カルロス・ゴーンの逮捕により、今後の日産自動車とルノーの関係が問題となる。
ルノーの筆頭株主はフランス政府であり、マクロン大統領は国内の雇用創出のためルノーに対して日産との合併を働きかけていた。
ゴーン会長は両社の経営統合を計画しており、日産側が強く反対していたとされる。
現在の出資関係は下記の通り。
フランス政府は2014年に国内の産業を守る目的でフロランジュ法を制定した。2つの柱から成る。
① 大企業に対して、工場など生産拠点を閉鎖する場合は事前に売却先を探すよう義務づけ。
アルセロール・ミタルが2012年、フランス北東部フロランジュにある高炉を閉鎖したが、今後のこれら事態への対策とした。
② 株式を2年以上持つ株主に、2倍の議決権を与えること。株主の3分の2が反対すれば、この「2倍ルール」の適用を免れる。
フランスには政府が大株主の企業が多く、2倍ルールは仏政府の影響力が増すことを意味する。2015年4月30日のルノーの株主総会で、ルノー経営陣は「2倍ルールの適用除外」を決めようとしたが、仏政府はルノー株を一時的に買い増してこれを否決に持ち込んだ。
この結果、仏政府の議決権は15%から28%に増えた。日産自動車はルノーに15%出資するが、子会社のため、議決権を持たない。
以前には、仏政府の動きに対し、日産自動車は、保有するルノー株の比率を15%から25%以上に引き上げるとルノーが持つ日産への議決権が消滅する日本の会社法をちらつかせ、仏政府を退けた。
付記 契約上、日産がルノー株を買い増しできるのは、不当な介入があった時のみとのこと。 買い増しは2015年の改定アライアンス基本契約書で追加した。
会社法第308条は次の通り規定する。
株主(株式会社がその総株主の議決権の四分の一以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主を除く。)は、株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の株式につき一個の議決権を有する。
この解釈:
株主は、株式一株につき一個の議決権を有する。
株式会社(日産自動車)が株主(ルノー)の議決権の1/4以上を有することで、株式会社(日産)はその(ルノーの)経営を実質的に支配することが可能な関係になる。その株主(ルノー)を除く。
すなわち、ルノーは日産の議決権を有しない。相互保有株式と呼ばれる。
議決権の1/4 以上の株式を持っていると、実質的に会社の経営を支配できる。
ルノーは1/4以上の議決権を持つ日産を通して、ルノーの1/4以上の議決権を持つ日産に、ルノーの思う通りに、ルノー自身の議決をさせることができることとなり、不正な議決が行われる可能性が出る。
付記 フランス会社法では、ルノーの日産持株が40%未満の場合には、日産はルノーの議決権を持つことができることが判明した。
ルノー持株が40%以上なら、日産にルノー議決権なく、40%未満なら議決権がある。(フランス会社法)
日産持株が25%以上になれば、ルノーの日産議決権はなくなる。(日本の会社法)
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