貿易摩擦を巡る米国と中国の初の公式交渉が5月3、4日の2日間、北京の釣魚台迎賓館で行われた。
米国側はムニューシン財務長官、ライトハイザー通商代表部(USTR)代表らが、中国側は習近平国家主席の側近で経済ブレーンの劉鶴副首相らが出席した。
米国は2020年までに対中赤字を2千億ドル削減するよう要求し、従来の1千億ドルから上積みした。中国は対中輸出制限の緩和などを求めた。
投資分野、知財分野でも応酬があった。
Made In China 2025計画などハイテク分野でも双方の主張は隔たりが大きい。新華社も「一部の問題は意見の食い違いが大きい」と認めた。
貿易戦争の回避は綱渡りで交渉は長期化の様相を呈してきた。今後、四半期ごとにレビューのための会合を持つ。
ホワイトハウスは5月4日、「米中の経済関係の調整について率直に議論した」とする声明を発表した。トランプ政権内には「(米中の問題に)即座に対処しなければいけないとの総意がある」と指摘し、報告を受けたトランプ大統領が次の行動を決断するとしている。
米国は500億ドル分の中国製品に25%の追加関税をかける制裁案を既に公表済み。
対抗して中国も、米国産の大豆やその他の農産物、自動車、化学品、飛行機など計106品目に25%の関税をかける方針を発表した。
中国は2017年に米国から約3300万トンの大豆を輸入し、米国の輸出先の6割を中国が占める。トランプ大統領の票田の農業州に揺さぶりをかける。中国の対抗策を受け、トランプ米大統領は4月5日、新たに1000億ドル規模の中国製品を対象にした追加関税を検討する方針を表明した。
2018/4/7 米、対中制裁追加を検討いずれも実施時期は決めていない。米国が制裁を実施すると、貿易戦争となる。
米国の要求とそれに対する中国の反応は次の通り。
1)米国の貿易赤字問題
(米国)
対中赤字(米側統計で2017年で3757億ドル) を、2019年6月までに2018年比で1千億ドル、2020年に同 2千億ドルの削減
* 不思議なことに中国の統計では2017年の対米貿易黒字は2758億ドルで、1千億ドルの差がある。この理由を解明するのが先ではないか。
現在平均10%の関税を2020年までに 米国と同水準("noncritical sectors"で平均3.5%)に引き下げ
検疫強化や関税上げなどの報復措置を控えること。
サービス、農業分野の市場開放
(中国)
ハイテク製品の対中輸出制限緩和
* 中国商務部は本年1月には、ハイテク製品の対中輸出を制限する米国の規制が米国の対中貿易赤字の原因になっているとの認識を示した。
規制を緩めれば米国の対中輸出が増え、貿易不均衡は縮小するとの見通しを示した。対中赤字が3割超減るとの試算もある。米国による中国製航空機の安全検査で差別的な取り扱いをしないこと。
世界貿易機関(WTO)協定の「市場経済国」に認定すること。
(中国側は、輸出制限緩和などを条件に現在25%の自動車関税を引き下げる。)
2)投資分野
(米国)
外資の投資禁止項目だけ示す「ネガティブリスト」を7月までに導入すること。
米国がリストを調査して米投資家を阻む内容があれば速やかな是正を求める。機密の(sensitive) 技術について、中国勢の投資を米国が制限しても、報復をしないこと。
(中国)
米国での投資で中国企業を差別的に取り扱わないこと。
3)知財保護
(米国)
米国でのサイバー攻撃で企業秘密を盗む行為をやめるよう、直ちに、検証可能な手段を取る。
知財保護の強化
海外からの技術移転で中国企業に有利な条例を2018年末までに廃止。
(中国)
通商法301条による知的財産侵害の調査を今後、一切しないこと。
米国による中興通訊(ZTE)の制裁緩和
4)中国のMade In China 2025計画
(米国)
中国のMade In China 2025計画で、全ての政府補助金の廃止
中国のMade In China 2025計画からの輸入品を米国が制限するのと認めること。
Made In China 2025計画は、2025年までに世界の製造業大国となり、建国100周年の2049年までに製造強国の先頭グループになるという計画である。(後記)
巨額の補助金で自国の企業を育てるとみられ、米国のIT企業などは、半導体などの基幹部品の自給で米企業が締め出されかねないとの懸念を持つ。
米国は交渉で中国2025の補助金の即時停止を求めたが、中国には事実上の計画停止を意味し、中国商務省の関係者は「絶対に受け入れられない」と憤る。
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中国のMade In China 2025(中国製造2025)計画は、2014年から中国工業情報化部、国家発展改革委員会、科技部、財務部、中国工程院など20の政府機関が製造業振興の長期戦略プランを策定し,2015年5月19日,国務院より「中国製造2025」が式に公布された。製造強国になるという戦略目標の実現を図るもの。
2015年までに製造業規模世界第一位、世界の製造業大国になり、
ステップ1で、2025年までに、格差縮小、十点突破で製造強国の仲間入りを果たし,
ステップ2で、2035年までに工業化の実現により製造強国の中位レベルに到達する。
ステップ3で、建国100周年の2049年までにイノベーション先導で製造強国の先頭グループに入るとの目標を掲げている。
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