名指しで批判された中国は「不当な非難は受け入れられない」(王毅外相)と反発している。
トランプ大統領は中国による介入の具体的な証拠は示さなかったが、その後、記者団に「中国が(米中西部の)農業地帯を標的にしている」と語り、アイオワ州の新聞 Des Moines Register に中国が出した「記事型広告」の写真を自身のツイッターに掲載した。
China is actually placing propaganda ads in the Des Moines Register and other papers, made to look like news. That's because we are beating them on Trade, opening markets, and the farmers will make a fortune when this is over!
アイオワ州新聞大手のDes Moines Registerは9月23日、4ページにおよぶ記事を掲載した。「中国国営のChina Dailyが執筆、広告費用を負担した 。本紙は内容に関与しない。」との但書を付けている。
内容は、最近のChina Dailyの記事の転載である。
1.メイン記事 「米中対決は貿易のメリットを破壊させる」という題で、副題は「貿易紛争は中国の輸入業者を南米に向かわせる」となっている。
これはChina Daily 2018/8/23 の記事 US tariffs threaten economic interdependence の転載で、副題は Trade row forces Chinese importers to look to South America である。
米国の大豆7万トンを積んだ貨物船が7月6日に大連港に到着した。しかしタッチの差で、高関税が課せられたという話で始まる。以下概要。
トランプ大統領が中国品に追加関税を課したため、中国も米国品に追加関税を課したもの。
中国は世界最大の大豆輸入国で、米国の輸出大豆の60%を輸入している。ブラジルに次ぐ。中国は昨年127億ドルの大豆を米国から輸入した。米中貿易紛争で、中国の輸入業者はブラジル、アルゼンチン、ウルガイなどの南米に向かわざるを得ない。
農業貿易では中国と米国は極めて補完的だが、トランプ大統領の貿易戦争の結果、中国は他のパートナーを探さざるを得ず、そうなれば、米国の農家は中国での市場シェアを取り戻すのは難しくなる。
米中の補完関係は農業だけではない。Boeingは昨年、次の20年間で中国の航空会社が1.1兆ドル相当の7240機のコマーシャルジェットを購入すると予想した。今回中国は大型ジェットには追加関税を課さなかったが、事態が悪化すれば、そうはいかないだろう。
これまで長年、米中は対話を続けてきた。しかしトランプはこれをぶち壊した。中国や他国に、時代遅れの301条を使ったり、national securityを口実にして、追加関税の脅しをかけている。
対中貿易赤字はミスリーディングで、iPhoneを例にとると、米国は中国からの輸入を1台300ドル以上と計算するが、部品を世界中から受入れ、中国は労務費10ドルを稼ぐだけである。
iPhoneだけで昨年の対中貿易赤字の4.4%、157億ドルと計算されている。トランプは中国のせいで米国の雇用が失われたとするが、多くの経済学者は、米国の失業の原因は、中国やメキシコのせいではなく、オートメーションであるとしている。
オバマ政権とは相互投資協定を締結し、現在、約15万の雇用が中国の投資で支えられている。トランプ政権になって、相互投資の対話は中断した。
Yale Universityの Roach 教授は、中国の産業政策を米国が攻撃しているのについて、どの国でもやっていることだとして否定した。また、中国が外国企業が中国にJVを設立する際に知財の移転を強いているとの考えを否定している。
2.この記事の左の記事
2018/5/4 の記事 New book tells story of Xi's 'fun' days in Iowaの転載である。
アイオワ州のSarah Landeが書いた本 " Old Friends: The Xi Jinping - Iowa Story" を紹介し、彼女と周近平夫妻との永年の交流を描いている。
アイオワ州は1983年に河北省と姉妹州(省)となった。彼女は姉妹州組織の常務理事を務め、習近平の1985年の来訪時にアレンジをし、2012年の再訪時にも会い、直後に訪中して会っている。
他の紙面の記事の内容は不明だが、他に「中国は世界の良いお手本」を題とする記事や中国のカンフーなどの内容とされる。
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Des Moines Registerの記事については、外国政府が貿易振興のため米国の新聞の広告スペースを購入することは広く行われており、国家情報機関が行う秘密の作戦とは異なる との報道もあるが、中国当局がアイオワ州の有権者を対象に広告を掲載したのは、11月の中間選挙が背景にあることが原因だとする報道もある。
トランプ大統領のやり方を猛烈に批判し、このままでは中国は南米から農産物を買うことになるとしている。
アイオワ州は農業が盛んで、大豆生産量は全米1位を誇っている。
また、アイオワ州は、米国のなかでも共和党と民主党が互角の戦いを展開する「スイング・ステート」として知られている。選挙のたびに勝利政党が変わるため、その動きが常に注目されている。11月の中間選挙でも再び激しい攻防戦が予想される。
中間選挙を控えたこの時期に、このような記事を掲載したのは、選挙介入と見られる可能性はある。
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米国では2016年の大統領選挙をめぐり、ロシアがトランプ氏のため選挙戦に干渉したとの疑惑が持ち上がった。また、投票システムへのサイバー攻撃が試みられたほか、メディアやインターネット上で偽情報が拡散された 。
今回の大統領令はどちらの行為についても、実行者に金融制裁を科すための正式な手続きを設ける。
大統領令を発表したDan Coats国家情報長官は、11月6日の議会選挙が迫るなか、介入が「ロシアだけでなく、中国からも行われている兆候がある。またイラン、さらには北朝鮮にも潜在的な実行能力がある」と述べた。
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