原子力規制委員長の 汚染処理水「再浄化必要ない」発言

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福島第一原発の放射性物質トリチウムを含んだ低濃度汚染水は、事故後は構内にため続けており、今年2月時点で約105万トンあるタンク貯蔵水のうち約85万トンを占めている。
タンクの容量は現状で約110万トンで、東電は2020年までに137万トンまで増設を計画しているが、それ以降については未定である。

ここにきて、第一原発の汚染水を処理した後の水にトリチウム以外の複数の放射性物質が残留していることが報道された。

8月19日に共同通信が取り残しを報じた後、8月23日には河北新報が、2017年度のデータを検証したところヨウ素129が法律で定められた放出のための濃度限度(告示濃度限度)を60回、超えていたと報じた。

経済産業省は8月30日と31日に放射性物質トリチウムを含んだ低濃度汚染水の処分方法をめぐり、公聴会を開いたが、海洋放出への反対が続出した。

東京電力は9月28日、福島第1原発の汚染水を浄化した後にタンクで保管している水の約8割に当たる75万トンで、トリチウム以外の放射性物質の濃度が排水の法令基準値を超過しているとの調査結果を明らかにした。

今後、海洋放出など処分をする場合には、多核種除去設備(ALPS)などで再浄化するとしている。

2018/8/29 福島原発のトリチウムを含む低濃度汚染水を巡る問題

これについて、原子力規制委員会の更田豊志委員長から仰天の発言が飛び出した。

更田委員長は10月5日、福島第1原発を現地視察し、報道陣の取材に応じた。汚染水浄化後の処理水にもトリチウムなど複数の放射性物質が海洋放出の法令基準値を上回って残留している問題に関し、 東電が実施する意向を示している放出前の再浄化は必ずしも必要ではないとの認識を示した。

「科学的な意味では、再浄化と(より多くの水と混ぜることで)希釈率を上げることに大きな意味の違いはない」と 述べ、「再浄化は絶対に必要だと規制当局として要求する認識ではない」と述べ、再浄化しなくても希釈により基準値を下回れば、海洋放出を容認する考えを示した。

これは間違っている。

先ず、科学的な意味では、再浄化は放射性物質の総量を減らすものであり、希釈率を上げることは濃度を下げるもので、大きな違いがある。子供でも分かることだ。

海洋放出の法令基準値は、それ以下なら問題ないという数値ではない。放出そのものは問題だが、可能な限り処理をしても、どうしても処理できないものなら、そこまで薄めていれば、止むを得ず認めるというものである筈だ。

一つ一つの石炭火力発電所などのCO2排出が積もり積もって温暖化に至っている。 薄めたとしても、どんどん放出していけば、海洋にも今後影響が出ないとは思えない。

処理したといっていたトリチウムなどが実は残っていた。放出を始めた場合、本当に基準値以下まで薄めたか、信用できない。

また、科学大国の日本の原子力規制委員長が認め、放出しているとして、今後、他国が処理せずに放出を始めたら大変なこととなる。

東電の場合、ALPSなどで処理すれば、時間はかかるが、処理できるし、東電も再浄化するとしている。それを規制委員会の委員長が、再浄化せずに薄めて流せばよいというのは一体どういうことだろうか。

しかもその法令基準値については、「科学的」であるとは言えないとの意見もある。

この法令に定められた、告示濃度限度は、国際放射線防護委員会(ICRP)の放射線防護モデルに基づいているが、この放射線防護モデルは、原発の運転がしやすいように、ある限度は撤廃され、ストロンチウム90などの線量評価は緩められてきた歴史的経過がある。この緩すぎる限度で、原発事故放射能汚染水を海に放出してよいわけがない。放射能汚染水の放射能は、総量で規制すべきである。

公害対策では総量規制が常識である。

硫黄酸化物の規制は濃度規制に始まり、逐次改訂強化がなされたが、特に工場密集地域を中心に環境基準に照らすとなお深刻な状況にあった。このため、四日市市を抱える三重県で1972年に総量規制を盛り込んだ条例が設けられ、これを追って1974年、大気汚染防止法の改正により総量規制が導入された。

汚水処理では中西準子氏の浮間下水処理場調査が有名である。
当時の活性汚泥処理ではシアンや重金属は処理できないが、「濃度が下がっている」と宣伝されていた。中西氏が調べると、それぞれの工場から異なるモノを含んだ排水が流し込むと、見かけ上、それぞれのモノの濃度が下がるだけだと分かった。1971年に研究結果が発表され、1973年に廃止された。

これらは昔むかしの話である。

今頃、濃度規制が正しいので、処理などせずに、薄めてどんどん流せばよいなどと発言する人が原子力規制委員会の委員長でよいのであろうか。

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