双日は5月30日、BHP Billiton および三菱商事から豪州の製鉄用原料炭鉱 Gregory Crinum の権益 100%を取得することで合意したと発表した。取得金額は100百万豪ドル(約82億円)になる。
Gregory Crinum炭鉱は、BHP Billiton と三菱商事が2001年に設立した50/50JVのBHP Billiton Mitsubishi Allianceが豪州東部クィーンズランド州に所有する炭鉱の一つで、Gregory露天掘炭鉱とCrinum坑内掘炭鉱の2つの炭鉱からなり、製鉄原料となる石炭を生産していた 。
長期間の採掘で埋蔵量が減少したこと、石炭価格の下落で採算が取れなくなったことから、2012年10月にGregory露天掘炭鉱を休止 、Crinum坑内掘炭鉱も2016年1月に休止した。
双日では、十分な原料炭の資源量が確認されており、正式な取得手続きが完了次第、早期に操業を再開する予定 としている。
双日は、Gregory Crinum炭鉱の近くのMinerva 炭鉱で掘削から運び出しまで自前で手掛けており、更に近郊のMeteor Downs Southの開発運営にも参画している。
このため、独自の技術力に加え、人員や資材を転用することで埋蔵量に見合う低コストで運営できるため、再稼働しても収益貢献が見込めるとしている。
Gregory Crinum炭鉱のインフラを活用した周辺炭鉱の操業請負事業や、周辺炭鉱のリハビリ(自然環境の修復や緑化)の請負事業、リハビリ跡地での太陽光発電等、環境保全に資する新たな事業展開を通じ、雇用の創出等、地域経済に貢献するとしている。
一般炭に偏重している双日グループの石炭資産をリバランスし、原料炭の事業を強化することも目的とする。
参考:炭鉱のリハビリ
今回の権益取得に伴い、法制上の鉱山リハビリテーション(自然環境の修復や緑化)義務が双日に移転する。BHPおよび三菱商事からリハビリ資金引当金が引き継がれる。
露天掘り炭鉱では、石炭層まで数十メートルから百メートルを超える土砂を取り除いていくが、その際、30~40cmの表土を植生ごとはがし、この表土を別の場所に保存しておく。草木が枯れないように水やりや肥料の補給を行う。
石炭の採掘後、くぼみを隣接する区域を採掘する際に除去した土砂で埋め戻し、重機などでならし、その上を保存しておいた表土で覆い、採炭前にとっておいた草木や周辺で採取した種子を使って植栽を行う。修復後も回復状態をモニターし、草木がしっかりと根付いているか、生きものが戻ってきているかをチェックする。
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BHP Billiton Mitsubishi Alliance (BMA) はオーストラリア最大の石炭生産企業で、原料炭の海上輸送シェアは世界一である。2001年に三菱商事がBHP Billitonから権益を取得することにより発足した。BHP Billitonの原料炭事業における中核である。
BMAはオーストラリア東部クィーンズランド州の大規模石炭埋蔵地域であるBowen Basinの、北部の都市 Moranbahから南部 Blackwater まで広域にわたって9つの炭鉱で露天堀及び坑内堀を行っている。また、石炭を出荷するための港湾施設Hay Point の操業も行っている。9つの炭鉱のうち、Norwich Park炭鉱は石炭価格下落、洪水による生産減、高コストを理由に2012年5月に休止、Gregory Crinumも2012年10月に休止した。
全産出量の90%超が製鉄用の原料炭で、日本をはじめ、韓国、ブラジル、インド、ヨーロッパなど世界約30ヵ国に及ぶ需要家に向け年間5,000万トンを供給している。
その大半をHay Point港湾施設より出荷し、一部をその近隣のDalrymple Bay港湾施設や南部にある主要資源積出港であるGladstoneから出荷している。
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双日は1994年に豪州の資源会社Felix ResourcesからMinerva炭鉱の権益30% を取得、70/30のJV(Minerva Coal Joint Venture)とし、2005年11月に高品位の燃料用一般炭の生産を開始した。
2006年に韓国資源公社をはじめとする韓国コンソーシアムがFelix の持ち分権益70%の内、15%の買収を計画したことに対し、双日が先買権の行使を決定し、15%を買収し、45%とした。
2010年12月 、双日はFelixの残り持株55%のうち、51%分を取得、持分権益を96%とし、海外の炭鉱経営・操業機能を直接保有する唯一の商社となった。
残り4%は韓国資源公社(KORES)が取得した。
Minerva炭鉱は年間生産量約280万トンの良質な一般炭を生産している炭鉱で、日本や韓国向けに輸出してい る。
豪州のU&D Mining Industry (Australia) は、Minerva炭鉱の近くでMeteor Downs South炭鉱の開発を決めた。
双日は2014年にU&Dと本件でのJV契約を締結した。双日が建設、操業を請け負い、50%の権益を持つ。
Meteor Downs South炭鉱は本年4月に操業を開始した。
2年間はMinervaまでトラック輸送(そこからは鉄道でGladstoneまで輸送)のため、年産50万トンで、貨車への積み込み設備が出来た後は年産150万トンとなる。
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