デンカ、コンゴ民主共和国へエボラウイルス迅速診断キットを提供

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デンカは5月28日、グループ会社のデンカ生研が、エボラウイルス迅速診断キット(クイックナビ TMシリーズ) 試作品をコンゴ民主共和国の国立生物医学研究所(INRB)へ提供した と発表した。

同社は、昨年の同地域でのエボラ出血熱流行時に、同国保険省のアドバイザーとしてJICAから派遣されている専門家からの要請で この試作品を提供し、拡大防止に貢献した。

今回、エボラウイルス病の流行発表を受け、同国保健省エボラ対策国家調整委員会検査部会が、昨年の成果を踏まえ、JICA 経由で検査キットの提供要請を行い、それを受けてデンカ生研が無償にて実施した。JICAは医療従事者の移動手段としてバイク5台、簡易検査施設の電力供給用に発電機1台を提供した。

コンゴ民主共和国保健省は5月8日,赤道州ボコロ保健圏において,2例のエボラ出血熱が発生したことを発表した。

世界保健機関(WHO)は5月14日、4/4~5/13に報告された感染例を次のとおり発表している。

確定 高い可能性 疑い
ビコロ保健圏 2 20 7
イボコ保健圏 0 3 5
ワンダカ保健圏 0 2 0
合計(うち 死亡 19) 2 25 12


この検査試作キットは、高田礼人教授(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター)とデンカ生研が 、
ザンビアで実施中の地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)「アフリカにおけるウィルス性人獣共通感染症の調査研究プロジェクト」の研究成果を活用し、共同で開発したもので、特別な器具や装置無しに約15分で検査結果を判定でき、医療施設が十分に整っていない地域においても迅速な検査が実施できる。

デンカ生研では、インフルエンザ、ノロウイルス、RSウイルスなどの迅速診断キット製品群を有している。

同社はかねてより、北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターの高田礼人教授と共同でエボラウイルス迅速診断薬の開発を行っていたが、2015年3月にその試作品開発に成功した 。

デンカ生研が製造・販売を行う感染症迅速診断キット「クイックナビ™」シリーズのプラットフォームをベースとするもので、血清を検体とした測定を行う。

毒性の高いウイルスを扱うことの出来る米国のBSL4施設(Biosafety Level 4)において、エボラウイルスに感染したサルの血清を用いた試験を行い、約15分でエボラウイルス感染の有無が判定できることを確認した。


エボラウイルス感染の判定には、主にELISA法や RT-PCR法などの測定法が使用されているが、これらは特別な装置と長い測定時間を必要とする。

ELISA(Enzyme-linked immuno-sorbent assay)法: 抗原抗体反応を利用して、特定物質を測定する免疫学的測定法

RT-PCR (Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction)= 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法:

RNA(リボ核酸)から逆転写酵素によってcDNA(相補的デオキシリボ核酸)を合成し、ポリメラーゼ連鎖反応を行うことで、目的の遺伝子を増幅する方法

これに対し、デンカ生研の「クイックナビ™」シリーズが採用するイムノクロマト法は、特別な器具や装置を必要としないため、簡便且つ迅速な検査が可能で、電源などが十分でない地域においても活用が期待される。

クロマト(クロマトグラフィー)は、固定相の一端から多成分試料を移動させ、各成分の固定相に対する吸着や、分配の差異による移動速度の大小によって分離する方法 で、イムノクロマト法は、この原理と抗原抗体反応を組み合わせたもの。検出方法としては、酵素抗体法と凝集法(金コロイドや着色ラテックスなど)がある 。

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