Saudi Aramco、SABICの株式購入と上場問題

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Saudi Aramco は7月19日、同社がSABICの経営権取得に興味を示しているとの報道に対し声明を発表した。

同社は事業ポートフォリオの最適化を進めるなか、石油化学を含め川下事業への進出を計画している。

これに伴い多くの買収や株式取得などの可能性を国内、海外で検討しおり、その一環としてサウジアラビアの政府系ファンドである Public Investment Fund (PIF)との間で、同ファンドが保有するSABIC株の取得について、きわめて初期段階の交渉を持っていることを認める。

交渉が初期段階にあるため、今後株式取得が具体化しない可能性もある。
またSABICの公開株を取得する考えはない。

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Saudi Aramco とSABICは共同で、サウジ国内での原油から化学品までの統合コンプレックス(COTC Complex ) 設立の検討を進めている。

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SABICの株の評価額は1040億ドルで、このうち70%をPIFが所有しており、残り30%はTadawul (Saudi Stock Exchange ) に上場されている。

ここにきて、Saudi AramcoがSABICの政府持分(70%)全てを買収するのではとの情報が流れている。

サウジ政府がSaudi Aramco に対し、国内及び海外での社債発行と銀行借り入れで資金を調達し、SABICのPIF所有分のほとんどor 全てを購入することを求めているという。
70%全てを購入すると、PIFは約700億ドルを入手することとなる。

Saudi Aramco は株式の5%を内外市場で公開し、1000億ドルの資金を調達する予定だが、遅れている。

このため、SABICの持ち株売却で700億ドルを入手し、つなぎとするのではと見られている。

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ムハンマド・ビン・サルマン皇太子はサウジ経済の改革も担当している。

サウジアラビアの公的投資基金 (PIF) は1971年の設立以来、サウジ財務省が管轄し 、石油精製、肥料、石油化学、電力などの大事なプロジェクトのファイナンスを担ってきたが、2015年3月からは、新皇太子が率いるCouncil of Economic and Development Affairs (CEDA) へ移管され、皇太子はPIF のチェアマンを務める。

2016年3月に、Saudi Aramcoの所有権が政府から PIFに移管された。SABICの70%もPIFが所有する。

CEDA は、2030年までの経済改革計画「ビジョン2030」を作成、サウジ政府は2016年4月25日、国王主宰の閣議でこれを承認した。

石油依存型経済から脱却し、投資収益に基づく国家を建設していく。

公的投資基金(PIF)の資産を6,000億リヤールから7兆リヤール(約 2兆ドル)に増やす。

目標を達成するための手段として、
・ 国営石油会社Saudi Aramcoの5%未満の新規株式公開(IPO)、
・ 民営化による透明性の向上と汚職抑制、
・ 軍事産業の育成による国内調達の軍装備品支出の割合を50%まで拡大、
・ 外国人による長期的な労働・滞在を可能するグリーンカード制度の5年以内の導入
などがあわせて発表された。

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サウジアラビア政府は2018年1月1日付で、国営石油企業 Saudi Aramcoの企業形態を、年内の部分上場に備え、株式売買が可能な Joint Stock Companyに変更させた。
これにより、サウジ政府以外の投資家がAramco の株主になることができる。

世界最大の石油企業である同社は2018年下半期に株式の5%を内外市場で公開する予定 であった。
同社の時価総額は2兆米ドルに達する可能性があり、5%の売却で1000億ドルの資金を調達出来る可能性がある。

2018/1/11 Saudi Aramco、上場に備え企業形態を変更 

しかし、サウジアラビアはSaudiAramco の新規株式公開(IPO)を巡る積極姿勢を後退させている。

海外市場での上場で、訴訟を巡るリスクがあることや、Aramco の確認埋蔵量などのデータを公表する必要が出ることが障害となっている。

当面、海外での上場をやめ、サウジ証券取引所(Tadawul)のみで上場する方向で進んでいる。年内とされていたが、2019年4月になると報道されている。

2018/5/4 SaudiAramcoの上場問題 


上場による資金調達の遅れが
「ビジョン2030」の遂行の支障となることを懸念し、SABICの売却を考えたのではないかとされる。

PIF子会社のSaudi Arabia が借入(社債発行と銀行借り入れ)で同じPIF子会社のSABICの株式を購入するため、実質的にはPIFが借り入れをするのと同じことではある。

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