日立の英原発計画がピンチ

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朝日新聞は8月17日、「日立の英原発建設、米大手が外れる方向 建設費の高騰で」と報じた。

北ウエールズのAnglesey島 Wylfa Newydd における原子力発電所の建設(Horizon Project)で、建設工事の中核から米建設大手 Bechtelが外れる方向になった。建設費の高騰で採算をとりづらくなっているためで、原発建設のノウハウに乏しい日立には痛手となるとしている。

付記

日立は2019年1月17日、Horizon Projectを凍結すると発表した。民間企業としての経済合理性の観点から、判断したとしている。
減損損失等 約3000億円を計上する予定。

2017年11月には、東芝が、英国における原子力発電所新規建設事業からの撤退を決定し、連結子会社のNewGeneration (NuGen)を解散すると発表している。

 2018/11/9 東芝、英原発事業を清算

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日立製作所は2012年10月30日、ドイツのエネルギー会社のE.ON 及び RWE から、英国で原子力発電所の建設を計画している原発事業会社Horizon Nuclear Power の全株式を買収する契約を締結した。

2012/11/1 日立製作所、英の原発会社買収

Horizon は、北ウエールズのAnglesey島のWylfa Newydd とSouth Gloucestershire のOldbury-on-Severn の2カ所で、5,400MW級以上の原発(1,300MW級をそれぞれ 2~3基)を建設する。

2016/7/9 日本原子力発電、日立の英国の原電事業に協力 

日立は、まずAnglesey島 Wylfa Newydd 原発2基の建設に向け、約2000億円を投じて工事の準備を進めてきた。

Horizon Nuclear Powerは2016年5月、日立ニュークリア・エナジー・ヨーロッパとBechtelと日揮の3社が設立したコンソーシアム「Menter Newydd」(ウェールズ語で「新しいベンチャー」を意味)をEPC契約締結までのエンジニアリング業務を遂行するサプライヤーに指名した。

日立製作所は2017年6月8日、投資家向けイベントで、英国で進めている原発の新設計画について、「リスクを最小化するベストな体制を敷いている」と説明した。

出資比率 パートナーを募り、連結子会社から外せない場合は計画を中止する。
出資パートナー候補との本格交渉はこれから。 
採用技術 稼働実績が豊富な日立GEニュークリア・エナジー のABWR技術

GE Hitachi Nuclear Energyが高経済性・単純化沸騰水型原子炉(ESBWR)の設計認証を申請中だが、実績を優先した。 

建設リスク 最強のパートナーが一体感を持って取り組む

Bechtelと日揮と組み、工事遅延などで損失が発生する場合は個社の過失を問わず、事前に決めた割合で全社が責任を負う 。

2017/6/12 日立の英国の原発事業の戦略 

英政府は2018年6月4日、北ウエールズのAnglesey島 Wylfa Newydd における原子力発電所の建設(Horizon Project)で日立製作所と基本合意に至ったと発表した。

これまでの交渉では、日立、日本政府・企業、英国政府・企業が3千億円ずつ出資、残り約2兆円を融資で賄まかなう案が検討されてきた。 融資には、日本から三菱UFJ銀行など3メガバンクと政府系の国際協力銀行が参加する予定で、従来は政府全額出資の日本貿易保険が融資を債務保証する計画だった。

2018年4月下旬に英国側は支援策の一環で、英政府が日英双方の銀行融資を全額債務保証する意向を日立側に示したという。日本政府が債務保証する場合に比べて日立の負担が直ちに減る。

2018/6/8  日立、英の原発計画で英政府と基本合意 

但し、日本側も英国側も出資の目途はたっていない。
また、完成した場合の電力の買い取り価格も決まっていない。これについては、英国政府は最近、
「RAB(Regulated Asset Base:規制資産基盤)」という新しいモデルを導入することにした。

2018/8/4 東芝の英国原発計画の現状 の文末

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Horizon Project は、福島第一原発の事故の後に世界的に強化された安全基準への対策費などがかさみ、総事業費は最大で3兆円程度になる見通しとされる。

関係者によると、ベクテルの建設費の見通しは日立より高く、工事の価格で折り合えなくなった。ベクテルは建設を直接担わず、コンサルティング(助言)事業として計画にかかわる方向になったという。

この結果、建設工事の中核で、建設リスクを分担する筈であったBechtel が、建設を直接担わず、助言のみの関与にとどまる方向になっている。

日立は海外の原発向けに発電用タービンなどの機器を納めた実績はあるが、原発を丸ごとつくる形の輸出は初めてで、工事の中核が消えることとなる。

現時点で中止すれば、最大で約2700億円の損失が生じる見通しで、他社からの出資の集まり具合などをもとに、着工の可否を決める。

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東芝は英国の原発事業の売却を交渉している。

参考 2018/8/4 東芝の英国原発計画の現状 

別途、三菱重工業とFramatome(旧社名Arevaとの折半出資の合弁会社ATMEAがトルコで新型原発 (Sinop原発:110万kW 4基)の開発を進めている。

2017/7/14 三菱重工業、フランスのアレバ原子炉事業に出資 後半部分参照

しかし、安全対策費を含む総事業費は当初計画の2倍を超える5兆円規模に達する見通しとなり、今後の交渉は難航することが予想される。

伊藤忠商事は 15%の出資を予定していたが、建設費高騰を受け、既に撤退を決めている。


政府は海外での原発計画をバックアップしているが、総倒れとなる可能性がある。

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