.)の中国大手2社を念頭に置く。
新規制は、全国に通信回線を普及する目的で設けられた同委員会の補助金を使う通信会社が、安保上の懸念がある外国企業の製品 を買うのを禁じる。企業など一般から意見を募って禁止対象の企業や製品を確定し、その後に規制を導入する。
FCCの委員長は「敵対的な外国勢力は通信機器に仕掛けたバックドアを使ってウイルスを侵入させ、米国人から情報を取ったり基幹インフラを攻撃したりできる」と述べ、規制の意義を強調した。
付記
米国防総省は5月3日、全世界にある米軍基地にある店舗で、中国の華為技術(Huawei)と中興通訊(ZTE)の携帯電話の販売を取りやめたことを明らかにした。安全保障上のリスクがあるためだという。軍人には基地の外でも中国製品の使用に注意するよう求めた。
米軍基地の店舗に対して4月25日に製品を引き上げるよう指示した。米情報当局は盗聴などのリスクがあると指摘しており、米軍の作戦などの情報が漏れることを警戒した。
米国政府や議会はHuawei などの通信機器が中国政府のスパイ活動に使われる懸念があると疑っている。
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米商務省は2016年3月、ZTEが2010年にイランや北朝鮮に禁輸措置品を輸出し、その事実を隠ぺいしたとして、輸出禁止の対象とした。商務省は半月後に、ZTEが社内コンプライアンス体制の改革や情報提供を行うことを条件に規制の一部緩和措置を発表した。
輸出禁止措置の4度目の猶予期間中の2017年3月に、ZTEは米国による対イラン制裁措置などに違反し、米国製品や技術をイランに輸出していたことで有罪を認め、8億9000万ドルの罰金支払いや、さらなる違反があった場合に3億ドルの追徴金を支払うことで合意した。 更に、幹部社員4人を解雇し、他の社員35人については賞与減額か懲戒処分とすることを約束した。
同時に、これらの条件に反したり、新しく米国輸出管理規則(Export Administration Regulations) に違反した場合、米企業によるZTEへの製品販売の7年間禁止することに同意した。
しかし、同社は今年3月、幹部4人を解雇したものの、他の35人については賞与減額も懲戒も行っていなかったことを認めた。
ロス商務長官は声明で、ZTEが同問題を巡り、米政府に繰り返し虚偽の報告を行っていたことを指摘した。
中国商務省は4月17日、質問に対し、次のように述べた。
この米国の措置に中国も留意している。中国は中国企業に対して、海外でビジネスを展開する過程で、現地の法律、政策を遵守し、合法的にビジネスを展開するようにと一貫して求めている。
中興通訊は米国企業数百社と提携し、貿易、投資を広く展開し、米国で数万人の雇用を創出している。米国が法律、規則に基づき、適切に問題を処理し、企業のために、公正、公平、安定した法律、政策環境を整えることを願っている 。
当部は今後も事態の進展を見守り、必要な対策を講じ、中国企業の合法的権益を守る用意を随時行っていく。
付記
中興通訊がこの2年間、輸出に関する法律を遵守してきたことや、いかに米国に投資して進歩をとげてきたかを、米商務省が無視している。総裁直属のコンプライアンス管理委員会を設立したり、ベテランの輸出管理コンプライアンス専門チームを設立したりするなどして、法令遵守に努めてきた。
また、指摘を受けた問題点をすぐに改善し、米国の法律事務所に調査を依頼したにも関わらず、米商務省は調査結果を待たずに最も厳しい制裁を下した。
「このような不公平な扱いを受け入れることはできない。」輸出品規制措置は中興通訊の生存を脅かすだけでなく、米国企業を含む提携企業の利益にも影響を及ぼす可能性がある。
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