LG Chem、中国の浙江華友コバルトとリチウムイオン電池材料のJVを設立

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LG Chem は4月11日、リチウムイオン電池用のコバルトの供給を確保するため、浙江華友コバルト(浙江華友鈷業股份有限公司)と2つのJVを設立することで合意したと発表した。

LGは合計225百万ドルを投じて2020年までに中国にプレカーサーと正極(カソード)のJVを設立し、年間4万トンを生産する。

製造したプレカーサーと正極は、中国とポーランドのリチウムイオン電池工場で使用する。

リチウムイオン電池では、正極にはリチウムの酸化物(コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウムなど)が、負極には黒鉛(グラファイト)などが使用される。

このうち、コバルト酸リチウムは、最もバランスの取れた正極材料として、モバイル機器を中心に幅広く使用されているが、コバルトが高価でありかつ価格変動が大きいのが問題である。また熱暴走の危険があるため車載用への応用は安全性に課題があるといわれている。

1979年に水島公一博士が、リチウムイオンを吸収・放出するリチウムコバルト酸化物(LixCoO2)が電池陽極として活用可能であることを示した。これがリチウムイオン電池の技術的土台となり、今日では携帯電話・デジタルカメラ・ハンディビデオ・ラップトップPCなど、様々なポータブル電子機器に搭載されている。

浙江華友コバルトは、子会社の剛果東方国際鉱業(CDM)がコンゴで採掘するコバルトを中国で精製し、正極材メーカーの中国の湖南杉杉(Pulead)や北大先行科技産業(Shan Shan)、韓国のL&F新素材などに供給している。

LG Chem は浙江華友コバルトと組むことで、コバルトの安定供給を確保する。

お、コバルトを扱うGlencoreは2018年3月、中国の資源会社の格林美
(GEM Co., Ltd)に同社が販売するコバルトの約3分の1を販売することで合意した。
2017年の
Glencoreのコバルト生産量は27,400トン、販売数量は42,000トンであった。
両社の販売契約によれば、2018年は13,800トン、2019年は18,000トン、2020年は21,000トンとなっている。

格林美は中国の正極メーカーに供給する。

リチウムイオン電池用のコバルトは、下記の通り、主にコンゴ民主共和国 (旧 ザイール)で生産され、中国とフィンランドなどで地金に生産される。

浙江華友コバルトは子会社剛果東方国際鉱業(CDM)がコンゴ民主共和国で生産するコバルト原石を中国で地金に生産している。

Glencore
は 傘下のKatanga Miningコンゴ民主共和国で生産するコバルト原石を購入し、フィンランド などで地金に生産している。

Glencore傘下のKatanga Miningは2017年11月、事業を展開しているコンゴ民主共和国で、2019年に(2017年生産予定量のほぼ倍増の)最大34千トン前後のコバルトを産出する計画だと発表した。

Glencoreは、自動車・バッテリー事業者からの需要増でコバルト価格が上昇していることを受けて、コバルト生産に照準を定めている。

Glencoreによる格林美への販売で、世界のコバルトのほとんどが中国に買い占められることとなる。

コバルトの供給不足の懸念を背景に、2018年2月には、Apple Inc.が年間5~6千トンのコバルトを5年間以上にわたって直接購入すべくサプライヤーと交渉していると報じられた。
Glencoreは、コバルトについて話をしている数社のなかにAppleが含まれていると述べた。

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コバルトの主要産出国は、コンゴ民主共和国、カナダ、中国、ロシア、ザンビア、オーストラリアだが、生産量ベースで約4割、埋蔵量ベースで4〜6割がコンゴ民主共和国に偏在している。

コバルトのほとんどは銅やニッケルの副産物で、これらの価格が低迷すると、コバルトの供給も絞られる。

2013年 鉱石生産量

  コンゴ民主共和国 57,000t、カナダ 8,000t、中国 7,100t、合計 120,000t

2013年 地金生産量

  中国 36,062t、フィンランド 10,010t、カナダ 5,559t、合計 85,904t

浙江華友コバルト子会社の剛果東方国際鉱業(CDM)は2015年にコンゴ産のコバルト(手掘りのコバルトと産業鉱山のコバルトの両方)を7万2000トン輸出し、コンゴ国内で3位の鉱山会社となった。また、業界のアナリストによると、コンゴ産の手掘りのコバルトの輸出量は剛果東方国際鉱業が断トツの1位とされる。

コンゴ産の20%は手掘りで、狭い坑道の中で採掘する労働者が、致命的な事故に遭ったり、深刻な肺疾患にかかったりするリスクにさらされている。
子供がマスクなどの保護具も身に着けないまま、手掘りで働かされている。

Amnesty International は、同国で採掘されたコバルトが、中国系の加工会社、華友コバルトに渡るまでを追跡した。

Amnestyは2017年11月、コンゴ民主共和国の労働者や子どもたちが劣悪な環境で採掘したコバルトが、鉱業、精錬、部材メーカー、バッテリーメーカーというサプライチェーンを経て、電子機器や自動車の大手メーカーの製品に入り込んでいると発表した。

Amnestyは2年前、同国のコバルトをめぐるサプライチェーンを調べ上げ、いずれの企業もその人権デューディリジェンスが不十分であることを指摘したが、この2年で改善があったのはほんの一握りの企業に過ぎず、多くの企業は、同国のサプライチェーンを調べるというような基本的対応さえも手をつけていなかったとしている。

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