米国、イラン経済制裁を再開 

| コメント(0)

米国は11月5日、イランの石油や金融部門を中心に経済制裁第2弾を再開した。イランのミサイルや核開発を制限すると共に、中東地域で高まるイランの軍事・政治的影響力を抑える狙い。


ーーー

トランプ米大統領は5月8日、欧米など6カ国とイランが結んだ核合意から離脱すると表明した。核合意に基づく対イラン経済制裁を再開する大統領令にも署名した。

2018/5/10 トランプ大統領、イラン核合意離脱表明  

制裁内容は次の通り。

最初の期限 8月6日

各企業はイラン国債ないしイラン通貨の保有を段階的に縮小しなければならない。
イラン政府のドル獲得ないし買い増しを助ける個人ないし企業はこの日までに制裁を科される。

イランの金などの貴金属、黒鉛・石炭、アルミニウムや鉄鋼などの金属の貿易や、イラン自動車業界、じゅうたんやキャビアなど高級品への制裁も8月6日に再開される。

イランの石油業界とビジネスを行っている企業への制裁は11月5日に再開される。これにはイラン中銀と大きな取引を行っている外国金融機関への制裁も含まれる。

らにイランのエネルギー業界に制裁を科すほか、イラン国営石油などの企業との石油関連取引も対象とする。


トランプ政権は制裁解除の条件として、全ての核関連施設での国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れや弾道ミサイル開発の停止など12項目を満たすようイランに求めている。

ーーー

米国は11月5日午前0時過ぎから、イランへの制裁を再開した。ホワイトハウスは制裁が「史上最強」のものになると強調している。

今回の制裁では、石油輸出、船舶、金融など経済の重要部門全てが対象になる。

今回の制裁は、700以上の個人、組織、船舶、航空機が対象となる。この中には大手銀行、石油輸出企業、船舶会社も含まれる。

ポンペオ長官によると、すでに20カ国超がイランからの原油輸入を日量100万バレル超減らしているという。

長官は、イラン産原油の主要輸入国である日本、中国、インド、韓国、トルコ、ギリシャ、イタリア、台湾に対しては、180日間イラン産原油の輸入を容認する方針を明らかにした。

これらの国が既に「イランからの原油輸入を大幅に減少」させているが、「輸入量をゼロにするには、もう少しの時間」が必要と語った。2カ国がイランからの石油輸入を最終的に止め、残る6カ国も大幅に輸入量を減らすだろうと述べた。

米議会ではトランプ政権の姿勢が弱腰だとの批判が出ている。

共和党のルビオ上院議員はイラン産原油の輸入を中国に認めることを批判し、中国以外の国についても「早期に適用除外をやめるべきだ」と訴えた。


イランのこれまでの輸出先は次の通り。

しかし、仮にこれら8カ国が従来通り輸入を続けたら、今までの3/4の輸入が出来ることとなり、制裁の体をなさない。

調べると記者会見でポンぺオ長官は、8カ国の名を挙げた後に次の通り述べている。

Additionally today, 100 percent of the revenue Iran receives from the sale of oil will be held in foreign accounts. Iran can only use this money for humanitarian trade or bilateral - in bilateral nonsanctioned goods.

石油代金は外国の口座に入れられ、人道的な取引か、制裁対象外の商品の購入にのみ使うことができる。

具体的に、どのように規制するのか明確ではないが、8カ国が当面輸入をするのは認めるが、イランがその代金を自由に使うのは許さないということと思われる。

更に、米国の制裁開始に歩調を合わせ、銀行間の国際決済ネットワークを運営する「国際銀行間通信協会」(SWIFT)は11月5日、複数のイランの銀行をSWIFTの国際送金網から遮断すると発表した。

核合意存続を訴える欧州はイランとの貿易にSWIFTは欠かせないとして遮断に反対したが、制裁の抜け道をふさぎたい米国はSWIFTも制裁対象になると警告し圧力をかけ 、押し切った。

SWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication )は、銀行間の国際金融取引に係る事務処理の機械化、合理化および自動処理化を推進するため、参加銀行間の国際金融取引に関するメッセージをコンピュータと通信回線を利用して伝送するネットワークシステム。

200 以上の国・地域の金融機関1万1千社以上が参加。送金に必要な通信ネットワークの管理を担う。送金情報を伝えられなければ銀行は国境を越えて送金できなくなる。

国際送金網から完全に遮断されれば、イラン企業は外国企業との商取引で多額の現金決済を強いられ、イランと貿易を続けようとする外国企業との決済は困難になる。

核合意成立前の2012年に、米欧とイランの対立が深まった際にイランはSWIFTから遮断されたことがある。

SWIFTは声明で「世界金融システムの規範を維持する使命に従う」と表明した上で「残念ではあるが、(遮断)措置を取った」と説明している。

遮断するイランの銀行の数は明示しなかったが、制裁が目的のため、主要銀行は全て含まれていると思われる。

日本の石油会社は、制裁発動に備え、イランからの輸入を停止していたが、今回の措置で、輸入を再開するであろうか。 出来るのだろうか。



中国外務省の華春瑩副報道局長は定例会見で制裁再開について「遺憾」の意を表明。「中国はイランの努力を高く評価しており、包括合意へのたゆまぬ努力を続けると同時に、我々の合法的な権益を守る」と述べ、「中国とイランの正常な協力は国際法のもとで尊重され、維持されるべきだ」として、イランからの原油輸入を続ける意向を示した。

欧州連合と英独仏の外相と財務相は制裁発動に先立つ2日、「大変遺憾」とする共同声明を出した。声明は、米国が抜け出たイラン核合意は「核不拡散のための世界的な枠組みだ」とし、イランが核合意を順守し続けるよう、イランと欧州企業間の原油や金融取引が続けられる方策を模索するとしている。

コメントする

月別 アーカイブ