「サムスン半導体白血病紛争」11年ぶりに終結へ

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「半導体事業場での白血病など疾患発病と関連した問題解決のための調停委員会」は11月1日、サムスン電子と市民団体「パンオリム」(半導体労働者の健康と人権守り)に仲裁内容が盛り込まれた2次調停案(仲裁判定書)を送ったと明らかにした。本年7月に両者が「内容と関係なく受け入れる」と約束していた。

11月10日までに補償業務委託機関などについて合意をし、11月30日までに調停案の内容を実行しなければならない。

サムスン電子は、「長年続いた白血病論争を決着させるために努力してきた調停委に感謝を表する。仲裁案を無条件で受け入れることにした以上、迅速に履行していく」と述べた。

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サムスン電子京畿道龍仁市の器興 工場の半導体製造ラインでは、半導体の洗浄にベンゼンを使用していた。

サムソン電子は、有機溶剤に人体に有害な化学物質が含まれている事実を工員はおろか弁護士にさえ、企業機密だとして明らかにしなかった。その結果、複数の労働者が急性骨髄性白血病やリンパ腫といった稀病を発症した。

被害者5人が2007年から二度にわたり、勤労福祉公団に労災を申請するも、全員が不承認の通知を受けたため、2009年、労災認定を求めてサムソン電子を提訴した。2011年に一部について労災が認められた。

2007年3月に白血病問題が提起されてから 6年余りの間、白血病だけでなく脳腫瘍・乳癌・子宮頸部癌・皮膚癌・生殖毒性を訴える三星労働者160人余りの情報提供が「パンオルリム」に相次いで寄せられた。

パンオルリムの集計によれば60人余りが治療も補償もまともに受けられずに亡くなった。

その間、サムスン電子は半導体工場と白血病は関係がないと主張して遺族などと対立した。

ソウル行政裁判所は2013年、工場勤務と白血病の因果関係を認める判決を下した。判決では、サムスン電子に勤務し、白血病で死亡した従業員2人について、工場で持続的に有害化学物質や放射線を浴びたとし、そのために「(白血病が)発症したり進行したと推定できる」と認定。「白血病と業務に因果関係があるとみるのが相当」として、労災と認めず遺族給付金を支給しなかった勤労福祉公団の決定を取り消すよう命じた。


2014年2月、1本の映画 「もうひとつの約束」
が韓国で話題を集めた。

サムスン電子半導体工場で働くうち、白血病を患って2007年に22歳で他界したファン・ユンミの父親、ファン・サンギの裁判闘争を元に、キム・テユン監督が取材し、脚本化した。

どの製作会社からも歓迎されず、韓国映画史上初のクラウドファンディング方式 で資金を集めた。ファンディングに参加した個人の数は1万人にのぼり、中にはサスソンの社員、サムスンの半導体研究者もいた。


江原道・束草のタクシー運転手、ファン・サンギは妻と2人の子供と、平凡ながら幸せな家庭を築いていた。娘のユンミが韓国随一の企業、ジンソン電子(サムスン電子)の半導体工場に就職したことに、家族も誇らしげだ。ところがほどなく、ユンミの体に異変が現れる。ジンソンの社員が見舞金を手に一家を訪れ、辞職願と労災申請放棄の覚書にサインを迫る中、ユンミは22歳の生涯を閉じる。病名は急性骨髄性白血病。

タクシー運転手をしていた父親は、娘の白血病が、死の原因が、 ジンソン電子(サムスン電子)にあると認めさせるため、誰もが恐れて口をつぐむ巨大企業を相手に一人立ち上がる。

ジンソンの執拗な妨害工作に離脱者が相次ぐ中、サンギは言う。「絶対にあきらめない。父親だから」----そして裁判は結審を迎える。



サムスン電子は、2015年9月に1000億ウォン規模の基金を用意して独自に補償を進めた。
現在までに130人余りに220億ウォンの補償が行われた。

今回、調停委員会は、被害補償範囲、規模だけでなく、サムスン電子代表理事の公式謝罪、今後の労災予防への発展基金500億ウォン拠出なども仲裁案に含めた。

サムスン電子は今月中に記者会見を開き、謝罪文を発表する。

調停委員会は、「個人別の補償額は低くし、被害の可能性がある人を最大限含めるために補償の範囲を大幅に拡大した」と明らかにした。

内容は次の通り。

1) 補償対象

サムスン電子が最初に半導体量産を開始した京畿道龍仁市の器興工場の竣工日である1984年5月17日から2018年10月31日まで半導体や液晶表示装置(LCD)ラインで1年以上働いたサムスン電子 と協力会社(下請け)の在職・退職者全員。

補償疾病範囲は 、対象疾病をこれまでの26種類から46種類に増やし、白血病をはじめ多発性骨髄種や肺がんなど16種のいわゆる一般がんと、環境性疾患に属する希少がん22種、全身性強皮症など環境的要因によって発病すると言われている希少疾病全体。流産や死産、小児がんなど、 子供の疾患も含まれた。

2) 補償額

は1人あたり最大1億5000万ウォン(約1500万円)で、正確な補償額は勤務場所や勤続期間などによって変わる。
白血病が最大1億5000万ウォン(約1500万円)、卵巣がんと乳がんが最大7500万ウォンなど。


希少疾患、子供の疾患は初回診断費500万ウォンと完治までに毎年300万ウォンを支援し、流産や死産は1回最大300万ウォン(最大3回)を補償する。




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