米国の大手原子力発電企業 Entergy Corporationは2016年11月8日、バーモント州で2014年末に永久閉鎖したVermont Yankee 原子力発電所(BWR、65万kW)を施設の解体およびサイトの復旧事業を専門とするNorthStar Group Servicesに売却すると発表した。
アメリカの電力大手Entergy Corporationは2013年8月27日、バーモント州南部にあるYankee 原子力発電所の稼働を2014年の末に停止し、廃炉にすることを決めたと発表した。
原発は "safe-store"(安全貯蔵)の状態に置かれ、核物質が冷却されて取り除けるまで60年間そのままに置かれる。
2013/9/2 米・電力大手Entergy、Vermont Yankee原発の廃炉を決定
Vermont Yankee 原発は閉鎖後、廃止措置オプションの1つである「SAFSTOR」が適用され、汚染構造物を一定期間安全に貯蔵する措置が取られていた。
当初計画によると、Vermont Yankee 原発の除染と解体作業は2068年に開始し、廃止措置とサイトの復旧作業は2075年までに完了する予定だった。
廃止措置オプション
DECON(Decontamination:除染)
5年ほどで廃止措置を完了させることができ、発電所閉鎖後わずか数カ月で廃止措置を開始することができる。
除染もしくは核燃料及び設備(施設の放射能の99%を占める)の撤去により放射線レベルはすぐに下がり、作業員が残りの廃止措置プロセスを安全に完了できるようになる。SAFSTOR(Safe Storage:安全貯蔵)
時間の経過によって放射性物質が安定した状態になるのを待つもの。
閉鎖された施設は何も手をつけず、60年間管理貯蔵状態に保たれる。燃料は原子炉格納容器から取り出された後サイト内の燃料プールで補完され、その間はNRCが監視、メンテナンス、防護を行う。
放射能が適切なレベルまで減衰した後、施設はDECONアプローチと同様の方法で解体される。ライセンス保有者は、ほぼすべての段階でこのSAFSTORアプローチを中止し、DECONアプローチに移ることができる。
ENTOMB(Entombment:埋葬)
国際原子力機関は、シビアアクシデント発生後といった特定の状況下でしかこのアプローチを推奨していない。
放射能エリアは最大限減少し、(コンクリートなどで)不特定期間、箱のように閉じられる。
Entergy Corporationは、NorthStar Group Servicesの子会社にVermont Yankee 原発を売却するとともに、米原子力規制委員会(NRC)が発給した同発電所のライセンスを移転することで、廃止措置とサイトの復旧作業を数十年、加速することができると説明 している。
NorthStar Group Servicesへの売却により、除染と解体は2021年までに、最終的なサイトの復旧は2030年(できれば2026年)に早められる見通しである。
また、使用済燃料を乾式貯蔵施設(ISFSI)に移送する作業も促進する方針で、2020年に予定していた移送完了日程は2018年に前倒しされる。
売却価格は公表されていないが、現地の報道によるとEntergy は同原発の廃止措置信用基金5億7490万ドルを、使用済燃料の管理義務とともにNorthStar に移すことになると見られている。
売却手続を実行に移すには、NRCおよびバーモント州公益事業委員会の承認が必要。
現地では、意見が分かれた。
廃炉が早く終われば、跡地利用も描きやすくなる。
しかし、NorthStar は研究用原子炉を解体した経験しかない。
Entergy Corporationの場合は半公共企業のため、心配はないが、NorthStarの場合、もし経営破綻をすれば、廃炉途中のまま置き去りにされる。
NorthStar とAREVA Nuclear Materials は2017年2月、原発の廃炉を目的とする JV のAccelerated Decommissioning Partners (ADP) を設立したと発表した。
JVは、米の原発を安全に、かつNRCや各州の規制に対応して廃止するための全ての経営上、規則上、技術上、かつ財政上の要件を取得することを狙う。
AREBAの持つ原子力機器の解体、使用済燃料の管理技術と、NorthStarの持つ施設の解体、サイト復旧の能力を組み合わせ、確実な廃炉作業を提供するとしている。
協議は15カ月続き、2018年3月2日に妥協案が発表された。現地の先住民の団体や、最も強力に反対したNew England Coalitionも加わった。但し、Conservation Law Foundationなど一部は納得せず、調印に参加しなかった。
参加団体:NorthStar and Entergy、州のPublic Service Department、State Attorney General's Office、Agency of Natural Resources、New England Coalition、先住民のElnu Abenaki tribe、Windham Regional Commission、Vernon Planning and Economic Development Commission
それによると、下記を条件に原発のEntergyからNorthStar Group Servicesへの譲渡を認めるというもの。
売り手と買い手は廃炉を支えるため、追加でほぼ2億ドルを用意する。
施設の汚染の "comprehensive assessment"を含む新しい復旧基準に同意する。
Entergy は本年末までに売却を終えたいとしている。
しかし、Nuclear Regulatory Commission は4月5日、今までの情報では資金面で十分であるとの認識は出来ないとし、両社に詳細な説明を求めた。
NRCがライセンスの移転を認めないと、売却は意味がない。
州のPublic Utility Commission は7月6日、NRCが結論を出すまで、売却承認の決定を延期すると発表した。
両社は依然、12月31日までに売却することを期待している。
コメントする