中国の独占禁止当局は韓国のサムスン電子とSK Hynix、米 国の Micronのメモリー半導体3社による価格談合など独占禁止法違反の疑いで調査している。
3社がDRAMの価格談合をはじめ、製品の供給不足を悪用した抱き合わせ販売など違法行為をしていないかどうかを調べている。
DRAM価格は2016年から上昇傾向が定着し、大口需要家である中国企業の告発があった。世界市場で3社の 全世界のD-RAM市場の90%、NAND型フラッシュメモリ市場の50%以上を占めている。
通報を受け、市場監督管理総局は3社が独占禁止法に違反するとして立案し立ち入り調査を展開 し、すでに3社より大量の証拠資料を得ている。その後、この3社から製品の供給を受けている数十の企業にも調査をし、証拠となる資料を整理/仕分けした。3社の責任者とも意思疎通を図っており、調査の進捗についても3社にフィードバックをしている。
調査はすでに最終段階に入っており、今後、反壟断局は関連する市場の調査、市場シェアの確認、市場における位置づけおよび商習慣について討論を重ね、調査を継続。市場の競争公平性を維持し、消費者の利益を確保する 。
現地メディアの「21世紀経済報道」は、中国当局が調査に着手した時、「これら3社が市場支配力を乱用するような行為をしたと判断されれば、2016年から現在までの半導体売上から見て、課徴金の額は8億-80億ドルに達するだろう」と報道している。
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韓国半導体業界は中国当局者の今回の発言に大きく2つの狙いがあるとみている。
一つは中国のIT企業に制裁を加えている米国に対する警告である。
米国は中国のMade In China 2025計画に反対し、Made In China 2025計画での全ての政府補助金の廃止、Made In China 2025計画からの輸入品を米国が制限することを認めることを求めている。
米国は10月29日には、DRAM工場を建設中の福建省晋華集成電路(Jinhua Integrated Circuit Company:JHICC)に対する米国企業の輸出を制限した。これにより、同社の量産の時期が遅れる。2018/11/1 米、中国半導体 JHICCへの製品輸出を制限
もう一つはJHICCの量産を控えた布石という見方で、「中国の初期技術レベルは3社と競争するレベルではないが、自国の企業を後押しすることで機先を制するということだろう」と見る。
中国は世界の半導体需要の約60%を占めるが、2016年の自給率は13.5%に過ぎない。中国は2015年に「半導体堀起」政策として1600億ドルを投じて、自給率を2025年に70%に引き上げる計画を立てた。
本年春に習近平主席は湖北省武漢にある半導体企業の武漢新芯を訪れ、「核心技術の確保」を力説した。その後、中国政府は半導体産業振興のため3000億元のファンド設立計画を発表した。
韓国半導体業界は半導体に関する中国と米国の争いが韓国業界に打撃を与えると恐れている。
半導体は韓国の輸出全体の17%を占め、中国への半導体輸出額はそのうちの39.5%にのぼる。
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韓国では、本件とは別に、来年に半導体需要が鈍化するとみている。
韓国の現代経済研究院は11月18日、「2019年主要産業別景気見通しと示唆点」と題する以下の内容の報告書を発表した。
今年は半導体の好況が情報通信技術(ICT)景気を牽引したが、来年には半導体需要が鈍化し、ディスプレーパネルは減少傾向が続くだろう。ICT産業は後退局面に進入する可能性が高い。
今年半導体とともに輸出の二本柱だった石油化学もグローバル需要鈍化で成長が頭打ちになる。すでに沈滞局面に進入した自動車と鉄鋼は厳しさが加重され、造船は微弱な回復傾向が現れる。
韓国の主要産業が景気周期の後退(ICT、石油化学、機械)、沈滞(自動車、鉄鋼建設)、回復(造船)の局面に置かれているのに対し、好況が期待される業種はひとつもない。主力産業の競争力を高めて新たな成長動力を確保するよう中長期産業戦略をまとめなければならない。
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