米政府は5月31日、カナダ、メキシコ、EUに対し鉄鋼・アルミニウムへの輸入関税を適用すると発表した。適用は午前0時からで、税率は鉄鋼が25%、アルミニウムが10%。
ロス商務長官は、EUとの通商交渉、カナダとメキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉で十分な進展がなかったため、鉄鋼関税の恒久的な適用免除は認められないと判断したと説明した。
「解決が必要な他の案件もあるため、カナダとメキシコ、およびEUと引き続き協議したい」と述べた。また、トランプ大統領は関税変更や撤廃、数量枠設定の権限を有しているため、今後、「柔軟性」を持たせる可能性があるとも語った。
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鉄鋼やアルミニウムの輸入制限は米東部時間3月23日午前0時1分に発動された。
ホワイトハウスはカナダ、メキシコ、EU、ブラジル、オーストラリア、アルゼンチン、韓国への関税を5月1日まで猶予する方針を示した。
ブラジル、アルゼンチン、オーストラリアは米国にとって貿易黒字国で、米国への鉄鋼・アルミ流入抑制対策で協力する。
韓国については、3月に米韓FTAの改正・延長交渉で合意した。鉄鋼に関しては25%の追加関税を免除する代わりに、韓国は米国向け輸出数量を減らす
トランプ大統領は、猶予期限切れ直前の4月30日、カナダ、メキシコ、EUへの関税の猶予を更に1カ月延長すると発表した。
その間に譲歩を迫る。カナダ・メキシコとはNAFTAの再交渉中。EUは「断固とした対応をとる」としており、難航する見通し。
2018/3/26 米国、鉄鋼とアルミの輸入制限を発動
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米国とNAFTA再交渉を進めているカナダとメキシコはすぐさま反応した。
カナダのフリーランド外相は、対抗措置として米国からの鉄鋼とアルミニウムなど最大166億カナダドル(128億米ドル)相当に7月1日から関税をかけることを明らかにした。
特定の種類の米国産鉄鋼に対し25%、ヨーグルト、ウイスキー、焙煎済みのコーヒー豆など他製品にも10%の関税を課す予定。
メキシコは鉄鋼製品や農業生産品を含む幅広い品目に対し「同様の」対抗措置を講じる方針を表明した。
メキシコ経済省は、鉄鋼、豚足や豚肩肉、リンゴ、ブドウ、ブルーベリー、チーズに新関税を導入する意向だと述べた。
ビデガライ外相は、米国の関税措置は「不公正で一方的」としながらも、メキシコはNAFTA再交渉協議を継続するとの姿勢を示した。
EUは速やかに報復措置を取ると表明した。EUはすでに報復関税の対象製品リストを発表済み。リストには米国産バーボン、クランベリー、ジーンズが含まれている。
EUは3月16日、EUが輸入制限の対象となった場合の対抗措置として、最大25%の報復関税 を課す対象品目リストを公表した。
品目リストの提示は域内企業を対象にしたパブリックコメント(意見公募)が目的で、今後、集まった意見をもとに、最終的な品目リストを絞り込む 。
対象品のリストは10ページにわたり、とうもろこし、コメ、オレンジジュース、バーボンウイスキー、たばこなどの農産品からボート、オートバイやジーパンなどの衣料品、鉄製の家電製品(レンジやヒーター等々)まで様々な品目が並ぶ。
米メディアは与党共和党の有力議員の地元特産品を標的にしたと指摘した。
2018/3/20 EU、米の鉄鋼・アルミ輸入制限への報復関税案を発表
まず、6月20日にも28億ユーロ規模の輸入品に高関税を課す。さらにWHOが米の輸入制限をルール違反と認定した後に、36億ユーロの品目に関税を課し、最終的に米輸入制限によるEUの損失64億ユーロと同規模にする。
欧州委員会のユンケル委員長はブリュッセルで、「世界貿易にとって不幸な日になった」と発言。「世界貿易において、一国が一方的な措置を導入することは全く受け入れられない」と述べた。
EUは6月1日、世界貿易機関(WTO)に提訴した。 同時に中国による知的財産権の侵害についても提訴した。米中双方への同時提訴は、国際ルールに基づく貿易システムを守るためだとしている。
付記 カナダも6月1日、WTOに提訴したと発表した。
付記 メキシコも6月4日、手続きを始めると発表した。
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米国でも経済界や議員の多くが、トランプ政権の関税政策を厳しく批判している。共和党議員の中でも、批判の声が上がっている。
共和党のブレイディ下院歳入委員会委員長は、地元ビジネスに打撃を与えるとして、EU、カナダ、メキシコに対する除外措置を復活させるよう、トランプ政権に呼びかけた。
米アルミニウム協会も、関税は取引国との関係を悪化させるほか、供給超過問題の解決につながらないと、政府決定を批判した。
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