厚労省の薬事・食品衛生審議
付記 2018年12月28日、条件及び期限付承認を取得したと発表した。
この製剤は札幌医科大の本望修教授らが医療機器大手ニプロと共同開発したもので、患者から骨髄液を採取し、骨や血管などになる能力を持つ「間葉系幹細胞」を取り出し、5千万~2億個に大量培養してつくった細胞製剤を、脊髄を損傷してから31日以内を目安に体内に静脈注射する。
間葉系幹細胞が脊髄の損傷部に自然に集まり、炎症を抑えて神経の再生を促したり、神経細胞に分化したりして、修復する 。
間葉系幹細胞は普段から血流に乗って体中を巡っていて、骨や臓器や神経など身体の中の傷ついた部位を修復する働きをしている。間葉系幹細胞は人体の自然治癒力に関係している。
脊髄損傷の治療では、普段の間葉系幹細胞の数では足りないので、数を大幅に増やして傷ついた部位に働きかける。
本人の体性幹細胞であるため、拒絶反応や癌化する心配がない。
官邸 健康・医療戦略推進本部 2017/6/14資料 脳梗塞と脊髄損傷の再生治療
テルモ生命科学芸術財団 本望教授 インタビュー記事
脊髄損傷の患者は国内に10万人以上いるとみられ、毎年5千人が新たに患者になるといわれる。リハビリによって一部の運動機能が戻ることもあるが、根本的な治療法はない。
本年6月にニプロが承認申請した。先駆け審査指定制度の対象で、同制度対象の再生医療等製品としては第1号の承認となる。現状ではリハビリ以外に有効な治療法がない脊髄損傷に対する初の細胞治療製品となる。
部会は、安全性は確認できたが、評価症例数が少なく有効性については推定にとどまると判断して「条件及び期限付き承認」扱いとし、7年かけ対照群を設けて比較評価を行うことにした。
脊髄損傷の再生医療を巡っては、慶応義塾大学がiPS細胞を使う治療法の臨床研究を学内の倫理委員会などに申請しており、年内にも認められる見通し。
岡野栄之教授と中村雅也教授らのチームで、iPS細胞を神経のもとになる細胞に育てて損傷した脊髄に移植し、手足などの機能回復を目指す。中村雅也教授 「今まで中枢神経である脊髄は、ひとたび切れたら決してつながらないと言われていました。しかしiPS細胞を使い、環境を整えることで延ばす方法の開発に我々は成功しました。既に、霊長類である猿の治療にも成功しています。ほとんど動けなかった猿が、ケージを飛び移れるほど回復した姿を、僕はこの目で見ました。」
付記
慶應義塾特定認定再生医療等委員会は11月27日、計画を承認した。 院内の所定の手続きを経て、本提供計画の実施を厚生労働大臣へ申請する。
亜急性期脊髄損傷(「受傷後14~28日の脊髄損傷」)の患者が対象。付記
厚生労働省の専門部会は2019年2月18日、iPS細胞を使って脊髄損傷を治療する慶応義塾大学の臨床研究計画を了承した。
iPS細胞から作った神経のもとになる細胞を患者に移植し、機能改善につなげる世界初の臨床研究で、2019年夏にも始まる見通し。
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本望教授は、脊髄損傷のほか、脳梗塞の治療法としても研究している。
脳梗塞は、脳血管が詰まって脳血流が滞ることで、酸素・栄養が神経細胞に届かなくなるために、脳が傷害される。血流を再開させた後に脳機能がうまく回復しなかったり、脳の機能障害が徐々に進行する等の問題が多く、これらに対する有効な治療法は非常に乏しい。
この治療法では、脳の患部にたどり着いた骨髄幹細胞は、弱った神経細胞のあたりにやってくると、神経細胞を元気にする神経栄養因子という物質を出す。更に血管新生因子という物質を出して、新しい血管をつくり出し、酸素や栄養を補給して神経細胞を再生させる。
脳梗塞になって1カ月半も経った場合、その患者の神経細胞はほとんど死んでしまって再生するのは難しいというのが医学的な常識だが、間葉系幹細胞による治験では、1カ月半を過ぎてからの治療であっても効果があることがわかった。
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