U.S. District Court for Eastern Pennsylvaniaは6月29日、米製薬会社AbbVie と提携先のBesins Healthcareに対し、独禁法違反で罰金448百万ドルの支払いを命じた。
自社のブランド薬AndroGelとジェネリック薬との競争を回避し、AbbVie とBesinsの独占による利益を長期にわたって維持しようとしたとしている。
被告の行為でジェネリックの上市が本来の2013年6月から2014年12月に延びたとし、その間の利益分として448百万ドルの罰金とした。
2014年9月に連邦取引委員会(FTC) は、AbbVie とBesins Healthcareがベストセラー新薬のテストステロン補充療法ジェル薬AndroGelのジェネリック薬への米国民のアクセスを違法に妨害したとして両社を提訴した。
AndroGelは、テストステロン値の低い男性に対して用いられるテストステロン補充療法ジェル薬として認可された話題の医療用ジェルであり、米国における年間売上高は10億ドル以上である。
FTCによる提訴の主要点は,次の2つの反競争的行為の疑いである。
1) 両社はAndroGelのジェネリック薬のFDAによる承認を遅らせ、ブランド薬である自社の製品に係る独占的な利益を拡大するために、ジェネリック薬メーカーのTeva及び Perrigo Co. に対する根拠のない特許侵害訴訟を提起した。
本件偽装特許侵害訴訟で問題となっているのは、AndroGelのミリスチル酸イソプロピル(IPM)という成分である。
IPMは、皮ふや血流を通じて薬の有効成分であるテストステロンの循環を促進させることから、「浸透促進剤」として知られている。
AndroGelの特許は、IPMを浸透促進剤として使用するという製法に係る製剤特許に過ぎない。
Teva及び Perrigoは、IPMとは別の浸透促進剤を使用したテストステロン補充療法ジェル薬を開発したにもかかわらず、両社に対して、特許侵害訴訟を提起した。
(AbbVie とBesinsは、AndroGelの特許承認を得る際に、それらの浸透促進剤に対する主張を放棄しており、特許対象外であることは明らか)当該訴訟が提起されたことにより、FDAの認可権限は、特許侵害訴訟請求の内容のいかんにかかわらず30か月の自動停止となった。
2) Tevaは、両社に対し当該訴訟は根拠がないと主張した後、反訴を取り下げ、テストステロン補充療法ジェル薬市場に参入しない見返りに、AndroGel とは無関係の製品(2011年の米国における売上が10億ドル以上であったTricorと称するコレステロール薬)を包括的に販売する権利を得るという形で、AbbVieから違法な支払を受けた。
これは、"Pay-for-delay" or "Reverse payment"と言われ、特許権侵害訴訟を和解により解決する際の方策として、先発品メーカーが後発品メーカーに一定の金銭を支払い、後発品メーカーは後発品の上市を一定期間遅らせることに同意するというもの。
FTCは、これはAbbVie とTevaによる不当な取引制限行為であるとした。
FTCは、被告人の行為がFTC法に違反しているとの宣告、被告人に対する不当利得返還命令、被告人による同様の反競争的行為についての将来にわたる禁止についての判決を求めた。
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