日立、英の原発計画で英政府と基本合意

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英政府は6月4日、
北ウエールズのAnglesey島 Wylfa Newydd における原子力発電所の建設(Horizon Project)で日立製作所と基本合意に至ったと発表した。

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日立製作所は2012年10月30日、ドイツのエネルギー会社のE.ON及びRWEからHorizon 全株式を買収する契約を締結した。
買収額は
6億7000万ポンド(約850億円)。

2012/11/1 日立製作所、英の原発会社買収

Horizon は、北ウエールズのAnglesey島のWylfa Newydd とSouth Gloucestershire のOldbury-on-Severn の2カ所で、5,400MW級以上の原発(1,300MW級をそれぞれ 2~3基)を建設する。

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日立は、まずAnglesey島 Wylfa Newydd原発2基の建設に向け、約2000億円を投じて工事の準備を進めてきたが、総事業費は安全対策の強化などで3兆円規模まで膨らんでいる。

これまでの交渉では、日立、日本政府・企業、英国政府・企業が3千億円ずつ出資、残り約2兆円を融資で賄まかなう案が検討されてきた。 融資には、日本から三菱UFJ銀行など3メガバンクと政府系の国際協力銀行が参加する予定で、従来は政府全額出資の日本貿易保険が融資を債務保証する計画だった。

日立は英政府の十分な支援が得られなければ事業から撤退する可能性があるとの考えを伝えていたが、2018年4月下旬に英国側は支援策の一環で、英政府が日英双方の銀行融資を全額債務保証する意向を 日立側に示したという。日本政府が債務保証する場合に比べて日立の負担が直ちに減る。

日立の中西宏明会長と英国のメイ首相は5月3日、ロンドンで会談し、政府支援を巡って協議した。英国側は債務保証を含めた支援の意向を伝えて事業遂行を求めたとされる。

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Greg Clark ビジネス・エネルギー・産業戦略相が同日、英議会で協議の進捗を報告した。

英国では過去60年、原子力エネルギーが電力を供給、現在は20%を占める。低カーボン経済で重要な役割を示す。

2016年にHinkley Point C 計画(フランス電力公社(EDF)/ 中国広核集団)の支援を決めた。

2016/8/4 フランスと中国の企業による英国Hinkley Point C 原発計画

次がこのWylfa Newydd 計画である。日立のHorizon Nuclear Powerが2基(合計2.9GW)の原発を建設するもので、2017年12月にGeneric Design Assessmentが完了している。Horizon は6月1日に承認(Development Consent )の申請を行った。

本日、日立と英国政府は具体的交渉に入ることで合意した。最終決定はまだなされていない。

交渉での最大のポイントは低コストの電力である。消費者のコスト引き下げのため、Hinkley Point C の財務モデルからの変更が求められている。日立、日本政府、その他とともに政府が直接出資することも考えている。

英国には原発が必要なため、これ以外の計画も進める。具体的には、EDFのSizewell C 計画、中国広核集団(CGN)のBradwell 計画、東芝のMoorsideでのNuGen計画のフォローアップ、日立のWylfa と Oldburyでの他の計画である。

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2017/4/5 東芝、英国のNuGenを100%子会社に (東芝はNewGenの完全売却も視野)

英国政府は長期的には原子力やその他のエネルギーは私企業がファイナンスすることを目標とする。

Wylfa計画が進めば、世紀末までに国の電力需要の約6%を供給し、特にウェールズに建設と運営で数千人の雇用を生む


日立は、グレッグ・クラーク大臣のステートメントについて、両者間における協議の成果などを確認するものとして歓迎すると発表した。引き続き、民間事業者として、経済合理性の観点から本プロジェクトの精査を図りつつ今後の協議に臨み、最終的な投資判断を行うと述べた。2019年にも事業継続の可否を判断する。

世耕経済産業相は、日本政府の支援について「政策的支援も含めて今後精査の上で判断していく。現時点で具体的に何らかの決定がされたという事実はない」と述べた。

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日立の計画が実現するとは限らない。

まず、日本側も英国側も出資の目途はたっていない。

完成した場合の電力の買い取り価格も決まっていない。

福島事故で原発の安全確保のためのコストが見直された結果、2012年以降、ドイツ、英国の企業が原発計画から撤退した。

このため、英国政府は原発推進のため、自然エネルギーの普及に使われている「固定価格買取制度」を原発に導入した。

Hinkley Point C 計画では、英国政府とEDFは、原子力発電での電力の固定価格買取価格(35年間)について、下記の通り合意した。

Sizewell での建設を決める場合 £89.50/MWh(約14.1円/kWh)
Hinkley Point単独の場合    £92.50/MWh(約14.6円/kWh)

2013/12/27 英国が原発建設再開、固定価格買取制度導入

この価格は一部の洋上風力発電の 1.5倍以上で、英会計検査院は「コストが高すぎる」と批判している。

日立も「Hinkley Point C と同じ水準の価格は難しい」と値下げを受け入れ、英紙によると、保証価格は£75~77/MWhで検討中とされている。

Clark ビジネス・エネルギー・産業戦略相も「交渉での最大のポイントは低コストの電力である」としており、電力の買い取り価格の水準を巡っては英政府と日立の間になお大きな隔たりがある。

 

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