米政府報告書、気候変動で「年間数千億ドルの損失」

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米政府は11月23日、気候変動とその影響に関する報告書「第4次全米気候評価」(Fourth National Climate Assessment Volume II)を発表した。


報告書は、「炭素排出量は歴史的な高い水準で増加し続けており、一部の経済部門の年間損失は今世紀末までに、米国の多くの州の現在のGDPを上回る数千億ドルに達する見込みだ」と指摘している。

また「大幅かつ持続的な世界規模の排出削減と地域的な適応努力がなされなければ、気候変動が米国のインフラと財産に与える損害は拡大し、今世紀中の経済成長の妨げとなる見通しだ」とした。

報告書によると、米南東部だけでも、異常な暑さで2100年までに5億時間の労働時間が失われるとみられている。

農家に対する影響は特に大きく、高温化や干ばつ、洪水により全米で作物の量や質が落ちるという。熱ストレスによる生産性の低下、海洋の酸性化に伴う貝類の死滅での経済損失も指摘されている。

健康面では、高温化による死者が増加する見通しで、中西部では2090年までに早死にする人が年間2000人増えるとしている。蚊やダニを媒介する病気の増加、ぜんそくやアレルギーの悪化、食品や水由来の疾病リスクも挙げられている。特に夏の高温は、子どもや高齢者、経済的困窮者などの病気や死亡を招く恐れがあるという。

自然への影響では、山火事で年間焼失する面積が2050年までに現在の6倍に増え、ハワイやカリブ海では高温により安全な飲み水が脅かされると指摘。海面上昇や高潮も発生し、華氏100度(摂氏約37.8度)を超える日が増加する。

今世紀中頃には北極の海氷が夏の終わりに全て解け、永久凍土の融解を誘発。さらに多くの二酸化炭素やメタンガスが放出される結果となり、温暖化を加速させる可能性があるという。

報告書は連邦政府によって作成が義務づけられている。今回発表されたのは同報告書の第2巻で、第1巻は昨年11月に公開されている。13の連邦機関から集めたチームがまとめた。代表的な科学者300人を含む1000人の支援を受けそのうち約半数は政府外からの支援だった。

報告書の内容は、気候変動をでっち上げだとするトランプ大統領の主張と食い違っている。「報告書をまとめる過程で外部からの干渉はなかった」という。


大統領は11月21日と22日(感謝祭祭日)にツイッターで次のように呟いた。記録破りの寒さで、地球温暖化はどうなったんだと皮肉っている。

Brutal and Extended Cold Blast could shatter ALL RECORDS - Whatever happened to Global Warming?

This is the coldest weather in the history of the Thanksgiving Day Parade in NYC, and one of the coldest Thanksgivings on record!


気候変動

年間損失

参考:
RCP 2.6 : 低位安定化シナリオ
   将来の気温上昇を2℃以下に抑えるという目標のもとに開発された排出量の最も低いシナリオ
RCP 4.5 : 中位安定化シナリオ
RCP 6.0 : 高位安定化シナリオ
RCP 8.5 : 高位参照シナリオ
   2100年における温室効果ガス排出量の最大排出量に相当


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