Bayerは11月29日、合理化策を発表した。
6月7日にBayer のMonsanto 買収が完了した。買収額は総額625億ドル。
買収したMonsantoの除草剤 Roundup について、カリフォルニアの陪審員が8月10日に、発癌被害で289百万ドルの賠償評決を下した。San Francisco Superior Court は10月23日、損害賠償は39百万ドルのままとし、懲罰的賠償は39百万ドルに大幅減額した。
しかし、Bayer主張の無罪にならなかったため、Bayerの株価は下落した。
Monsanto の買収完了で今後の事業の方向を明確化するとともに、大規模な合理化を打ち出し、株式市場にアピールする。
合理化の内容は次の通りで、競争力を強化し、2022年にはMonsanto買収に伴うシナジー(10.4億ユーロ)を含め、年間26億ユーロの貢献を見込む。
人員削減は2021年末までに行う。
合理化 | 人員整理 (2021年末までに) |
除却損 | ||
コア 事業 |
Pharmaceuticals | ・イノベーションの加速、社内R&Dのリストラ ・血友病事業:ドイツWuppertalの第Ⅷ因子設備を 使わず、米Berkeleyの組換え第Ⅷ因子設備に集中 |
R&D 900 Wuppertal(第Ⅷ因子設備) 350 |
Wuppertal設備 6億ユーロ |
Consumer Health | ・外部での開発が有利と思われる製品の切り離し スキンケア (Coppertone™)、 フットケア (Dr. Scholl's™) など |
改組 1,100 | Merckからの買収製品、滇虹薬業集団、その他、合計27億ユーロ | |
Crop Science | ・Monsanto事業との統合 | Monsantoとの統合 4,100 | ||
Animal Health | ・処分を検討(やり方は今後決める) | |||
Corporate | 5,500~6,000 | |||
Currenta (60%持分) | ・処分を交渉する。 | |||
合計 | 約 12,000 |
1) Pharmaceuticals、Consumer Health、Crop Science をコア事業とし、強化を図る。
Pharmaceuticalsでは、R&Dのリストラを行う。血友病関連では従来法設備を廃棄する。
Consumer Healthではスキンケア、フットケア製品などを切り離す。
付記
Dr.Scholl ブランドは北米とラテンアメリカではBayerが所有(Merck & Co. から買収)。Bayerは2019年7月、米の投資会社Yellow Wood Partnersに売却した。
その他の地域はReckitt Benckiserが所有していたが、2014年7月にドイツのprivate equity会社のAureliusが買収した。
Merck & Co. から買収したConsumer Care製品や買収した中国の漢方薬メーカー滇虹薬業集団(Dihon Pharmaceutical Group)、その他の除却損を計上する。
2014/5/10 Bayer、米 Merckの大衆薬事業を買収
2014/3/4 Bayer、中国の漢方薬メーカーを買収Crop Scienceでは買収したMonsantoの事業との統合を成功させる。統合により4,100名の人員減を行う。
特別損失を控除する前のシナジー効果を2022年で10.4億ユーロとみている。(うち、コストのシナジーが8.7億ユーロ)
2) 非コアとした Animal Health は処分する。処分方法は今後検討する。
3) 本社機能、補助機能、ビジネスサービスなど 5,500~6,000の人員削減
4) Currenta GmbH & Co. 持分60%の処分
Bayerはドイツに、Leverkusen、Dormagen、Krefeld-Uerdingenの3つのChempark を持つ。石油化学等が中心である。
Bayer AGと、Bayerから分離したLanxess AG が共同で使用しているため、Chemparkの運営(用役、環境、安全、保安、分析、教育、その他のサービス)をBayer 60%、Lanxess 40% のJVのCurrenta GmbHで行ってきた。このJVはChemparkの外の需要家にもサービスを提供している。
Bayer は2014年に、Life Science 事業(HealthCare と CropScience )に注力することとし、 MaterialScience事業を別会社として上場させることを決め、2015年9月1日、Covestro として分離独立した。
MaterialScience事業の分離で、今やこれらのChemparkの中でBayerが占める割合は大きく減少し、Currenta GmbH の60%を保有するのは正当化できないとする。
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買収したMonsantoの除草剤 Roundup の発がん性が疑われた訴訟は、今回の有罪判決に続き、米国各地で判決が出る。欧米メディアは賠償額が総額1兆円を超える可能性もあると報じている。
今回発表したリストラ策は株価の下支えだけではなく、巨額の賠償金に備える狙いもあるとみられる。
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