この建材子会社はビル外壁材などを手掛けるPermasteelisa S.p.A で、売上高の約4割を米国が占める。
付記 LIXILは11月27日、売却契約を解除したと発表した。
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LIXILは2011年にイタリアのPermasteelisa S.p.A を約608億円で買収した。同社は世界27ヵ国で事業展開する世界最大級のカーテンウォール事業会社で、買収目的はアジアを超えた「グローバルなオペレーションの入手」としていた。
Permasteelisa は、カーテンウォールやインテリアなど建築物の内外装分野で業界を牽引 しており、世界の主要な建築プロジェクトのエンジニアリング、プロジェクト管理、製造、施工に携わっている。
著名な建築家と連携し、ロンドン・ブリッジ駅の南西側に所在する超高層ビルThe Shard、カリフォルニア州 のAppleの新本社社屋、シドニーのオペラハウス、香港の世界貿易センターなども手掛けてきた。
LIXILは2017年8月、Permasteelisa S.p.A.の全株式を中国を拠点とした建築設計・建築装飾事業を行うGrandland Holdings Group Limited(廣田控股集團)に譲渡する ことを決めた。基本譲渡価額は、4億6700万ユーロ(597億7600万円)。
LIXILグループは、経営の効率化や財務体質の強化のため、全領域で事業ポートフォリオの最適化を図っている 。今回の株式譲渡は、事業構造の簡素化と組織の統合、シナジー創出と効率化を目指す同社の取り組みに合致するものという。
売却先のGrandlandは、カーテンウォール、都市開発、メカトロニクスなどを手掛けている。
瀬戸欣哉社長兼CEOは、「当社では、カーテンウォール事業や商業施設向けインテリア事業についてPermasteelisaから多くを学んだので、今後の事業運営に生かしていきたい。また、Grandland およびPermasteelisaの事業は当社との親和性が高く、将来的な連携も検討していく」などとコメントしていた。
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LIXILは今回、対米外国投資委員会(CFIUS)から、今回の売却について、現行の売り手・買い手の対応方法では承認できない旨の通知を受領したとし、今後の方向性について検討を進めていると述べた。トランプ米大統領は本年3月12日、シンガポールに本社を置く通信用半導体大手Broadcom Limitedによる米Qualcomm Incorporatedの買収を禁じる命令を出した。外国企業による米国企業への投資を審査する対米外国投資委員会(CFIUS:Committee on Foreign Investment in the United States)の勧告に基づく。
米大統領がCFIUSの異議に基づいて買収を阻止したのは5件目。トランプ氏としては就任以来2件目となる。
2018/3/14 米大統領、BroadcomによるQualcomm買収禁止命令
これまでのCFIUSの審査対象は、安全保障に係るものと大統領が判断した買収に限られた。
外国企業の対米投資を審査する米国の独立機関、対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を強化する条項を加えたJohn McCain 国防権限法(NDAA)案が8月13日成立した。
CFIUSの審査対象を、米国企業の買収を狙いとする取引に限らず、合弁会社設立や、米国の重要な技術やインフラ、個人情報に関わる少額の出資なども審査の対象とする。米政府施設に近い土地取得など不動産取引も含める。
米財務省は10月10日、8月に成立した新法に基づく外資による対米投資の規制の詳細を発表した。11月10日から実施する。ハイテク分野での覇権を狙う中国から先端技術を保護するのが狙い。
半導体や情報通信、軍事など27産業を規制対象に指定し、少額出資でも当局に事前申告を義務づける。
規制対象となる分野も航空エンジン・部品、アルミニウム精錬、石油化学などと細かく指定した。ナノテクノロジー(超微細技術)の研究開発や光学レンズ製造も対象になっている。 幅広い無機化学品も含まれている。
2018/10/12 米政権、ハイテク27産業で外国投資の規制強化
今回のPermasteelisa の事業は、カーテンウォールやインテリアなど建築物の内外装分野である。
CFIUSの本来の対象であった安全保障に関係するとは思えない。
また、8月に成立した新法に基づく財務省の規制対象の分野にもこれは含まれていない。
推測だが、Permasteelisa はAppleの新本社社屋など、重要な建物の内装を引き受けている。中国のGrandland が親会社となることで、Permasteelisa が施工する建物に、例えば盗聴設備などが密かに設置され、重要情報が漏れるのを恐れたのかも知れない。
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