AppleとSamsung、スマホ巡る知財紛争、7年経て和解

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スマートフォンの意匠にかかわる知的財産権侵害をめぐって法廷係争を続けてきたApple と韓国 Samsung電子が、6月27日付でカリフォルニア州サンノゼの地裁に 和解したことを通知した。


本年5月にサンノゼの連邦地裁陪審が、予想に反して、Samsungに5億3900万ドルの支払いを命じた。Samsungはこれに不服で、 控訴する可能性があった。

さらに、最近の情報では、Samsungは問題となっている主要事実が現実に存在しないことを証明できる書面を保持しているとして、略式判決か、再審を求めたとされる。また特許権侵害で支払った149百万ドルについても、問題特許は既に無効化されているとして払い戻しを要求しているとされ、これらの審問が7月26日に予定されているとされる。

そのなかで、突如、和解が明らかになった。和解金の金額など、条件の詳細は明らかにされていない。

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2011年4月にAppleが米国カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に、Samsung がスマートフォン「Galaxy S」やタブレット端末「Galaxy Tab」などでAppleの知的財産権を侵害したとして提訴した。

裁判は延々と続いた。1次評決で陪審員団が1,050百万ドルの賠償金を算定したが、その後、裁判長による減額があり、2015年5月18日に特許訴訟を専門に扱う米連邦巡回区控訴裁判所 (CAFC) は、SamsungがAppleの複数の特許を侵害したと認定したが、賠償の一部は無効と判断した。これを除くと548百万ドルとなる。

これを受け、2015年12月3日に、Samusung が Appleに548百万ドルの損害賠償金を払うことで両社が合意し、12月14日に支払が行われた。

しかし、Samsung は2015年12月14日、米最高裁判所に上告し、上記の548百万ドルのうち、特許3件に関する149百万ドルを除き、デザイン特許に対応する399百万ドルについて、意匠に関する権利がどの範囲まで適用されるのか、またどのような賠償を請求できるのかについて指針を示すことを求めた。

裁判でSamsung側は、意匠権侵害での損害賠償は侵害に起因する利益に限定されるべきだとしたが、裁判所は、「特許法289条は特許意匠がつけられた製品(article of manufacture) から得られる総利益を意匠特許権者に与えることを明確に許可している」として、侵害スマホから得た総利益399百万ドルの支払いを命じた。

対象となるのは次のデザイン特許3件。

iPhone Front (D'677) iPhone Back (D'087) iPhone Home Screen (D'305)

2012/8/28 Apple、Samsungとの特許係争で勝訴

2015/12/30 iPhone と iPad の特許をめぐるApple、Samsungとの特許係争、続く

最高裁は2016年3月21日、Samsung が同社とAppleとの間で争われている知的財産侵害訴訟の判決を見直すよう求めて上訴した件について、Samsungの上訴を認める決定を下した。

2016/3/26 米最高裁、Samsung とApple のデザイン訴訟を審理


最高裁が意匠に関する訴訟を取り扱ったのは、1800年代にスプーンの取っ手、カーペット、鞍、ラグなどに関するものが最後で、その後は扱っていない。

連邦最高裁が上訴を認める確率は1%にも満たない。Samsungに有利に進んでいると見られた。

Samsung と Apple のデザイン特許訴訟で、2016年10月11日に連邦最高裁でヒアリングが行われた。

2016/10/21 Samsung と Apple のデザイン特許訴訟で米最高裁のヒアリング

複数の最高裁判事が「SamsungがAppleに支払うデザイン特許に関する損害賠償金は、Samsungが侵害認定を受けたスマートフォンから得た総利益とすべきでない」という見解を明らかにした。

最高裁は2016年12月6日、連邦巡回区控訴裁判所 (CAFC) の判決を8:0で覆し、次の通り述べた。

特許法289条の Article of manufacture は製品全体及び構成部品の両方を意味する。
消費者に販売される最終製品のみを意味するという解釈は狭すぎる。
意匠特許保有者は侵害製品の総利益を常に回収する権利は持たない。
意匠特許侵害製品が複数の部品で構成される場合、損害賠償金が侵害微分に対応する額に限定される場合がある。

Apple側は、審理中に、侵害部分が製品全体ではないことの証明責任はSamsungにあるが、同社はこれを証明しなかったとした。

最高裁は本事件において、Appleの意匠特許を侵害する「article of manufacture」はスマートフォンまたはスマートフォンの構成部品のどちらかという問題については明言せず、連邦巡回区控訴裁判所に対し、「本事件で『article of manufacture』はスマートフォンの全体を意味するか、それとも、構成部品を意味するか」を 審理するよう命じた。

差し戻し審で、米カリフォルニア州サンノゼの連邦地裁陪審は2018年5月24日、Appleへの損害賠償を5億3900万ドルと認定した。

最高裁が2016年に見直しを求めた賠償額は399百万ドルであった。最高裁が下級審に見直しを求めたことでSamsungが支払う賠償金は減額されると見られたが、今回の陪審評決が認定した賠償額は1億4000万ドル上積みされた。

専門家は、「陪審はアイフォーンのデザインの要素に関連する部分に大きな価値を置き、Appleがこれまでに獲得した金額を上回る賠償額を認定した」と分析した。

Samsungは評決の後の声明で、「今日の認定は、意匠権侵害の範囲に関して最高裁が全会一致で下したSamsungに有利な判断を無視した行動だ。企業や消費者全員にとって創造性や公正な競争を妨げない結果を獲得するためあらゆる選択肢を検討する」とコメントした。Samsungの弁護士は陪審評決は「証拠に裏付けられて」いないとし、控訴する可能性があると説明した。

Samsungは問題となっている主要事実が現実に存在しないことを証明できる書面を保持しているとして、略式判決か、再審を求めたとされる。また特許権侵害で支払った149百万ドルについても、問題特許は既に無効化されているとして払い戻しを要求しているとされ、これらの審問が7月26日に予定されているとされる。

このなかでの和解である。

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これとは別に、Appleが別の5つの特許侵害で、Samsungは自社の2つの特許侵害で、相互を訴えた裁判がある。

これについては、2014年5月2日付で地裁で実質的にApple側の勝訴となったが、2016年2月に米国連邦巡回控訴裁判所は、これを覆し、Samsungに対する119.6百万ドルの支払い命令を取り消している。

2016/3/1 Samsung、Apple との特許闘争に逆転勝訴


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