米最高裁、中国政府主導の米国での価格カルテルを認めず

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米最高裁は6月14日、中国のビタミンC メーカーによる価格カルテルの裁判で、控訴裁がカルテルは中国政府の指示によるもので無罪とした判決について、満場一致で誤りとし、再審査のため差し戻した。

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事件は、2005年にTexasの動物飼料会社や New JerseyのビタミンのディストリビューターなどのビタミンC 需要家が、中国のビタミンC メーカーが2001年12月以降、米国で価格や供給量についてカルテルを結んでいるとして訴えたもの。

訴えられたのは4つのグループ。
・華北製薬(North China Pharmaceutical Group Corp.:NCPGC) と 河北维尔康製薬(Hebei Welcome Pharmaceutical)
   河北维尔康製薬は華北製薬集団と香港の三威國際企業Triple Well International)のJV

・China Pharmaceutical Group Ltd. (CSPC Pharma group:石薬集団)と100%子会社の維生藥業 (Weisheng Pharmaceutical )

・Aland Jiangsu Nutraceutical Co.(江蘇江山製藥 )

Northeast Pharmaceutical Co. Ltd.(東北製薬)

訴えによると、 中国の医薬・健康製品輸出入協会の2001年12月の会合で、上記4グループを含むビタミンC メーカーがビタミンC の輸出を制限して国際市場で不足状況を生むため、輸出数量を管理し、値上げをすることを決めた。

需要家は集団訴訟を起こした。

NY 連邦地裁の裁判で、メーカー側はカルテルを否定せず、中国政府の命令に従っただけであり、カルテル実行者は米国の独禁法の被告にはならないとした。また価格カルテルは中国政府の行為であるとした。更に、中国政府は米国法で裁かれないともした。

中国商務部はこの主張をすべてバックアップした。
商務部によると、中国では商務部の指導下で医薬・健康製品輸出入協会をつくっており、このビタミンC サブ委員会がビタミンCの輸出価格と数量を決定している。ミニマム価格が決められており、それ以下での輸出は出来ない という。

実際に米国の通商代表部は、中国政府がビタミンCの輸出価格を操作しているとしてWTOに提訴している。


本件の詳細  https://www.davispolk.com/files/msohn.jsolomon.antitrust.article.dec13.PDF


この輸出規制が強制的か、自主的なものかで判断が分かれた。被告側は、政府に強制されたもので、従わなければペナルティを受けると主張した。

判事は2011年9月に、中国政府は優遇政策としてビタミンC カルテルを奨励しているが、メーカーに価格カルテルを強制するほどのレベルでなく、違反しても罰金はないと認定した。



2012年5月に江蘇江山製藥は950百万ドルを支払うことで原告側と和解した。これは中国企業が米国のカルテル訴訟で和解した最初である。

最終論告開始の直前に、China Pharmaceutical Group と 維生藥業は 22.5百万ドルを支払うことで和解した。


2013年2月に始まったNew York Eastern District 地裁の最終審理で、陪審員は、 河北维尔康製薬と東北製薬が価格の固定、供給量の制限で共謀したと判断し、損害額を54.1百万ドルと決めた。

判事は3月14日、153.3百万ドル(損害額の3倍から9百万ドルを調整)の罰金を命じた。

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両社は控訴した。

2015年1月に連邦巡回区控訴裁判所(Second Circuit)がこれを取り上げた。

控訴裁は2016年9月20日、中国法が被告に対し外国で売られるビタミンCの価格を決め、数量を下げるよう要求しているとの正式の陳述書を中国政府が裁判所に提出していること、中国企業は中国法と米国の独禁法に同時に従うことができないということから、地裁は本件の管轄権を実行すべきでなかったと判断した。

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今回、最高裁は、連邦裁判所は外国政府の主張に耳を傾ける必要はあるが、それにそのまま従う必要はないとし、更に審議するよう、下級審に差し戻した。

被告側は失望したとし、下級審で更に戦うとしている。中国大使館はコメントの要望に応じていない。

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ビタミンC 市場を中国企業がほぼ独占しているのは、米国でのビタミンCカルテルで多額の罰金を命じられ、各社が撤退した結果である。

かつてビタミンCの生産は欧米企業6社が生産量の75%を寡占する商品で、カルテルで値段を吊り上げていた。

1995年に米国でリジンのカルテルが摘発された。

2010/1/12 映画 The Informant

クエン酸カルテルに関するHoffman-LaRocheなどの調査でビタミンカルテルの存在が分かった。

1999年に米、スイス、独、日、加の合計11社に総額 9億1050万ドルの罰金が課せられた。アメリカでビタミンの価格カルテルが摘発されたのは、これが二度目である。

武田薬品 72百万ドル 事業をBASFに売却
エーザイ 40百万ドル
第一工業製薬 25百万ドル
Roche  500百万ドル 事業をDSMに売却
BASF 225百万ドル
Merck 14百万ドル
Degussa-Huls 13百万ドル
Lonza 10.5百万ドル

2001年1月には、EUでもスイス・独・蘭・仏・日の計8社に総額8億5522万ユーロの制裁金が課せられている。

そこへまた中国企業ががぜん安値攻勢をかけてきたため、欧米企業は次々にビタミンCの生産から撤退した。

現在欧米で頑張っているのはDSMだけである。

DSMはスコットランドに工場を持つが、2014年にAland Jiangsu Nutraceutical Co.(江蘇江山製藥 ) を買収した。

2014/7/29  DSM、江蘇江山製藥買収で合意、ビタミンC 事業を強化 

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