武田薬品工業は5月8日、アイルランド製薬大手Shire plc を総額約460億ポンド(約6兆8千億円)で、完全子会社化することで合意したと発表した。
Shire 株主は株式1株当たり30.33米ドルの現金、ならびに武田新株 0.839株(又は1.678の武田ADR)を受領する権利を有する。
2018年4月23日における武田株式の終値4,923円並びに同日の為替レート 1ポンド=151.51円=1.3945ドルに基づくと、1株当たりの価値は49.01ポンドになり、総額は約460億ポンドとなる。
これは、4月24日の4回目の提案のままである。
1回目は3月29日で、1株当たり44ポンド(武田株式28ポンド + 現金16ポンド)、合計約410億ポンド(574億ドル)
2回目は4月11日で、1株当たり45.50ポンド(武田株式28.75ポンド + 現金16.75ポンド)、合計約430億ポンド(602億ドル)
3回目は4月13日で、1株当たり46.50ポンド(武田株式28.75ポンド + 現金17.75ポンド)、合計約440億ポンド(616億ドル)
4回目は4月24日で、1株当たり49.01ポンド(武田株式 0.839株=27.26ポンド + 現金US$30.33 =21.75ポンド)、合計約460億ポンド(641.5億ドル)2018/4/26 武田薬品、Shire 買収で4回目の提案、詰めの協議へ
総額約460億ポンド(約6兆8千億円)のうち、株式で3.78兆円(27.26 / 49.01 )、現金で3.02兆円となる。
武田薬品は既に、三井住友銀行と三菱UFJ銀行、JPモルガン・チェース・バンクの3行から総額308.5億ドル(約3兆3600億円)のブリッジローン契約を締結している。
付記 JPモルガン・チェースが幹事で1/2、三井住友と三菱UFJが1/4ずつ。みずほ銀行は外された。
付記
武田薬品は6月8日、JP Morgan Chase Bank、三井住友銀行、三菱UFJ銀行及びみずほ銀行を含むトップクラスのグローバル金融機関と、総借入限度額75億米国ドルの "Term Loan Credit Agreement"を締結した。資金調達の過半は、日本の金融機関からによる。5年のローンで、ブリッジクレジット契約分を減額する。
付記
武田薬品は10月18日、日本の公取委から無条件の承認を得たと発表した。米国、中国、ブラジルは既に承認を得ており、EUの承認待ち。 →11月20日に取得。
両社の取締役会によって承認されている。両社とも臨時株主総会を開き、株主の賛成を得て、2019年上期(1~6月期)に完了する予定としている。
本買収の完了により、両社の株主はそれぞれ、統合後の会社の約50%を保有することになる。
武田薬品では、本買収のハイライトとして以下を挙げている。
- 消化器系疾患及びニューロサイエンスにおいて相互に補完するとともに、希少疾患と血漿分画製剤においてリーディングカンパニーとしてのポジションを獲得することで、オンコロジーやワクチンにおける強みを補完
付記 Shireは4月16日、オンコロジー(癌)事業を24億ドルでServierに売却した。
- 日本に本社を置く、研究開発型グローバルバイオ医薬品企業のリーディングカンパニーが誕生し、今後の発展を促進する魅力的な地理的拠点と規模を確立
- 強固かつモダリティの多様な、高度に補完的なパイプラインを創出し、画期的なイノベーションにフォーカスした研究開発体制を強化
- 武田のキャッシュフロープロファイルが向上し、大幅な年間コストシナジーの実現や充実した株主還元実施を確信
- 武田の変革が、Shire の統合を成功に導き、統合後の会社の価値を最大化
両社を合算すれば売上高の合計は3兆円超となり、世界の製薬業界のトップ10の一角に躍り出ることになる。
但し、武田薬品は2017年9月末時点で1兆1千億円の有利子負債を抱え、Shireも2兆円程度の負債がある。買収で3兆円程度の借り入れを行うことで、統合後に負債が6兆円程度に膨らむ。
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英国法上、上場会社を完全子会社化するには、公開買付で大部分を取得し、残り株を買い取る(Squeeze Out)方法と、Scheme of arrangement を使う方法がある。
前者の場合、TOBで90%以上を取得した場合に限り、Squeeze Outの提案ができる。TOBでは3か月以上かかるとされる。
後者の場合は、議決に参加した株主の過半数が賛成し、賛成株主が75%以上を有している場合に限り、裁判所が認可する。最短で2か月とされる。 株主総会で賛成を得られない場合、改めてTOBをすすめることができる。
今回、後者を使うとされ、Shire の株主総会では 75%以上の賛成票が必要である。
Shireの取締役会は 、賛成を得やすくするため現金の比率を増やすよう要請していたとされるが、当初案のままとなった。
問題は武田薬品の株主総会である。
今回、3兆8千億円の新株発行で、時価総額(3兆4800億円)を上回り、武田株主にとり株式が1/2 以下に希薄化する。
買収発表後、武田の株価は1000円以上 下落しており、株主の賛成を得るハードルは高いと見られる。
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AnswersNews(2018/04/27)による2017年の製薬会社売上高トップ10は下記の通り。
億ドル 1 Roche * スイス 543.65 2 Pfizer 米 525.46 3 Novartis スイス 491.09 4 Merck 米 401.22 5 Sanofi * 仏 396.12 6 GlaxoSmithKline * 英 389.40 7 Johnson & Johnson 米 362.56 8 AbbVie 米 282.16 9 Gilead Sciences 米 261.07 10 Eli Lilly 米 228.71 * は2017年平均レートによる米ドル換算
武田薬品は売上高1.75兆円(2018年3月期見込み)で19位、Shireは1.70兆円(2017年12月期)で20位で、単純合算すると3.45兆円で、世界8位になる。
付記 JPモルガン・チェースが幹事で1/2、三井住友と三菱UFJが1/4ずつ。みずほ銀行は外された。
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