JERA、ADNOC LNGからのLNG購入契約量を大幅に縮小

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東京電力と中部電力のJVのJERAは8月7日、Abu Dhabi Gas Liquefaction Company Limited(ADNOC LNG)とのLNG長期購入契約の更新で基本合意に至ったと発表した。

前身の東京電力は1977年から長期契約でLNGを購入しており、その契約が2019年3月で終了する。このたび、新しい契約で基本合意した。

現契約は25年契約で、年間数量430万トンであるが、今回の契約では3年間で年間最大50万トンと大幅減となっている。

契約期間 期間 年間数量 条件
当初契約(東電) 1977年~1994年 17年 430万トン DES   仕向け地変更不可
更新契約(東電) 1994年~2019年 25年
今回契約(JERA) 2019年~2022年 3年 50万トン DES 仕向け地変更可 (?)


停止中の原発が再稼働すればLNG火力の稼働率は下がるが、原発再稼働の見通しが不透明なため、今回の契約では売買期間を3年に大幅短縮 した。

今後、LNGを安定調達するため、(1)柔軟な取引条件の獲得(2)スポット取引による調達拡大――などにより、最適なLNG調達ポートフォリオの構築によって、事業環境の変化への柔軟な対応と、競争力ある調達に努める。

今回の契約もDES(本船持込渡し)でLNGの運搬船はアビダビ側が用意するが、仕向け地を変更できる柔軟な取引条件で合意した模様で、次の通り述べている。

本契約は、2017年6月に公正取引委員会が公表した液化天然ガスの取引実態に関する報告書に沿った内容となっております。これは、LNG需要変動への対応に貢献するだけでなく、結果として、当社のLNG運用の最適化にも資するものです。

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公取委は2017年6月28日、液化天然ガスの取引実態に関する調査の発表を行った。

競争政策上の考え方 として、仕向け地制限 を問題としている。

米国のシェールガスからのLNGはFOB契約で、他社への転売は自由であるが、これまでの長期契約は全て仕向け地制限がついており、発電所の操業上、余剰となっても転売できない仕組みとなっている。

FOB契約 DES契約
仕向け地条項 拘束条件付取引として問題 不可欠
変更制限 同上 必要性・合理性あるのに拒否は拘束条件付取引となる恐れ
競争制限的条件は拘束条件付取引となる恐れ

2017/7/7 公取委、LNGの取引実態調査

今回の契約更改で、米国以外のLNG長期購入契約で初めて仕向け地変更が可能になった模様。

なお、下記のとおり、JERAは米国のFreeport LNGとの間で長期契約を締結している。

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JERAのADNOC LNG以外のLNG長期契約は次の通り。

LNG能力 生産開始 権益比率 LNG購入契約
豪州 イクシスLNG 890万トン 2018年 0.735% 年間 154万トン
Wheatstone LNG 890万トン 2017年 下記 権益分 70万トン(20年間)
東京電力:他株主より 350万トン(20年間)
中部電力:他株主より 100万トン(20年間)
Darwin LNG 371万トン 2006年 6.13% 東京電力 200万トン(17年間)
(東京ガスは100万トン)
Gorgon LNG 1560万トン 2016年 0.417% 年間 144万トン (25年)
USA Freeport LNG 464万トンx3 (大阪ガス 10%) 中部電力 220万トン
(大阪ガスも220万トン)


Wheatstone LNG

ガス田鉱区 LNG
Chevron 80.17% 64.136%
PE Wheatstone
(右図)
10% 8%
KUFPEC
(Kuwait Petroleum)
8% 13.4%
九州電力 1.83% 1.464%
Woodside 13%
合計 100% 100%
九州電力は、権益分として13万トン、他株主より70万トンのLNGを購入。


Darwin LNG

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