Macroeconomic and Foreign Exchange Policies of Major Trading Partners of the United States
日本と中国のほか、韓国、ドイツ、スイス、インドの6カ国を引き続き「監視リスト」に指定した。
貿易戦争を繰り広げる中国については、経済制裁に道を開く「為替操作国」と指定するのは見送ったが、報告書は「6カ月かけて再審査する」と同国へのけん制を強めている。
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2016年2月24日、2015年貿易円滑化・貿易履行強制法が成立した。これはアンチダンピング法、相殺関税法および貿易救済法などを強化したものだが、上院の審議で為替操作国に対する措置が盛り込まれた。
対象は、重大な対米貿易黒字と実質的な経常黒字を有し、外為市場に対する長期かつ一方的な介入を行った米国の主要貿易相手国で、米財務省は次の基準で選ぶこととした。
重大な対米貿易黒字 対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上 実質的な経常黒字 経常黒字がその国のGDPの3.0%以上 外為市場に対する介入 GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入
財務省は2016年4月の報告で、3つの基準全てに当て嵌まる国はないことを確認したが、米国の主要貿易国の5カ国が3つの基準のうち2つに該当することを見つけた。
このため、新しい「監視リスト」を創設し、この5国を監視していくこととしたもの。
2016/5/2 米、日本や中国などを為替操作「監視リスト」に
その後の「監視リスト」の対象は次の通り。
日本 中国 韓国 台湾 ドイツ スイス インド 2016/4 〇 〇 〇 〇 〇 ー ー 2016/10 〇 〇 〇 〇 〇 〇 ー 2017/4 〇 〇 〇 〇 〇 〇 ー 2017/10 〇 〇 〇 ー 〇 〇 ー 2018/4 〇 〇 〇 ー 〇 〇 〇 2018/10 〇 〇 〇 ー 〇 〇 〇
日本は(1)と(2)で条件に抵触した。中国は、2016/10以降は(1)の1つしか基準を超えていないが、対米貿易黒字が膨大なため、次回の報告書でも自動的に指定される。今回も同様である。
台湾は2017/4 に1つしか基準を超えなかったが、外為市場介入で対象外となったのが一時的かどうかをチェックするため、監視国に残った。2017/10からは外れた。インドは、2017年第1・四半期から第3・四半期にかけて外貨購入を拡大した。通年では過去最大の560億ドルと、同国のGDPの2.2%の水準に達した。対米貿易黒字も230億ドルであった。
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今回の分析結果(2018年6月までの4四半期):
日本:モノの対米黒字700億ドルと経常黒字がGDPの4%で基準を超えた。
外為市場介入は過去7年間無しとなっている。
財務省は、着実な成長を利用し、構造改革を行うべし、とコメントしている。
中国:モノの対米黒字3900億ドルのみが基準を超えた。対米輸出は5250億ドル、輸入は1350億ドル。
なお、サービスは米国の400億ドルの黒字。
経常収支は下図の通りで、サービスの輸入(海外旅行支出を含む)が大きく、モノの黒字を帳消しにしている。
付記 サービス収支の赤字の原因は旅行である。
外為市場への政府介入はない(±ゼロ)としているが、最近の人民元下落が大きく、注目している。為替介入をしないという中国政府ののG20での約束を重視 するとしている。
Treasury continues to place considerable importance on China adhering to its G -20 commitments to refrain from engaging in competitive devaluation and to not target China's exchange rate for competitive purposes.
Treasury also strongly urges China to provide greater transparency of its exchange rate and reserve management operations and goals.
今回も、1つしか基準を超えていないが、対米貿易黒字が膨大なため、次回の報告書でも自動的に指定される。
韓国:モノの対米黒字210億ドル(前年の280億ドルからは減少)と経常黒字がGDPの4.2%で基準を超えた。
若干(GDP比 0.3%)の為替介入があったとみる。韓国政府が2019年から為替介入について開示すると発表したのを好感。
ドイツ:モノの対米黒字670億ドルと経常黒字がGDPの8.2%で基準を超えた。
EUメンバーのため、ドイツとしての為替介入問題はない。
スイス:経常黒字がGDPの10.2%で基準を超えた。為替介入は大きく、GDPの2.4%となっている。
インド:モノの対米黒字230億ドルで基準を超えた。
インドの場合はサービスでも対米で40億ドルの黒字となっている。医薬とIT関係が中心。
インドは、2017年第1・四半期から第3・四半期にかけて外貨購入を拡大した。通年では過去最大の560億ドルと、同国のGDPの2.2%の水準に達した。
しかし、今回は介入はGDPの0.2%に止まり、「GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入 」という条件から外れる。今回は、1項目だけの基準超えのため、次回も同様なら、リストから外れる。
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