日米、物品貿易協定交渉へ、交渉中は自動車追加関税回避

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9月26日夕(日本時間27日朝)、日米首脳会談がニューヨークで行われ、安倍首相とトランプ大統領が「日米物品貿易協定(TAG:Trade Agreement on Goods )」の交渉入りで合意した。

付記

トランプ米政権は10月16日、日本との貿易協定に関する交渉を始めると議会に通知した。米貿易関連法では交渉開始の90日前までに議会に通知する決まりで、早ければ2019年1月にも協議が始まる見通し。

TAGは投資・サービス分野などを含む自由貿易協定(FTA)とは異なりモノの関税に絞る。関税撤廃・削減を目指しており、対象は農産品や工業製品などほぼ全ての貿易品目に及ぶ。税関手続きの円滑化などの交渉も含む。
日米はTAG交渉の見通しが立った後、サービスや投資分野でも2国間交渉を始める。

首脳会談に同席した茂木経済再生相は、実際の交渉入りの時期について、米国議会手続きなどがあるため「少し時間がかかる」としたが、「日米が関税について自由で公正な新たな枠組みを構築することは、国際経済全体に良い影響を与える」と述べた。

TAGでは、日本の農産品についてTPP水準を超えた自由化をしないと米国側に念押しした。

また、交渉中は米政権が検討する輸入自動車への高関税措置を発動しないことを、会談で首相が直接、トランプ大統領に確認した。

外務省は下記の通り発表した。

両首脳は,日米両国の経済的な結びつきをより強固なものとすることが,日米の貿易を安定的に拡大させるとともに,自由で開かれた国際経済の発展につながるとの考えの下,「日米物品貿易協定(TAG)」について交渉を開始することに合意し,共同声明を発出した。

また,日米双方の利益となるように,日米間の貿易・投資を更に拡大させ,公正なルールに基づく自由で開かれたインド太平洋地域の経済発展を実現していくことで一致した。

共同声明の概要は次の通り。

両国経済が合わせて世界のGDPの約3割を占めることを認識しつつ,日米間の強力かつ安定的で互恵的な貿易・経済関係の重要性を確認した。

大統領は,相互的な貿易の重要性,また,日本や他の国々との貿易赤字を削減することの重要性を強調した。総理大臣は,自由で公正なルールに基づく貿易の重要性を強調した。


日米両国は,所要の国内調整を経た後に,日米物品貿易協定(TAG)について,また,他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについても,交渉を開始する。
また,上記の協定の議論の完了の後に,他の貿易・投資の事項についても交渉を行うこととする。

上記協定は,双方の利益となることを目指すものであり,交渉を行うに当たっては,日米両国は以下の他方の政府の立場を尊重する。

-日本としては農林水産品について,過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であること。

-米国としては自動車について,市場アクセスの交渉結果が米国の自動車産業の製造及び雇用の増加を目指すものであること。


日米両国は,第三国の非市場志向型の政策や慣行から日米両国の企業と労働者をより良く守るための協力を強化する。
したがって我々は,WTO改革,電子商取引の議論を促進するとともに,知的財産の収奪,強制的技術移転,貿易歪曲的な産業補助金,国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処するため,日米,また日米欧三極の協力を通じて,緊密に作業していく。


日米両国は上記について信頼関係に基づき議論を行うこととし,その協議が行われている間,本共同声明の精神に反する行動を取らない。また,他の関税関連問題の早期解決に努める。

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関税の交渉を行うことで、 交渉期間中は自動車追加関税を回避するというのは、EUのやり方を真似たものである。

米国とEUは、関税引き下げに向け交渉することで合意した直ちにExecutive Working Group を設置する。加えて、短期的な対策を検討する。

この間は、どちらかが交渉を取り止めない限り、この合意の精神に反する行動を行わないこととした。

EUは特に、米国が中国の報復関税での輸出減少で苦悩する大豆とLNGの輸入拡大を謳い、米国から本案について了承を得た。

2018/7/27 米国とEU、関税撤廃交渉へ

今回、日本が日米TAG交渉入りで米国の了承を得たのは、とりあえずは成功である。

特に、農産品分野ではTPP水準を超えた自由化をしないという条件を呑ませたのは大成功である。

元々、米国はTPPよりも有利な条件を勝ち取るため、二国間のFTAを望んていたものであり、日本もそれを恐れてこれを回避しようとしてきた。
TPP水準を超えないということは、米国の参加を前提に決めた水準に止まるということである。

米国としては、とりあえずはTPPに参加して関税引き下げの恩恵を受ける豪州と同じ扱いとなることで、農民の不満を抑えられることとなる。

しかし、問題は自動車である。米国の対日貿易赤字の大部分が自動車である。

米国側は、市場アクセスの交渉結果が米国の自動車産業の製造及び雇用の増加を目指すものであることとしている。

日本の輸入関税は元々ゼロであり、自動車税などの「非関税障壁」を手直ししても、米国製自動車の輸入が増えるとは考えられない。

日本の自動車業界は既に米国に進出し、製造と雇用の増加に貢献しているが、それは企業の活動であり、米国の対日貿易赤字とは関係がない。

日本の輸入が増えないなら、輸出を減らせ(数量制限)ということになりかねない。

しかも、これまでのように、長々と交渉を続けるわけにもいかないだろう。

大統領は3月22日に日本に関してツイッターで次のように述べた。「こんな長期間、米国をだませたとは信じられない」と喜んでいるようだが、もうこれまでだと。

I'll talk to Prime Minister Abe of Japan and others --- great guy, friend of mine --- and there will be a little smile on their face.
And the smile is, "I can't believe we've been able to take advantage of the United States for so long" So those days are over.

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