EU首脳会議、移民問題で不十分な合意、ドイツ内相が辞任示唆

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欧州連合は6月28~29日に開いた首脳会議で、徹夜の激しい議論の末に移民・難民問題をめぐって一応の合意に達した。

欧州理事会のDonald Tusk常任議長(EU大統領)が「EU加盟28か国の首脳は、欧州理事会で移民問題を含む結論に同意した」と明らかにした。

発表文  http://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2018/06/29/20180628-euco-conclusions-final/

移民問題については、各国の立場の違いを映し、具体策の先送りが目立つ内容である。域外に置く難民申請手続きのための「入国プラットフォーム」 も場所は未定、EU加盟国内に設定する共通の収容施設の場所も未定、認められた難民の受入場所の決め方も先送りした。

共同声明では「再配置や再定住など、これらのセンターの文脈における全ての措置は任意となる」としており、実現に疑問が持たれる。

Tusk常任議長(EU大統領)も、「難民問題については成功というには余りにも早すぎる。合意しようと努力したが、決まったのは最も簡単な部分であり、多くの問題が待っている」と述べた。


しかし、ドイツの主張を容れ、「難民らの加盟国間移動抑制のため、必要なあらゆる法的・行政的手段を行使する」と明記された。

Merkel首相は会議後、「難民の移動について秩序と対策が必要なことが確認された」と述べ、キリスト教社会同盟(CSU)の要望に一定の回答が出たとの見方を示した。

現在の第4次Merkel政権は、CDU・CSUと第2党のドイツ社会民主党(SPD)の大連立政権であるが、キリスト教社会同盟(CSU)の党首である Seehofer内相が、寛容な難民政策が「欧州を分断させた」と糾弾し、他のEU諸国で難民登録済みの場合はドイツへの入国を許さず、元登録国に送還する措置の即時導入を要求している。

   2018/6/26 EUの危機:難民問題

首相は全体会議とは別に、ギリシャ、スペインの間で難民送還について合意したと発表した。両国で難民登録した難民がドイツに入国しようとした場合、両国に送還するというもの。

付記

ドイツは8月6日、スペイン経由でドイツに渡ってくるアフリカ系移民について、スペインに送還することでスペインと合意した。

8月11日以降、スペインに最初に入国したことが判明した移民について、ドイツは48時間以内にスペインへ送り返す。これまで両国の間には明確な取り決めがなく、経済が堅調なドイツを目指しアフリカや中東から渡ってくる移民が絶えなかった。

Merkel首相はフランスのほか、チェコ、ハンガリー、ポーランドといった中欧の国々を含む計14か国と同様の合意を結ぶと している。

しかし、移民・難民の受け入れに猛反対しているハンガリーとチェコは、そんな合意は存在しないと強く反発した。
また、移民が大量に流入するイタリアは合意相手に含まれていない。(イタリアが同意することは考えられない。)

Merkel首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)と Seehofer 内相のキリスト教社会同盟(CSU)は、7月1日(日曜)にこれらの合意について話し合った。

内相は、首相が決めた案は不十分であると決めつけ、移民を送り返すしかないと述べた。

7月2日に首相と会談し、さらなる譲歩を求める。首相から納得のいく回答を得られなければ、内相と党首を辞任すると示唆した。

辞任の場合、連立離脱、政権崩壊の可能性が高まる。

付記  ドイツ、土壇場で政権崩壊を回避

Merkel 首相は7月2日夜、対立していた Seehofer 内相と会談し、新たな難民対策で合意した。Seehofer 内相は先に表明していた辞意を撤回、連立政権崩壊の危機はひとまず回避された。

会談にはMerkel 首相の国政第1党・キリスト教民主同盟(CDU)と、統一会派を組む Seehofer氏の南部州地域政党・キリスト教社会同盟(CSU)の幹部が参加 した。

Merkel 首相はSeehofer 内相が主張する国境での入国拒否を認めなかったが、ドイツに向かう難民の「玄関口」にあたるオーストリアとの国境に管理施設 (transit centres)を設け、他のEU加盟国で難民申請登録した人々はその国へ送り返すことで合意した。 送還は2カ国間協定を結んで行う。

Merkel 首相は会談後の記者会見で「EU内を移動する2次的移民を制御できる」と述べた。

最初に登録した国が送還を受け入れないために多数が残留しているが、これらについては経由地であるオーストリアに送り返すとしている。
しかし、オーストリアとは送還に関する合意はなく、これに反発している。

