京都大学医学部附属病院は7月30日、iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験を8月1日より開始すると発表した。
高橋淳教授らのチームが学内の治験審査委員会の審査を終えて、6月4日付で医薬品医療機器総合機構(PMDA)を通じ、厚生労働大臣に医師主導治験として治験計画届を提出していた。
iPS細胞からつくった細胞を人に移植する研究が認められるのは目の難病と心臓病に続いて3例目。パーキンソン病の治験としては世界で初めてとなる。
理化学研究所と先端医療振興財団は2013年7月30日、iPS細胞を使い、滲出型加齢黄斑変性の患者6人を対象に、目の網膜を再生する世界初の臨床研究を8月1日に開始すると発表した。
2013/12/4 大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス、iPS細胞由来医薬品を共同開発
厚生労働省の再生医療等評価部会は2018年5月16日、iPS細胞から作った心臓の筋肉細胞をシート状にして重症心不全患者の心臓に移植する大阪大の臨床研究計画を、臨床研究の患者の対象を厳しくすることなどの条件付きで承認した。
2018/5/19 iPS細胞の心臓病臨床研究、承認
パーキンソン病は脳で神経伝達物質のドパミンを分泌する神経細胞が失われる難病で、体が震えたり筋肉がこわばったりする。
ドパミンはドパミン神経細胞の中で作られる。パーキンソン病は、ドパミン神経細胞が進行性に失われ、ドパミン産生量が減少することにより発症する。
症状を和らげる飲み薬などの治療では神経細胞の減少を止められず、根本的な治療法はない。
京都大学iPS細胞研究所で構築している「再生医療用iPS細胞ストック」から提供されたiPS細胞をドパミン神経前駆細胞へ分化させ、分化誘導したドパミン神経前駆細胞(計約500万個)を、定位脳手術により、患者の脳の線条体部分(左右両側)に移植する。
ドパミン神経前駆細胞は、ドパミン神経細胞に分化する手前の細胞で、パーキンソン病モデル動物を用いた研究から、ドパミン神経前駆細胞を移植することによって脳内に成熟ドパミン神経細胞を効率的に生着させられることが明らかになっている。
手術は、頭部を固定した上で頭蓋骨に直径12mmの穴を開け、そこから注射針のような器具を用い、細胞を注入する。
細胞移植後に免疫反応が起こる可能性があるため、本治験では、既に臓器移植等において臨床実績のあるタクロリムスを細胞移植時の免疫抑制剤として使用する。
実施予定人数は7人で、移植後2年間観察する。
本治験は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)と大日本住友製薬より支援を受けて実施される。
治験が成功すれば大日本住友製薬が開発を引き継ぎ、実用化を目指す。
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本施設は、他家iPS細胞由来の再生・細胞医薬品専用の商業用製造施設としては世界初。
同社は産学の連携先と、加齢黄斑変性、パーキンソン病、網膜色素変性、脊髄損傷等を対象に、他家iPS細胞を用いた再生・細胞医薬事業を推進しており、本施設では、治験薬製造と初期の商用生産を行う。
京都大学iPS細胞研究所と大日本住友製薬は2011年4月、難治性希少疾患の治療法創成を目的とする5年間の共同研究を行うことについて合意し、共同研究契約を締結した。
研究期間は2011年3月〜2016年3月(5年間)で、両者は疾患特異的人工多能性幹細胞(iPS 細胞)を用いて、病気が進行するメカニズムを解明し、疾患特有の疾患関連シグナルを同定してその経路を阻害する治療薬を探索する。
大日本住友製薬は、両者の共同研究で探索した化合物の評価・最適化・合成展開を行う。大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス(旧称 日本網膜研究所)は2013年12月2日、再生・細胞医薬事業に関する提携を発表した。
加齢黄斑変性等の眼疾患を対象としたiPS細胞由来網膜色素上皮細胞(RPE細胞)を用いるもので、世界初のiPS細胞技術を用いた再生・細胞医薬事業に向けたもの。2013/12/4 大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス、iPS細胞由来医薬品を共同開発
京都大学 iPS細胞研究所(CiRA)と大日本住友製薬は2017年8月1日、戸口田淳也教授、池谷真准教授を中心とするグループが iPS細胞を使って、進行性骨化性線維異形成症(FOP)の異所性骨化のメカニズムを解明し、それを抑える薬の候補としてラパマイシンを同定したと発表した。
2017/8/3 京大が iPS創薬の世界初の治験開始
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