エーザイ、アルツハイマー薬治験で有意な結果

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エーザイ及びアルツハイマー薬で同社と提携するBiogen, Inc は7月6日、両社が共同開発している抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体 BAN2401 の早期アルツハイマー病856人を対象とした臨床第Ⅱ相試験において、有意な結果を得たと発表した。

臨床第Ⅱ相試験の18カ月の最終解析で、統計学的に有意な臨床症状悪化抑制脳内アミロイドベータ蓄積減少を証明した。

米国イリノイ州シカゴで開催されるアルツハイマー病協会国際会議(Alzheimer's Association International Conference)において、7月25日に口頭発表する。

この発表を受け、同社の株価は高騰した。

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エーザイとBiogen は2017年10月23日、臨床第III相試験進行中のaducanumabを含むアルツハイマー病治療剤の開発・販売に向けた提携契約を拡大すると発表した。

両社はアルツハイマー関連で下記の製品を開発しており、エーザイが以前から販売しているアリセプトを除き、開発で提携している。

今回の提携契約拡大で、エーザイは、Biogenの抗アミロイドβ(Aβ)抗体BIIB037=aducanumab に対する共同開発・共同販促オプション権を行使した。

エーザイ アリセプト 〈既存製品〉
(donepezil)
エーザイの杉本八郎博士らが開発
アルツハイマーでは、神経伝達物質のアセチルコリンが脳内で減少している。

アセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼの作用を阻害することで、アセチルコリンの濃度を高める。

新規ヒト化モノクローナル抗体
「BAN2401」
2007/12 スウェーデンのBioArctic Neuroscience ABから全世界の研究・開発、製造、販売の独占ライセンスを受ける。 アルツハイマー病の原因と考えられるベータ・アミロイド成分を除去
βサイト切断酵素(BACE)阻害剤
elenbecestat「E2609」 x下記
エーザイが創製

βアミロイドの脳内の沈着はアルツハイマー型認知症の病因の一つ
アミロイド前駆体タンパク質のβサイト切断酵素であるBACEを阻害することでβアミロイドの総量を低下させる。
Biogen 抗アミロイドβ(Aβ)抗体
aducanumab
(BIIB037) x→申請へ
Neurimmune社より共同開発およびライセンス契約締結のもとに導入 アミロイド斑(プラーク)は、アミロイドβ蛋白が蓄積したもので、アルツハイマー病患者の脳にみられる。

aducanumab 投与でアミロイドプラークのレベルを下げる

2017/10/27 エーザイとバイオジェン、アルツハイマー治療剤での提携契約を拡大 

付記

Biogenとエーザイは2019年3月21日、aducanumab(BIIB037)の有効性、安全性を評価する臨床第III相国際共同試験(ENGAGE試験、EMERGE試験)を中止することを決定したと発表した。本試験において主要評価項目が達成される可能性が低いと判断されたことに基づくものであり、安全性に関する問題によるものではない。

    付記 2019年10月22日、新薬承認をめざす

付記

エーザイとBiogen は2019年9月13日、経口βサイト切断酵素(BACE)阻害剤elenbecestat「E2609」 について、早期アルツハイマー病(AD)を対象とした臨床第Ⅲ相試験(MISSION AD1、AD2)の中止を決定したと発表した。独立安全性データモニタリング委員会(DSMB)により行われた安全性レビューにおいて、本試験を継続しても最終的にベネフィットがリスクを上回ることはないとの判断から試験の中止が勧告されたことに基づく。

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今回の「BAN2401」は、スウェーデンのBioArctic Neuroscience ABが開発した、アルツハイマー病に対する免疫療法剤創製を目的としたベータ・アミロイド(Aβ)に対するヒト化モノクローナル抗体で、2003年1月に同社を設立した Uppsala UniversityのProf. Lannfelt により発見された家族性アルツハイマー病の原因であるアークティック変異Aβに関連する研究に基づいたもの。

アルツハイマー病発症には、神経毒性を有するAβの脳内への蓄積が重要な役割を果たしていると考えられている。病理学的には、繊維化し不溶性となったAβを主成分とする老人斑が脳内に認められる。

近年の研究により、アルツハイマー病の発症プロセスとしての神経毒性の本体は、繊維化し不溶性となったAβではなく、その前段階であるAβプロトフィブリルを含む可溶性のAβ凝集体であることが明らかにされている。

アルツハイマー病免疫療法には、
Aβを投与して生体内でAβに対する免疫反応を惹起させるワクチン療法や、
Aβをターゲットとしたモノクローナル抗体を投与する抗体療法がある。

BAN2401はBioArctic が有する技術を用いてAβプロトフィブリルをターゲットとした抗体療法を目指すもので、アルツハイマー病発症の原因の一つと考えられている脳内のAβプロトフィブリル量を低下させるもの。


エーザイとBioArctic は、2007年12月3日、BAN2401について、全世界におけるアルツハイマー病を対象とした研究・開発、製造、販売に関する独占ライセンス契約を締結した。

BAN2401は、Aβの可溶性凝集体の一種であるプロトフィブリルを選択的に認識するヒト化モノクローナル抗体であり、前臨床段階にある。

エーザイは、自社で創製したE2012(ガンマ・セクレターゼ・モジュレーター)とともに新規性の高い抗体であるBAN2401の開発を進めることで、低分子化合物と免疫療法という異なるアプローチで次世代のアルツハイマー病治療薬の創出を目指す。「アリセプト®」によって切り開かれたアルツハイマー病の薬物療法のパイオニアとしての使命を果たすため、自社開発および他社との提携を通じて、次世代のアルツハイマー病治療薬の開発を加速させていく 。

アリセプト(donepezil) は、コリンエステラーゼ阻害剤の1種であり、アルツハイマー型認知症(痴呆)、レビー小体型認知症進行抑制剤として利用される。

E2012はエーザイが創製した低分子化合物で、ガンマ・セクレターゼ・モジュレーターとして病因となるAβの産生を抑制する。
一方、BAN2401は免疫療法薬を目指すヒト化モノクローナル抗体で、アルツハイマー病の原因と考えられるAβ成分を除去する。

2014年3月にBAN2401に関する共同開発・共同販促契約をBiogenと締結した。

エーザイは2006年3月31日、ディナベック ㈱(NNAVEC:現在のIDファーマ)との間で アルツハイマー病に対するワクチン療法の創薬研究に関する契約を締結。
ディナベック ㈱
1995/3 遺伝子治療関連技術開発を目的とした、国家研究プロジェクトが開始され、医薬品機構及び製薬会社7社が出資し、㈱ディナベック研究所 設立
2003/9 経営陣と製薬会社4社(協和発酵工業、三共、久光製薬、山之内製薬)が出資、上記から営業譲渡を受け、ディナベック㈱を設立
2006/3 エーザイと「センダイウイルスベクターを用いたアルツハイマー病用ワクチンの開発」に関する研究協力契約を締結
2013/10 ㈱アイロムホールディングスの子会社に
2015/4 ㈱IDファーマに改称
エーザイは2002年以降、TorreyPines Therapeutics, Inc.との間でアルツハイマー病に関する遺伝子の発見の共同研究を行ってきたが、2008年11月にこれを終了し、TorreyPines Therapeuticsの研究結果を全て買い取った。


この領域で世界初の薬「アリセプト(一般名ドネペジル)」を1997年に発売すると、ピーク時の2010年3月期には世界で約2900億円を売り上げた。

しかし、アリセプトの特許は米国で2010年11月に、日本では2011年6月に切れ、売上高は激減した。

今回の発表を受けての株価高騰は、この新薬への期待を表している。

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