米、パナソニックと子会社に不正会計と賄賂で制裁金

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米証券取引委員会(SEC)と米司法省は4月30日、パナソニックと米子会社Panasonic Avionics に対し、海外腐敗行為防止法違反などで、計280.4百万ドルの制裁金を科すと発表した。
両社は支払いに同意している。


パナソニックは、子会社の海外汚職行為防止法(Foreign Corrupt Practices Act)違反と不正会計違反で、SECに不当利益返還で143百万ドルを支払う。

Panasonic Avionics は司法省に
海外汚職行為防止法違反の罰金として137.4百万ドルを支払う。
Panasonic Avionics はDPA(deferred-prosecution agreement)を結んだ。これは、罪を認め、検察当局と合意した条件を一定期間遵守すれば、検察官は刑事訴追を見送るというもの

パナソニックは2017年2月に、米司法省とSECから調査を受けていると公表。調査に全面協力し、解決に向けた協議を続けていた。
同社は、今回の制裁金の支払いは2017年10~12月期までに引き当て済みであると発表した。

SECは次の点を指摘している。

航空機向けの娯楽システムを提供するPanasonic Avionics は、国営航空会社との7億ドル以上の2つの契約成立のため、国営航空会社の政府職員を自社のコンサルタントとして雇用した。(報道によると中東の国営航空会社)
ほとんど仕事は無しで、無関係の第三者を使って支払うことでその報酬を隠した。SECはこれを賄賂に当たると判断した。(司法省は賄賂とは認定していない。)

パナソニックは2012年第2四半期に、82百万ドル以上の収入を実際より早く計上して、税引前利益と純利益を過大に表示した。これを行うため、Panasonic Avionics は航空会社との契約を実際より早い時期に遡及し、監査法人に誤った情報を与えた。
(発表文では明確でないが、Panasonic Avionicsが航空会社との契約を実際より早い時期に遡及した結果、パナソニックの連結決算で税引前利益と純利益が過大に表示されたということかも分からない。)

パナソニックでは十分な内部監査ができておらず、
Panasonic Avionics が雇ったコンサルタントや、中東とアジアの国営航空会社などとのビジネスに使う代理店などに関する正確な帳簿をつけていない。

パナソニックは、Securities Exchange Act of 1934 の賄賂防止、不正防止、帳簿記録、内部監査、報告などの規定に違反していることを認め、不当利益返還で約143百万ドル支払というSECの命令に同意した。


司法省の発表は次の通り。

Panasonic Avionics は航空機の娯楽システムや通信サービスを設計、販売している。

同社は、不適切な目的のためのコンサルタント雇用に関し、意図的にパナソニックの帳簿や記録を胡麻化した。

コンサルタントはほとんど仕事はしないが、第三者を通して雇用され、 パナソニックやPanasonic Avionicsの誰も管理しないまま、Panasonic Avionicsのある役員が完全に管理する予算から報酬を支払われた。

そのうちの一人は、国営航空会社の社員で、Panasonic Avionics との契約改正交渉の担当であった。6年以上にわたる期間に875千ドルが支払われ、Panasonic Avionicsはそのコンサルタントが関与した契約で92百万ドル以上の利益を得た。

これらの費用はコンサルタントフィとして帳簿に計上され、パナソニックは販売費一般管理費に計上した。

Panasonic Avionicsはまた、アジア地区の社員が会社の基準に反する販売代理店を使うことを隠していたことを認めた。会社はこれらの代理店との関係を断ったが、その社員は他社の下請けとして使うことで引き続き使っていた。少なくとも13の下請けに7百万ドル以上を払い、これを隠していた。

Panasonic Avionics は海外汚職行為防止法違反で137.4百万ドルを支払うことに同意した。 調査に協力したため、この額はガイドラインから20%引きとなっている。

Panasonic Avionics はDPA(deferred-prosecution agreement)を結んだ。罪を認め、検察当局と合意した条件を一定期間遵守すれば、検察官は刑事訴追を見送るというもの

