アルバータ州の最高裁(Alberta Court of Queen's Bench)の裁判長は6月20日、Dow Canadaが契約違反を理由にエチレンJVの相手のNova Chemicals を訴えた裁判で、Dowの主張を認め、Nova Chemicals に10億6千万米ドルの支払いを命じた。
Novaは30日以内に控訴するとしている。
問題のJVは、Nova Chemicals のAlberta 州Joffre 工場にある能力年産130万トンのエチレン第3系列(E3)で、操業はNovaが行い、製品は50/50で引き取っている。
Dowの訴え:
NovaはDowの持分のエチレン及び副産品の一部を取り込んだ。契約違反である。
JV契約での義務に違反し、設備をフル稼働しなかった。
エタンの不足はなかった。JVプラントをフルに動かすエタンはあり、Novaは追加のエタンを取得する能力も自由も持っている。
Novaの反論:
エタン不足でフル稼働できなかった。Joffreの3つのエチレンプラントへのエタンの割り当てに起因する。Dow はその時点でエタンの割り当て問題を知っていたが、反対しなかった。
メカニカル問題の際を除き、出来る限り稼働させた。
契約では、カナダ西部ではNovaのみがエタンを取得できるとなっているが、Dowはこれに違反して、エタンを取得した。
(これについてはDowは、契約の解釈の誤りとし、その後、この条項はコモンローの競争制限に違反し、競争法にも違反するため無効であると主張した。)JV契約上の責任条項には限度がある。
要は、Novaが原料エタンを3つのエチレンプラントのうち自社の2つのプラントに優先的に廻し、JVのプラントが減産になった。結果として、Dowが受け取るべきエチレンの一部がNovaに盗られたということ。
エタンが不足した場合の配分方法を事前に決めておかなかったのが問題と思われる。
判事は、Dowの「JVプラントをフルに動かすエタンはあり、Novaは追加のエタンを取得する能力も自由も持っている」とする主張を受け入れ、Novaの主張を却下した。
「Dowは、Novaが操業担当者として、かつ共同所有者としてJV契約に違反し、Dowが利用する権利のあるエタンの一部をJVのプラントから横流ししたということの作為の蓋然性(作為の可能性が高いこと)を示した」とした。更に、Novaの操業担当としての行為は、故意の不正行為(Wilful Misconduct)で、重大な過失(Gross Negligence)であるとした。
判事はまた、「JVプラントの能力はNovaが試運転時に示したよりもっと多く、Novaは生産量を最大にしなかった」というDowの主張を受け入れた。
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Nova Chemicals の Joffre 工場の概要は次の通り。
Capacity
(千トン)Owner Start Ethylene E1 545→726 Nova 1979 E2 680→816 Nova 1981 E3 1,300 Nova/Dow 2000 50/50JV PE PE 1 670 Nova 1984 Unipol gas phase LLDPE PE 2 430 Nova 2001 NOVA' Advanced SCLAIRTECH process PE1
増設450 Nova 2017 Novapol butene LLDPE
カナダのNOVA Chemicals、ポリエチレン拡大計画NOVA 2020 をスタートLinear α Olefins 265 Inneos 2001 BP Amoco が建設、2005年にINEOSがBPから買収 Cogeneration 450MW Nova 20% / CU Power 40% / EPCOR Utilities 40%
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