またCDU・CSUと連立を組む社民党(SPD) は7月2日、「閉鎖的な施設は拒否する」と明言しており、新たな政権不安につながる。

ドイツの民間難民支援団体はEU首脳会議で合意した難民管理施設を「絶望的な収容施設」と指摘、「政府首脳たちには、追われた人々への同情がない」と厳しく批判しており、今回の決定についても議論を呼ぶのは必至である。

一方で、Merkel首相が難民送還に動いたことで、これまで人道的な難民保護策を目指してきたMerkel首相の求心力低下も みられる。

ドイツの民間難民支援団体は難民管理施設を「絶望的な収容施設」と指摘、「政府首脳たちには、追われた人々への同情がない」と厳しく批判した。

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6月28日午後3時に始まった首脳会議は、 まずEUの通商政策や安全保障などの分野で合意文書をまとめた。その後の夕食会合で難民・移民問題の協議をする予定だった。

しかし、反移民を掲げるイタリアのポピュリスト政権を率いるGiuseppe Conte首相が、移民の受け入れに関する負担の分担を強く要求し、合意文書のサインに拒否権を発動するという異例の行動に出た。

欧州への難民流入数は年間100万人以上に及んだ2015年などに比べれば大きく減っているが、地中海を船で渡ってくる難民や移民はあとを絶たない。その玄関先になっているイタリアのConte首相は、負担をほかの加盟国が分け持つよう強く主張した。

2018/6/26 EUの危機:難民問題

Conte首相はEU本部ビルに到着した際、「言葉だけはもうたくさん。必要なのは行動だ」と述べ、イタリアが求める難民受け入れの分担に加盟国が応じなければ「合意なしで首脳会議を終わらせる」と妥協しない姿勢をアピールした。

このため、12時間にわたって協議が続けられた。

移民問題についての結論は次の通りだが、各国の立場の違いを映し、具体策の先送りが目立つ内容である。

今後、EUとして足並みをそろえた対応を打ち出して問題を解決できるか、結束が問われる。

地中海中央ルート(イタリア)に関しては、リビアその他からの違法流入を止める努力を強化。
東部ルート(ギリシャ)については、EUとトルコの協定を完全実施し、新たな流入を防ぐ。
西部ルート(スペイン)での最近の流入増に対し、スペインや流出・中継国(モロッコ等)の違法流入防止の努力を資金面その他で支持する。

難民申請手続きのための「入国プラットフォーム」を域外に設置する。そこでは国際法に基づき、個々人の事情を審査し、不法移民をより分けて出身国に送り返すことなどを狙っている。
設置場所は北アフリカになる可能性が最も高いが決まっていない。

救助された難民はEU加盟国内に設定する共通の収容施設に移し、送還されるべき不法移民か、保護されるべき対象かを区分する。
認定された場合は、受け入れをEU各国で分担し、認められなければ直ちに祖国へ送還する。
共通の収容施設の設置やどこに移すか、どこに居住させるかは全てボランタリーベースで、ダブリン規定に縛られない。

共通の収容施設はフランスが主張したという。スペインやイタリアなどを想定しているが、設置は加盟国の判断に任せることで一致した。 スペインやギリシャが設置に前向きな意思を示したという。フランスが自国に収容施設は置かない方針を主張したため、イタリアが態度を硬化させ、最終的に施設の設置は強制しないことで折り合った。Conte首相は同国内にこのようなセンターをつくるかはまだ決めていないと語った。

認められた難民の受入についても、ハンガリーなど受け入れ自体を拒否する国もあり、EU内で受け入れをどう分担するかの議論は先送りした。

トルコのシリア難民施設に2回目の30億ユーロ(20億ユーロはEU予算から、10億ユーロは各国の拠出から)の支払いをするとともに、EUのアフリカ信託ファンドに5億ユーロを送金する。

EUの外部との国境の管理の強化と違法移民の効果的な送還が重要で、欧州対外国境管理協力機関(FRONTEX)を強化する。欧州委員会が欧州の送還政策を改善する案を提案する。

難民の加盟国間の移動が問題を生む恐れがあるため、抑制のため、各国はこれに対する必要なあらゆる法的・行政的手段を行使し、互いに協力しあう。

Conte首相は合意後、記者団に「イタリアはもはや孤独ではない。われわれは満足している」と語った。

イタリアにとって負担減になることは、具体的には何も決まっていない。Conte首相がこれで何故満足したのか、分からない。

Merkel首相は合意内容を歓迎し、「今日を終えて楽観的になった。やらなければならないことがたくさんあるが、われわれは今こそ、異なる見解さえ克服して、本当に取り組みを進めることができる」と述べた。

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