三菱瓦斯化学は11月1日、SABICと日本・サウジアラビアメタノール(JSMC)との50/50JVのSaudi Methanol Company (AR-RAZI) が11月29日に合弁契約の期限切れを迎えると発表した。
両親会社は、現行の契約の延長の交渉を行っているが、現時点で最終合意ができていない。
このまま期限が来た場合、JVは解散する。その場合の取り扱いは明らかにされていないが、しかるべき条件でSABIC 100% になると想像できる。
三菱瓦斯化学の連結決算での本件の投資損益は、2008~2017年度平均で約120億円 (日本側全体ではその倍)となっており、解散の場合はこの分が減益になる。
同社の経常損益と、そのうちの持分損益の推移は下記の通り。サウジの他にもブルネイ、ベネズエラにメタノールの持分法JVを持つ。
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サウジは1970年代央に、油田で燃やされていた石油随伴ガスを貴重な原料として石油化学を興すことを決めた。
1975年に石油化学基地として2つの工業都市の建設が決められた。1つは油田に近いペルシャ湾岸のAl-Jubail、もう1つは紅海沿岸のYanbu である。
1976年9月にサウジ基礎産業公社 (SABIC)が設立された。
石油化学計画実施のため、ガス収集システムと両工業都市を結んで原油とガスを送るパイプラインが建設された。
石油計画の遂行に当たり、サウジ政府は海外の石化メーカーに参加してもらい、50%出資と技術供与、従業員の教育を依頼するという戦略を決め、シェル、モービル、ダウ、エクソン、三菱グループ、三菱ガス化学等と交渉を始めた。
以下のJVが設立された。いずれもSABICが50%出資した。
Al-Jubail
・SHARQ (Eastern Petrochemical):三菱ほか日本側;PE、EG (後、Ethyleneも)
・KEMYA (Al-Jubail Petrochemical ):Exxon;PE (後、Ethyleneも)
・PETROKEMYA (Arabian Petrochemical):(SABIC 100%);Ethylene
・SADAF(Saudi Petrochemical):Pecten Arabian (Shell);Ethylene、工業用Ethanol、SM、Caustic Soda、EDC、MTBE
・AR-RAZI(Saudi Methanol):三菱ガス化学ほか日本側;メタノール
・IBN SINA(National Methanol):Hoechst-Celanese、Pan Energy;メタノール、MTBE
Yanbu
・YANPET (Saudi-Yanbu Petrochemical):ExxonMobil:Ethylene, PE、EG
2006/3/30 サウジアラビアの石油化学の歴史
メタノールでの海外進出を狙っていた三菱瓦斯化学は、FSの結果、ナショナルプロジェクトでの事業化を決定、海外経済協力基金のほか、国内メーカーの参加を求めた。
1977年11月に投資会社の日本・サウジアラビアメタノール㈱(JSMC) を設立した。
三菱ガス化学が47%、海外経済協力基金が30%、三井東圧・住友化学・協和ガス化学が各5%、日本化成・新日鐵化学・東邦理化が各1%、それに伊藤忠が5%出資した。
1980年2月に日本・サウジアラビアメタノールとSABICの50/50出資でSaudi Methanol Company (AR-RAZI) が設立された。
1983年2月に第1期 60万トンが完成、日本側は半分の30万トンの引取り権を得た。
需要の増大(最近はMTBE原料用)に伴い、同社は増設を続けた。
1992年1月に第2期(63万トン)、97年6月に第3期(85万トン)、99年4月に第4期(85万トン)が完成した。現状能力は4期までが合計320万トン。
順次、サウジ側の引取りが増え、第2期分は31.5万トンは日本で引取り、残りを双方で半分ずつ販売した。第3期分は25%はサウジのMTBE用、残りは日本側、サウジ側均等販売、第4期はIbn Zahar と SADAF のMTBE向けが中心である。
更に、2008年5月1日、第5期170万トンが操業を開始した。合計能力は490万トンとなった。
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途上国が初めて新規事業を行う際、海外の企業に参加してもらい、出資と技術供与、運営、従業員の教育などを依頼するというのは通常である。
その場合、一定期間が経過すると、合弁契約を解消し、自らで運営するというのもよくある。
インドネシアのアサハンアルミがその例である。
2013/12/11 日本企業連合、アサハンアルミから撤退
2018/7/17 インドネシアのアサハンアルミ、銅鉱山運営のFreeport Indonesiaの株式の51%を取得
サウジの場合も、当初から合弁契約の期間を決めていたようである。
2017年にShellはSADAFの持分50%をSABICに820百万ドルで売却し、SABIC 100%とした。JV契約は2020年に終了するが、それより早く終了させることで合意したとしている。
サウジでは、Saudi AramcoとSABICを統合し、石油化学を石油精製に次ぐ国の産業として拡大する動きがある。両社のCrude Oil-to-chemicals JVの立地もYanbuに決まり、動き出した。
今や、技術ライセンスは別として、海外の企業の支援は不要である。 むしろ、全体の運営上で支障になることもある。
Saudi Methanol Companyの場合、1983年2月に第1期 60万トンが完成しているが、おそらく商業運転開始が1983年11月であったのであろう。本年は丁度 35年になる。
今や、技術的には三菱瓦斯化学の指導は必要がないし、最近は日本側の製品引取も減っており、SABIC側にとって、契約期間延長のメリットはないと思われる。
SHARQ (Eastern Petrochemical Company) も同時期に日本側50%のJVとしてスタートした。
しかし、この場合は、エチレン年産130万トンを含む新計画が2010年4月に商業運転を開始している。この時点で契約の変更が行われている可能性もある。
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日本・サウジアラビアメタノールの2017年歴年の決算は次の通り。
売上高 | 646億8600万円 | |
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営業利益 | 262億3600万円 | |
経常利益 | 254億4200万円 | |
純利益 | 239億8900万円 | |
利益剰余金 | 311億6800万円 |
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