Bayer のMonsanto買収 完了と、Monsantoの除草剤への賠償命令判決 

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Bayerは2016年9月14日、Monsantoの買収で合意したと発表した。

債務を含む買収総額は約660億ドル、債務除きでは570億ドルの買収で、2017年末までに完了する見通しとしていた。

2016/9/19 Bayer、Monsantoを買収 

しかし、買収によって農薬や種子などの分野で、競争が損なわれる恐れがあるとみなされ、各国の独禁当局が問題ありとした。

Bayerは2017年10月13日、Monsanto買収を進めるため、特定の Crop Science事業をBASFに59億ユーロで売却すると発表した。

2017/10/16 Bayer、Monsanto買収の独禁法対策で、BASFに一部事業を売却

EUは当初2018年1月8日までに買収を承認するかどうか判断するとしたが、これを3月12日に延ばし、更に4月5日に延ばした。両社の種子、殺虫剤、デジタル農業での重複が問題となった。

EUは2018年3月21日、両社の種子、殺虫剤、デジタル農業での重複の解決を条件に買収を承認すると発表した。

バイエルは2018年4月26日、2017年10月のBASFとの合意内容に加え、BASFに事業と資産を 17億ユーロで売却することで合意した。 (合計76億ユーロ≒ 90億ドル)
新たに追加されたのは以下の事業で、EUや他の諸国の独禁法当局との約束を満たすための処理。

  • Nunhems®ブランドで世界的に販売されているすべての野菜種子事業
  • Poncho®、VOTiVO®、COPeO® 、ILeVO®の各ブランドで販売されている種子処理製品
  • 小麦交配種の研究開発プラットフォーム
  • 最新のデジタル農業プラットフォーム、xarvioTM

米国は5月29日、条件付きで承認した。

これで全ての条件が整い、6月7日に買収が完了、MonsantoはBayerの100%子会社になった。買収額は総額625億ドル。

2018/3/23 EU、バイエルのモンサント買収を承認


8月10日にBayer の株価は急落した。

カリフォルニアの陪審員が8月10日に、モンサントの除草剤 Roundup による発癌被害で289百万ドルの賠償評決を下した。このニュースが伝わり、株価が下落した。

Roundup については、全米で7月末で約 8千件の訴訟があるが、最初の裁判である。

原告は学校の校庭の管理人で、30年以上にわたって除草剤を扱ってきたが、非ホジキンリンパ腫にかかっており、医者は2020年まではもたないだろうとしている。
原告の病状を鑑み、審理を早めた。

陪審員は3日間の審議で、Monsantoが原告や他の消費者に除草剤の発癌リスクを伝えなかったとし、損害賠償として39百万ドル、懲罰的損害賠償として250百万ドルの支払いを命じた。

原告弁護士は、今回初めて会社の内部資料が出され、Monsantoが何十年にわたり、glyphosate除草剤、特にRoundupが癌を生む可能性があることを知っていたことが明らかになったと述べ、消費者の安全よりも利益を重視していると非難した。

これに対し、Monsantoは控訴すると述べた。glyphosateは世界で最も広く使用されている除草剤で、発癌性はなく、何十年もの研究が人体に安全であることを示しているとしている。

和解は考えておらず、他の訴訟も含め、精力的に戦うとしている。

付記

San Francisco Superior Court は10月23日、損害賠償は39百万ドルのままとし、懲罰的賠償は39百万ドルに大幅減額した。

しかし、Bayer主張の無罪にならなかったため、Bayerの株価は下落した。

付記

米カリフォルニア州地方裁判所の陪審は2019年3月19日、「Roundup」を長年使用し、喉に悪性リンパ腫を患った男性がモンサント側を相手取って訴えていた裁判で、ラウンドアップががんを発生させた「事実上の要因」だったとの評決を下した。

Edwin Hardeman(70)は1980年から2012年にかけ、カリフォルニア州北部Sonoma郡の自宅でラウンドアップを定期的に使用。その後、がんの一種である非ホジキンリンパ腫と診断された。

陪審は3月27日、80百万ドルの賠償を命じた。被害に対して5百万ドル、懲罰的賠償が75百万ドル。

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日本でラウンドアップを扱う日産化学は8月15日、下記の発表を行った。

本訴訟は2015年に国連の世界保健機関(WHO)の下部組織である国際がん研究機関(IARC)が、ラウンドアップの有効成分であるグリホサートをグループ2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)に分類したことに基づいて起こされたものと思われます。

グリホサートの安全性については、IARCと同じ国連のFAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)が2016年5月に「食を通じてグリホサートがヒトに対して発がん性のリスクとなるとは考えにくい」と発表しました。

農薬に関しては、日本を含む各国の規制当局が、発がん性を含む様々な項目についての適正なガイドラインに沿った多数の試験成績を基に、継続的かつ厳正に審査したうえで使用を認可しています。

日本では内閣府食品安全委員会が2016年7月に「神経毒性、発がん性、繁殖能に対する影響、催奇形性及び遺伝毒性は認められなかった」と結論付けた評価書を発表しています。


また、欧州では欧州食品安全機関(EFSA)が2015年11月に「グリホサートは発がん性または変異原性を示さず、受精能、生殖、胚発生に影響する毒性を持たない」、欧州化学物質庁(ECHA)が2017年3月に「グリホサートは発がん性物質、変異原性物質あるいは生殖毒性と分類する基準に合致しない」という見解を示しました。

さらに、米国では米国環境保護庁(EPA)が2017年12月に「グリホサートはヒトに対して発がん性があるとは考えにくい」と結論付けた評価書案を公表しました。

当社はこの判決が農薬規制当局の従来の判断に影響を与えるものではないと考えております。

WHOのIARC (国際がん研究機関) 人の非ホジキンリンパ腫に対して限られた根拠があり、さらに動物実験では発がん性の明白な根拠がある」としている。
非ホジキンリンパ腫とglyphosateの年間使用日数に「相関関係」
が見られたというもので、原告が30年以上扱ってきたという事実には合致する。

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