米Alphabet Inc. 傘下のGoogle は10月16日、欧州域内で売るスマートフォンについて、端末メーカーに無料提供していたメールや地図ソフトを有料化すると発表した。
欧州連合(EU)が7月に科した競争法(独占禁止法)違反による制裁に対応するため。
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Googleはスマホ用のAndroid 基本ソフト(OS)を無料で提供している。その上で動くアプリも無料としている。
Android 基本ソフトのなかで欠かせないのが Google Play Storeで、Android搭載スマートフォン/タブレットで利用できるアプリ、映像、音楽、電子書籍などが配信されている。
Googleはこれに目を付け、Google Play Storeのライセンス条件として、Chromeブラウザ(Google Chrome browser) と Google検索アプリ (Google Search) のプリインストールをメーカーに要求している。
これまで、これらのソフトを無料で提供してきたのは、検索などのサービス経由で集めたデータによる広告で収入を確保できるからである。
しかし、欧州委員会はこれを問題とした。
Android は世界のスマホで88%のシェアを持っており、EUはGoogleがそのシェアを生かして検索などのアプリを「拡散」し競争をゆがめていると批判していた。
EUの欧州委員会は7月18日、Google に下記を問題として、43億4000万ユーロ(約5700億円)の制裁金を払うよう命じた。3カ月以内に同行為を改めなければ、さらに高額罰金を科すとした。
1) Googleのアプリストア (Google Play Store)のライセンス条件として、Chromeブラウザ(Google Chrome browser) と Google検索アプリ (Google Search) のプリインストールをメーカーに要求。
欧州委員会の調査では、ユーザーはPlay Storeが入っているのが必須としている。
Googleは、Play Storeのラインセンスで、Google Chrome browser と Google Search をプリインストールすることを条件とした。
2) Google検索アプリ(Google Search)のみをデバイスにプリインストールする一部の大手メーカーやモバイルネットワークオペレータにインセンティブ支払い。
3) Googleのアプリのプリインストールを希望するメーカーが、Google版ではないAndroidフォーク (Androidのベース部分だけを使用、独自のアプリを採用するもの)を販売するのを妨げた。
2018/7/27 欧州委員会、Googleに罰金5700億円
GoogleはEUの指示を不服として10月9日に提訴したが、対抗策を取った。
EUの指示通り、インストールを強制しない代わりに、Google Search があったためにこれまで無償にしていた他のサービスの利用を有料化するというものである。
EUが問題としたGoogle Chrome browser と Google Search をプリインストールすることを条件としない。
ブラウザーをGoogle Chrome の代わりにFirefoxにしたり、検索エンジンをGoogle Searchの代わりにMicrosoftのBing(元のMSN Search)などを使っても良い。
但し、Andoroid(OS)は無料のままであるが、Play Storeのほか、Gmail、Google Map、Youtube などを有料化する。
Andoroid が入ったスマホを販売するメーカーはGoogle に一定の対価を払わないとこれらアプリをスマホに標準搭載できなくなる。具体的なライセンス料は明らかにしていない。
10月26日以降に発売される端末について、裁定の結果が出るまでは今回の措置を続ける。
対象国はEU28カ国のほかアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーのEEA諸国となっている。EU圏以外での変更はない。
Googleでは、「Google検索とChromeを当社の他のアプリとともにプリインストールすることは、当社によるAndroidの開発と無償配布を資金面で支えていた 」とし、今回の有償化は欧州委の命令に従うための決定であることを強調した。
今回の措置はGoogle にとってはAndoroid 採用のスマホに自社の検索・閲覧ソフトが使われない可能性があり、他社にシェアを奪われ、広告収入が減る恐れがある。
ただ、検索ソフトは性能で Google が圧倒的な優位にあり、メーカーが他のソフトに切り替えるかどうか不明である。
Play Storeの入らないスマホをは考え難く、Gmail、Google Map、Youtube なども有料化されても入れないわけにはいかないと見られている。その場合、ライセンス料が端末価格に反映され消費者の負担が増す可能性が強い。
Googleの発表を受け、欧州委員会は次の通り述べた。
Googleに対しPlay Storeや他のソフトを有料にせよと求めていない。欧州委のルーリングに対応してどのように政策を変更するかは同社の責任である。対応策が有効なもので、欧州委の決定を尊重したものであるかどうかを注意深く見ていく。要は、他のブラウザーや検索エンジンがAndroid採用のスマホでGoogleと競ってやっていけるかどうかだ。
しかし、実際に欧州委員会の狙い通りになるかどうか、疑問である。Googleの対応策は欧州委員会にアピールするものである。
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