オーストラリアのフライデンバーグ財務相は11月20日、香港の不動産大手、長江実業集団などの企業連合による豪ガスパイプライン最大手APAの買収を認めない方針を明らかにした。
豪州の天然ガスパイプライン大手 APA は6月13日、香港の長江基建集団(CK Infrastructure Holdings) などの長江実業集団のコンソーシアムから買収提案を受けたと発表した。買収価格は1株11.00豪州ドルで、総額で約130億豪州ドル(1兆1千億円)となる。
長江実業集団は李嘉誠が創業した香港最大の企業グループ。
長江グループは2017年に豪エネルギー大手Duet Groupを買収しており、豪州でのエネルギー事業を一段と拡大する。買収には、外資審査委員会(Foreign Investment Review Board)と 競争・
消費者委員会(Australian Competition and Consumer Commission)の承認が必要だが、長江では既に両委員会に接触し、説明しており、競争・ 消費者委員会に対しては、買収に当たり、競争の観点で障害となりうる Goldfields Gas Pipeline、Parmelia Gas Pipeline、Mondarra Gas Storage Facility の持分の売却案を示している。 2018/6/20 香港の長江実業集団、豪の天然ガスパイプライン大手APAの買収提案
豪競争・消費者委員会(ACCC)は9月12日、買収承認を発表していた。
しかし、財務相は11月初めに、外国投資審査委員会(FIRB)との協議の結果として、「豪州にとって最も重要なガス輸送が、海外の単独グループによって過度に占有される」との予備的見解を公表していた。
今回、財務相は、買収が「国益に反する」と述べ、ガス輸送事業における単一の外資企業グループによる保有が大き過ぎる恐れがあるとも指摘した。
「国益に反しないと見なされる外国投資を今後も歓迎する」と述べ、長江実業集団が問題ではなく、同社の豪州への投資、豪州経済への貢献を歓迎するともしている。
長江グループは2016年に中国の大手送電網企業である中国電網と組んで、ニューサウスウェールズ州の送電線運営会社 Ausgrid を買収しようとしたが、FIRBから「国家安全保障上の理由」により買収を拒否された。
しかし、長江グループは2017年1月に豪エネルギー大手Duet Groupを買収する契約を締結、これについては同年4月にFIRBから承認された。Duetは、西豪州でDampier-Bunbury pipeline を持つほか、電力供給の United Energy、ガス供給の Multinet Gas、パイプライン事業の DBP Development Group、Energy Developments Ltd に出資する。
豪政府は、国内で投資を通じて影響力を強める中国への懸念などから、通信や港湾など基幹インフラへの外国投資規制を強めている。
8月には、次世代通信規格「5G」の通信網について、「安全保障上の懸念」から、中国の通信大手の華為技術(Huawei Technologies)と中興通訊(ZTE)の参加を認めない方針を出している。
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