中国、付加価値税率を引き下げ、ハイテク産業向け減税も

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中国は、328日 の国務院常務会議で増値税(付加価値税)制度改革を深化させる措置を決め、51日から増値税税率の軽減と小規模納税者基準の緩和が決定された。

国務院は4月25日、7つの減税措置を打ち出すことで、創業・革新及び小企業・零細企業の発展を支援することを決定した。

(1)増値税 制度改革 (5月1日実施)

製造業は17%から16%に、運輸・交通や建築は11%から10%にそれぞれ下げた。
増値税の税率は17、11、6%の3段階から16、10、3%になった。

中泰証券の試算では製造業の減税規模は1千億元超で、自動車、電機の恩恵が大きい。

課税対象

現行

改正後

製造業

貨物の販売、貨物の輸入 (下記の軽減税率適用品以外)

役務 (加工、修理整備役務)

有形動産リースサービス

17%

16%

運輸・交通・建築

特例

交通運輸、郵政、基礎電信、建設、不動産リースのサービス、不動産の販売、土地使用権の譲渡

下記の貨物の販売または輸入

穀物等農産品・食用植物由、食用塩

水道・暖房ガス・冷房ガス・熱水・石炭ガス・石油液化ガス・天然ガス・ジメチルエーテル・メタンガス・居住用石炭製品

図書・新聞・雑誌・音像製品・電子出版物

飼料・化学肥料・農薬・農機・農業用フィルム

その他

11%

10%

その他

上記以外のサービスの販売

無形資産の販売

6%

6%

輸出

貨物の輸出

0%

0%

輸出貨物に対する増値税はゼロ税率が適用される。またこのとき、仕入時にかかった増値税については還付を受ける。
輸出税金還付率も増値税 が16%のものは16%、10%のものは10%に変更される。

中小零細やベンチャー向けの増値税の優遇税率(3%)の適用対象も広げた。

増値税の一般納税者は売上税(課税販売額×税率)から仕入税(仕入金額×税率)を控除した増値税税額を納付 するが、小規模納税者には簡易税額計算が適用されており、増値税の課税販売額に徴収率3%を乗じた徴収額を納付することになっている。

今回の改正では、小規模納税者基準が緩和されてその範囲が拡大された。

現行

改正後

生産者は年間課税販売額が50万元以下

年間課税販売額が500万元以下

その他は80万元以下の納税者

なお、これまで増値税一般納税者として登記した企業と個人は、20181231日までに小規模納税者として登記変更して、その控除未定の仕入税額はコストに振替処理することができ る。

さらに、設備製造などを行う先進的な製造業や研究開発などを行う現代サービス業で条件を満たす企業および送電会社に対して、仕入れにかかった増値税額のうち未控除分について一定期間内に1度だけ還付を行うとした。


(2)ハイテク産業等向け 減税

中国国務院は4月25日、7つの減税措置を打ち出すことで、創業・革新及び小企業・零細企業の発展を支援することを決定した。
7つの新減税措置により、通年で関連企業の税負担がさらに600億元以上軽減されることになる。

①研究開発機器、設備の税前控除額の引き上げ
一部の業種において新規に購入した研究開発機器、設備が1台あたり100万元を超えない金額であれば一括税前控除が認められていたが、この限度額が500万元まで引き上げられる。
対象期間は2018年1月1日から2020年12月31日まで。
②税制優遇の対象となる小型薄利企業の所得額の引き上げ
小型薄利企業の条件に合致する場合、課税所得額の50%に対して20%の税率を適用することにより、企業所得税の実質的な税負担は10%となっている。
条件の内、課税所得額はこれまで年間50万元以下とされていたが100万元以下にまで引き上げられる。
対象期間は2018年1月1日から2020年12月31日まで。
③国外に委託する研究開発費用の加算控除制限の撤廃
これまで国外の組織や個人に委託する研究開発費用は税前加算控除の対象外とされていたが、この制限が撤廃される。
対象期間は2018年1月1日から。
④ハイテク企業と科学技術型中小企業の欠損繰越期間の延長
これまでハイテク企業と科学技術型中小企業の欠損金の繰越期間は5年までとされていたが、これが10年まで延長される。
対象期間は2018年1月1日から。

10年に延長したのは、米国から7年間の制裁を受けた中興通訊(ZTE)の救済を考えたのではないかとの報道がある。

⑤一般企業の従業員教育費用の税前控除上限がハイテク企業と統一
これまで一般企業の従業員教育費用の税前控除額の上限は、賃金給与総額の2.5%までと定められていた。
これがハイテク企業と統一され、1年度につき 8%まで控除することが認められ、超過した部分は翌年度に繰り越すことが可能。
対象期間は2018年1月1日から。
⑥印紙税の減税
これまで資金帳簿における払込資本と資本準備金の合計額に対して1万分の5の印紙税が課されていたが、これが1万分の2.5に半減する。
また、その他の営業帳簿や生産経営帳簿に対して課される印紙税は免除される。
対象期間は2018年5月1日から。
⑦スタートアップ科学技術型企業への投資の優遇政策の全国拡大
これまで8つの全面イノベーション改革試験地域と蘇州工業園区において、条件に合致するベンチャーキャピタルまたはエンジェル投資家はスタートアップ科学技術型企業への投資に際して投資額の70%を課税所得額から控除できたが、この適用地域が全国へと拡大される。
関連する企業所得税優遇政策の対象期間は2018年1月1日から、個人所得税優遇政策は2018年7月1日から。

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