第五世代(5G)移動通信システムの周波数割当の審査基準

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総務省は12月14日、第五世代(5G)移動通信システムの周波数を携帯電話各社に割り当てる際の審査基準を定めた開設指針を決定した。

総務省は事前に公表していた指針案を修正し、12月14日に有識者会議の電波監理審議会に諮問し、即日、内容が妥当との答申を受けた。

基地局など通信設備で、中国製品の一部を事実上排除するよう求める項目を盛り込んだ。

世界貿易機関(WTO)のルールに配慮し、国名や企業名の名指しを避けたが、Huawei、ZTEの製品が念頭にあり、12月10日に関係省庁が申し合わせた「IT調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ」(後述)について留意すべきこととしている。

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの国内3キャリアは、2019年度米国防権限法(NDAA2019) を念頭に、既に 5GでHuaweiとZTEの通信設備を事実上排除する方針を固めたと報じられている。
ソフトバンクは現行の携帯電話の通信規格「4G」の設備について、華為技術(Huawei)など中国製の基地局をなくす方針を固めた。スウエーデンの
Ericsson、フィンランドのNokiaの製品に順次置き換える。

開設指針では、「考え方」を以下の通りとしている。

我が国の情報通信ネットワークの安全・信頼性を確保することが重要であると考えており、民間事業者においても、サイバーセキュリティ向上に向けて積極的に取り組んでいただけることを期待。

これに関連して、政府調達に係る申合せにおいて通信サービスの調達についても対象とされていること等を踏まえ、12月10日の関係省庁申合せについても留意すべきこととしている。

別表第一
開設計画に記載すべき事項
二 開設計画に従って円滑に特定基地局を整備するための能力に関する事項
1 略
2 特定基地局の無線設備の調達に関する計画及びその根拠
(「情報通信ネットワーク安全・信頼性基準」並びに「政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一基準群(平成30年度版)」及び「IT調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ」に留意すること。)

当初の開設指針案に対する意見と、それについての考え方も記載している。

意見:セキュリティリスクの問題で諸外国で使用禁止になっているHUAWEI、ZTEの2社の設備は使用禁止にすべき。【個人】

考え方:

我が国の情報通信ネットワークの安全・信頼性を確保することが重要であると考えており、民間事業者においても、サイバーセキュリティ向上に向けて積極的に取り組んでいただけることを期待。

これに関連して、政府調達に係る申合せにおいて、通信サービスの調達についても対象とされていること等を踏まえ、本開設指針案の別表第1において、(中略)、「IT調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ」 (平成30年12月10日関係省庁申合せ)についても留意すべきこととしている。

ーーー

政府は12月10日、首相官邸で中央省庁のサイバーセキュリティー担当者が集まる「サイバーセキュリティ対策推進会議」を開き、中央省庁がIT機器や情報システムを調達する際にサイバーセキュリティーの観点から手続きを厳格化する「IT調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ」を決定した。

1.目的
複雑化・巧妙化しているサイバー攻撃に対して、政府機関等におけるサイバーセキュリティ対策を一層向上させるためには、従来行われている取組に加え、より一層サプライチェーン・リスクに対応するなど、政府の重要業務に係る情報システム・機器・役務等の調達におけるサイバーセキュリティ上の深刻な悪影響を軽減するための新たな取組が必要である。

そのため、各省庁等において特に防護すべき情報システム・機器・役務等に関する調達の基本的な方針及び手続について、次のとおり関係省庁で申し合わせ、講ずべき必要な措置について明確化を図る。

2.対象とする調達
別紙1に掲げる各省庁等において、別紙2に掲げる情報システム・機器・役務等の調達のうち、別紙3に掲げる重要性の観点から、より一層サプライチェーン・リスクに対応することが必要であると判断されるものについては、情報通信技術(IT)総合戦略室及び内閣サイバーセキュリティセンターと協議のうえ、本申合せに基づき必要な措置を講じる対象とする。

別紙2 情報システム・機器・役務等 (詳細略)
・通信回線装置
・サーバ装置 ・端末
・複合機 ・ソフトウエア
・周辺機器
・外部電磁的記録媒体
・役務
別紙3 重要性の観点
①国家安全保障及び治安関係の業務を行うシステム
②機密性の高い情報を取り扱うシステム並びに情報の漏洩及び情報の改ざんによる社会的・経済的混乱を招くおそれのある情報を取り扱うシステム
③番号制度関係の業務を行うシステム等、個人情報を極めて大量に取り扱う業務を行うシステム
④機能停止等の場合、各省庁における業務遂行に著しい影響を及ぼす基幹業務システム、LAN 等の基盤システム
⑤運営経費が極めて大きいシステム
4.契約方式 本申合せの対象となる調達の契約方式については、総合評価落札方式や企画競争等、価格面のみならず総合的な評価を行う契約方式を採用するものとする。


5.調達手続

各省庁等は、第2項で特定した調達を実施する際は、会計法及び予算決算及び会計令に基づき契約手続を進めるに当たり、調達する情報システム・機器・役務等の提供事業者及びその製品並びに役務について、サイバーセキュリティ確保の観点から、仕様条件の決定、製品及び役務を提供する事業者の選定のために必要な情報を、Request for Information(RFI)及び Request for Proposal(RFP)等により取得することとする。

各省庁等は、調達手続のうち、サプライチェーン・リスクの観点から必要な場合において、情報通信技術(IT)総合戦略室及び内閣サイバーセキュリティセンターに対して、講ずべき必要な措置について、原則、助言を求めるものとする。


新ルールは2019年4月1日以降に調達手続きを始めるものから適用する。


「申合せ」では特定の企業名や製品名は示していないものの、HuaweiやZTEなどの中国通信機器メーカーの製品にセキュリティー上の懸念があることを踏まえたもの。

中国外務省の報道官は12月10日、日本政府が政府機関の調達先から中国通信機器大手、Huaweiなどの製品を事実上排除する方針を決めたことについて、「中国はいかなる差別的な対応も受けるべきではないと考えている」と述べ、不快感を示した。5G移動通信システムに関し、Huaweiが20カ国以上の企業と契約していることも明らかにした。

大手メディア『環球時報』は12月10日、「HuaweiとZTE排除によって日本は自らの利益を必ず損なう」という社説を発表し、「中日関係を改善させる重要なタイミングで日本は米国の政治圧力に屈した。大きな悪影響がもたらされるかもしれず、日本の安全保障にもよくないことだろう」と強調した。

日本企業が、近い将来、中国内で排除される、報復措置の可能性もありうる。 

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