親会社のパナソニックの帳簿・記録を意図して胡麻化したことに対するもので、一環として137,403,812ドルの罰金を支払う。今後も調査に協力し、内部監査を高め、最低2年間、第三者によるコンプライアンスに関するモニタリングを受ける。さらにその後1年間、コンプライアンスに関する自主報告を司法省に対して行う。

(SECは賄賂と認定したが、司法省は賄賂とは認定せず、親会社の記録を意図的に胡麻化したことへの罰金としている。)

パナソニックは、Panasonic Avionicsの企業風土の改革に向け、幅広いコンプライアンスおよび内部統制の強化を監督する。これらの措置には、Panasonic Avionics経営陣の刷新および第三者のエージェントやコンサルタント起用の削減や管理強化が含まれているとしている。

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過去に日本企業が海外汚職行為防止法 (Foreign Corrupt Practices Act)違反で摘発された例は次の通り。

1) ブリヂストン マリーンホース国際カルテル事件

米司法省は2007年5月2日、原油の海上輸送に使うマリンホースの販売で国際的な価格カルテルに関与した疑いがあるとして日欧企業の幹部8人を逮捕したと発表した。
逮捕されたのは日本のブリヂストンの1名と英国のコンサルタント、英社の2名、仏社の2名、伊2社の各1名の
合計8名。

ブリヂストンは2008年2月12日、マリンホース事業で中南米や東南アジアなどの外国公務員に対する不適切な支払いが少なくとも1億5千万円あったと発表した。販売を仲介する海外コンサルタントに支払った手数料の上乗せ分が複数国の公務員らに賄賂として渡った可能性があるというもので、不正競争防止法違反(外国公務員への賄賂)にあたる恐れがある。

ブリヂストンは2011年9月16日、米司法省と司法取引をしたと発表した。有罪を認め、罰金2800万ドルを払うことで合意した。

司法省はブリヂストンの調査への協力を評価し、罰金を減額した。当初報道では、Sherman Act(独禁法)違反で1億ドル、Foreign Corrupt Practices Act違反で50万ドルとされていた。

2007/12/18 マリーンホース国際カルテル事件のその後

米司法省は2008年12月10日、ブリヂストン社員が有罪を認め、2年の禁固刑と8万ドルの罰金を課せられたと発表した。

カルテルへの参加のほか、ラテンアメリカその他で公務員に不適切な支払いをした連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)違反でも訴えられていた。FCPA違反は彼のみ。

2008/12/12 マリンホース国際カルテル事件で日本人に有罪判決

2) 日立製作所 南ア発電所

米証券取引委員会は2015年9月28日、発電設備の受注にからんで南アフリカの与党アフリカ民族会議側に不適切な支出をしたとして、日立製作所が民事制裁金1900万ドルを支払うと発表した。
日立は、米国の海外腐敗行為防止法に違反したとされたが、SECの主張を肯定も否定もせず和解に応じた。

SECによると、日立は2005年に現地法人を南アフリカに設立し、株式の25%をアフリカ民族会議と関係のある企業に約19万ドルで売却した。
日立はその後、火力発電所のボイラー納入で2件の契約を受注し、アフリカ民族会議側企業に配当名目で約500万ドル、コンサルタント料として成功報酬約100万ドルを払った。
2014年2月に現地法人の株を約440万ドルで買い戻しており、企業は合計で投資額の50倍を超える金額を受け取ったことになるという。

3) オリンパス 中南米医療

オリンパスは2016年2月29日、米国子会社 Olympus Corp. of Americasが米国で医師にキックバックを提供した件と、Olympus Latin Americasとブラジル子会社が中南米の当局者に賄賂を払ったとされる問題で、罰金と制裁金を支払うことで合意した。

Olympus Corp. of Americasが米国で医師にキックバックを提供した反キックバック法及び米国虚偽請求取締法違反の件で、罰金・制裁金として、612百万ドルと金利11.2百万ドル。

Olympus Latin AmericasとOlympus Optical do Brasilが中南米の当局者に賄賂を支払っていたとされる海外腐敗行為防止法違反の件で、罰金22.8百万ドル。

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