8月20日付で、10万Bolivaを5ケタ切り下げ、新通貨1Bolivar Soberano (Sovereign Bolivar)に切り替える。
従来の計画では8月4日付で現在流通する1000 Bolivarを3ケタ切り下げ、新通貨1 Bolivar Soberanoに切り替えるとしてきた。
しかし、国際通貨基金(IMF)が同国の物価上昇率について年内にも100万%に達すると発表(下記)するなど上昇ペースが加速しており、対応しきれないと判断した。
ベネズエラでは外貨不足で生活に必要な物資を十分に輸入できず、足元では月2倍のペースで物価上昇が続いている。
下のグラフ(たった1年間のグラフ)では5月末時点で27,364%だが、議会の調査では6月では約4万6000%となっている。
ブルームバーグは独自に、首都カラカス東部にあるベーカリーのコーヒー1杯の値段を調査し、経済指標として使っている。「カフェ・コン・レチェ(ミルク入りコーヒー)指数」と呼ばれるこの指標によれば、過去12カ月間でインフレ率は6万%上昇した。上昇はさらに加速しており、過去3カ月のインフレ率は年率で30万%を記録した。
IMFの西半球部門のAlejandro Werner部長は、7月23日付のレポート Outlook for the Americas: A Tougher Recovery で、同国の2018年のGDPは3年連続の2桁のマイナスが予想され、インフレ率は2018年末までに100万%に達する可能性があると警告した。
「経済活動の崩壊、ハイパーインフレ、公共財の供給不足、補助金つきの食料の不足が、大規模な国外への移住につながっている。近隣諸国にも大きな影響を与えるだろう」と指摘している。すでに生活条件の悪化から、100万人以上が国を捨て、近隣諸国へ逃げだしている。
Venezuela remains stuck in a profound economic and social crisis.
Real GDP is projected to fall by about 18 percent in 2018--the third consecutive year of double-digit declines in real GDP--driven by a significant drop in oil production and widespread micro-level distortions on top of large macroeconomic imbalances.
We expect the government to continue to run wide fiscal deficits financed entirely by an expansion in base money, which will continue to fuel an acceleration of inflation as money demand continues to collapse.
We are projecting a surge in inflation to 1,000,000 percent by end-2018 to signal that the situation in Venezuela is similar to that in Germany in 1923 or Zimbabwe in the late 2000's.
The collapse in economic activity, hyperinflation, and increasing deterioration in the provision of public goods (health care, electricity, water, transportation, and security) as well as shortages of food at subsidized prices have resulted in large migration flows, which will lead to intensifying spillover effects on neighboring countries.
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インフレ率 100万%は第一次世界大戦の敗戦後の1923年のドイツや、2000年代後半のジンバブエに匹敵する。
(2015~2017年のIg Nobel 賞の賞金には10兆ジンバブエドル紙幣が与えられた。これは米国の40セントに相当する。)
産油国ベネズエラは、経済を支える原油の生産量が昨年28年ぶりの水準に落ち込んだ。 OPEC発表では、ベネズエラの昨年の原油生産は前年比約13%減の日量 2072千バレルで2017年12月の生産は日量1621千バレルで、前年比29%減った。
産油国は昨年、OPEC主導の協調減産を2018年末まで延長することで合意したが、他国が自主的に生産を抑えているのに対して、ベネズエラの石油産業は非効率な投資、納入業者への支払いの遅れ、米国の経済制裁、頭脳流出などで大きな打撃を受けており、6年続く原油生産の減少に歯止めを掛けることができずにいる。
本年5月20日に投開票された大統領選で、反米左派のニコラス・マドゥロ大統領(55)が再選された。
マドゥロ大統領は経済改革の実施を拒み、現在の危機を、国内の反政府派がアメリカやその他の競争相手国と手をくんで仕掛けた「経済戦争」のせいだとしている。政府機関は、国の崩壊の本当の姿を隠すために、経済統計の公表を停止している。
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