原子力規制委員会は7月4日の定例会で、日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村、110万キロワット)について、再稼働に向けた安全対策の基本方針を定めた新規制基準に適合しているとする審査書案を了承した。安全審査の事実上の「合格証」で、国民からの意見公募などを経て正式合格する。
規制委は、地震や津波、炉心溶融のような重大事故への対策が新基準に照らして妥当と判断した。
東海第2原発は、電力大手9社と電源開発の共同出資による日本原子力発電が1978年に運転を開始。国内で初となる出力100万キロワットを超える大型の沸騰水型原発で、東電と東北電力に送電してきた。
2012/10/20 日本原子力発電の損益状況
東日本大震災で5.4 メートルの津波に襲われた。運転を緊急停止し、外部電源を失い、非常用発電機1台が停止した。安定した冷温停止になるまで3日半かかった。同じ敷地内の東海原発は廃炉作業中。
2011年の東日本大震災で地震や津波の被害を受けた原発としては初の合格となる。
安全審査の合格は全国で8原発15基目。東京電力福島第一と同じ沸騰水型炉(BWR)としては、柏崎刈羽6、7号機に続き2カ所目となる。
原発の運転期間は原則40年と定められ、規制委が認めれば1度だけ最長20年間延長できる。このため東海第2は運転40年の前日の11月27日までに、新規制基準適合に加えて運転延長、設備の工事計画の二つの審査をクリアする必要がある。
原電は安全対策工事を2021年3月までに終える予定で、実際の再稼働はそれ以降になる。
想定する最大の地震の揺れ(基準地震動)を1009ガル、最大の津波の高さを約17メートルとして安全対策を強化。高さ20メートル、全長約1.7キロの防潮堤を建設して津波の浸入を防ぐ。
また原子炉格納容器の容積が小さく、事故時に事態が悪化しやすい沸騰水型の特徴を踏まえ、炉心を冷やす予備の冷却装置を追加で備える。
安全対策費に1740億円が必要としたが、原発専業の原電は自前で調達できず、規制委は資金確保を合格の前提条件とする異例の対応をとった。
原電は東京電力と東北電力から支援を受ける方針を示した。
また原電は必要な地元同意について、立地自治体以外の周辺5市にも「実質的な事前了解権」を認める全国初の安全協定を結んでいる。東海第2は首都圏唯一の原発で、30キロ圏内に全国の原発で最多の96万人が暮らしており、地元同意は難航も予想される。
既存の安全協定では事前了解権が東海村と県に限られるため、東海村・日立市・ひたちなか市・那珂市・常陸太田市・水戸市の「原子力所在地域首長懇談会」は、原電に「東海村と同等の権限」を要求した。
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