東芝、米国LNG購入契約を譲渡

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東芝は11月8日、米国産液化天然ガス(LNG)に係る事業から撤退すると発表した。

LNG事業に係る全ての契約も移管または 解除することで、2019年3月31日までに本件譲渡を完了させて、LNG事業から撤退することを目指す。

相手先は開示していないが、中国の民間ガス大手、新奥能源 (ENN Energy Holdings)であると報道されている。


米国のFreeport LNG はテキサス州Quintana Island にLNGプラントを建設中で、2011年に
米エネルギー省からFTA締結国向け輸出の承認を受け、2013年5月に日本などFTA非締結国への輸出の承認を初めて受けた。第4系列については2018年3月にFTA非締結国向け輸出の承認を受けた。

東芝は、日本をはじめとする各国の需要家へのLNG販売を目的として、2013年に年間220万トンの20年間(2019年から)の契約を締結した。

Freeport LNG


株主:
Michael Smith
Zachry
Dow(輸出には不参加)
大阪ガス

Freeport LNG Terminal
(Quintana Island, TX)
承認:2013/5(FTA締結国向けは 2011/2)
期間:20年間
液化開始:2018年(追加分2019年)
輸出契約:
 

大阪ガス

  220万トン
  中部電力   220万トン
  BP Energy   440万トン
  東芝   220万トン
SK E&S LNG

220万トン

Trafigura

50万トン

  再計  

1370万トン


2013/5/20 米エネルギー省、日本へのLNG輸出を許可


東芝は、これを武器に
日本の電力会社などに火力発電設備を売り込もうとしたとされる。

東芝が契約した2013年当時は、東日本大震災後で日本では原子力発電所が停止し火力発電所に依存してLNGの需要が高まっていた。

しかし、現時点でも販売先は全く決まっていない。これらは全て Take or Pay の契約であり、市況が下がっても契約価格での引取りが必要である。このため、同社では(過去に)最 大1兆円の損失の恐れがあるとしていた。

同社では、LNGについて、市況の悪化、より低コストのプロジェクトが今後開発されること等により当初想定していた取引条件を下回る条件、あるいはコストを下回る価格での販売を余儀なくされ、それにより将来的に損失が発生する可能性があるとしている。

本年8月に入り、東芝はこれを売却する方針を固めた。米のLNG業者のTellurian Inc.や中国石油天然気(PetroChina)など10社程度が同事業の買収に関心を示していたとされる。

Tellurian は10月31日、「検討の結果、買い取らないことを決めた」と語った。

ーーー

売却先の新奥能源(ENN Energy Holdings)は、香港証券取引所に上場する中国の民間ガス大手。

中国で都市ガス供給やガス導管の管理、トレーディングなどを手掛ける。近年は米シェブロンや仏トタルなどとLNGの調達契約を結ぶなど積極的に取引量を増やしている。東芝のLNG事業を取り込むことで調達先の多様化を進める。

東芝では、交渉相手のなかで、LNG事業に付随する損失リスクの明確化・最小化・一括処理の観点から同社を選択した。

譲渡の条件は次の通り。

・事業会社(東芝アメリカLNG)の売却 売却額15百万ドル

LNG全量引取基本合意書でのLNG引取義務の引き継ぎ  821百万ドルを支払う

  この保証のため、500百万ドルの銀行保証状の差し入れが条件となっている。

東芝は新奥能源に支払う予定の821百万ドルを損失に計上する。

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