日本の対中経常収支

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10月21日付の毎日新聞の「時代の風」で藻谷浩介氏(日本総合研究所)が 「誤った『選択と集中』 妄信ただす現実の確認」 というタイトルで書いている。

日本の停滞は「官民の組織はとにかく決定が遅く、実行に移らない」ため、「イノベーションが進まず、経済が成長せず、国際競争に立ち遅れるばかり」というのが一般的だが、むしろ全力で間違った方向に「選択と集中」を行い、それで行き詰る大組織も日本には多数ある、とする。

東芝は技術革新の余地の乏しい原子力に投資を続け、医療機器や特殊用半導体などのイノベーティブな部門を売却する羽目に陥った。
北海道電力や関電も、原発にこだわるあまり、LNG火力の整備が遅れた。(それに対し、中部電力は上越LNG火力を稼働させ、太平洋岸、日本海側どちらかを天災が襲ってもバックアップできる体制)

憲法9条改正が今の優先課題か?

少子化と段階世代退職に伴う人手不足を好景気とはやす。少子化を理由に小中高校の統廃合、地方国立大学を低予算で締め上げ、都会に比べ出生率の高い地方圏の子育てコストを増やすのは方向が正反対。

地震の巣に正対した辺野古の太平洋海上に軍事用滑走路を造成するというのは、意思決定のずさんさが目に余る「選択と集中」である。

ポイントは、決定し実行する、しないではなく、その前の事実認識の段階こそが重要だ。間違いを信じ込んだまま、何もしないか、間違った方向に突っ走っている。

事実誤認の例として、「グローバルイノベーション&バリューサミット」なる行事(聴衆の過半は在日外国人)の最終セッションで登壇し、聴衆に質問した。

「日本の経常収支は、2017年に中国(香港含む)に対して、5兆円の黒字、赤字、どっちか?」と聞いたら、ほぼ全員が「赤字」と回答したが、正解は5兆3000億円の史上最高の黒字である。

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財務省の貿易統計の主文には主要地域・国との統計が載っている。

中国(香港を含まず)は下記の通りで、赤字である。この印象が強い。

しかし、地域別・国際収支データを見ると下記の通りとなっており、藻谷氏の指摘通りである。

対中経常収支は順次赤字が減り、2017歴年で黒字化、香港を含めると2016年の3兆円の黒字が2017年は5兆円超えの黒字
対中貿易赤字は減少しつつあり、香港を含めると2017歴年に黒字化、サービス収支は対中で大幅黒字。
対中第一次所得も大幅黒字
 
中国全体でサービス収支は大幅赤字となっているが、下図のとおり、大半は旅行である。

日本の対中サービス黒字の理由は訪日中国人の「インバウンド需要」である。

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