米財務省が12月13日に発表した11月の財政収支によると、関税収入は62億ドルと前年同月比でほぼ2倍に増えた。
米国は3月23日から日本などから輸入する鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の追加関税をかけ、5月31日からは一時的に免除していたEU、カナダ、メキシコからの輸入品についても関税を課した。
中国については、7月6日から340億ドル分に25%、8月23日から160億ドル分を追加して合計500億ドル分について25%の関税を課した。
9月24日に中国製品へのSection 232 による第三弾の追加関税(2000億ドル分に対して10%)を課したことで急増した。
自由貿易を求める関税に反対する組織 Tariffs Hurt the Heartland によると、関税収入の内訳は下記の通りとなる。
10月の対中国の追加関税は、26億ドルとなり、前月比で14億ドル増となっている。これは2000億ドル分の10%が加わったことによる。
これは2019年1月からは25%にアップする予定であったが、(12月1日から)90日間延期となった。この間に(1)米企業への技術移転の強要 (2)知的財産権の保護 (3)非関税障壁 (4)サイバー攻撃とサイバー犯罪(窃盗)(5)サービスと農業の市場開放 の5分野での構造変化の協議を開始し、結論を得る。
合意できなければ、25%に引き上げられる。月間14億ドルが35億ドルにと21億ドル増加する。10月の関税収入62億ドルが83億ドルまで増えることとなる。
2017年10月ベースに比して、53億ドルの増となる。年間では従来ベースより600億ドル以上の増加となる。
この関税はは米国企業が払っているものであり、最終的には米国の需要家に転嫁される。多額の関税増は、2017年末の大型減税の効果を打ち消すものとなる。
多くのエコノミストが、関税は米国企業の負担であり、多くの企業が投資を遅らせ、雇用のペースを緩め、レイオフなどのコストカットを行い、価格に転嫁する。最終的には米国のGDPを下げることとなる、と述べている。
Tariffs Hurt the Heartland は次のように述べている。
数字は嘘をつかない。米国人がこの関税を支払うのであり、しかも以前よりはるかに多い。この関税は、我が国を豊かにするのではなく、真逆である。データは関税が政府が決めたもののうち、まぎれもない失敗であることを示している。起こっているのは、企業と消費者が余分に支払うことであり、報復によって米国の輸出は急減少しており、政府が懸念している貿易赤字は急増する。
10月の輸入は0.6%減ったが、報復により輸出は37%減少した。
米連邦準備理事会(FRB)は関税引き上げによって、物価上昇と景気悪化が同時に進む「スタグフレーション」に陥るリスクを懸念する。
しかし、トランプ大統領は数十億ドルの関税を勝ち取ったと誇らしげに述べた。
We are right now taking in $ billions in Tariffs. MAKE AMERICA RICH AGAIN."
12月13日の米テレビ番組のインタビューで「中国がモノを米国に送る際に、彼らは25%を支払っている」とも語った。
米メディアは「大統領は中国製品にかけた関税の支払いを、米国民ではなく中国側が負担していると誤解しているのではないか」と疑問視する。
部分的には、関税引き上げ分の一部を中国の業者が輸出価格の値下げの形で負担しているケースもあるとは思われるが、25%分全てを負担するなどはあり得ない。
こんな誤解のもとに、政策が決められているとすれば、恐ろしいことである。
商務省などは当然、この点を理解しており、関税引き上げ対象の中国製品を選ぶ際に、直接の消費財は除外している。但し、消費財でなくとも、関税でコストが上がり、それを使った消費財の価格に最終的に転嫁される。
大統領は、中国製品の2500億ドル相当分の残りについても関税を課すと脅しているが、その場合には消費財そのものの関税が上がり、すぐに転嫁されることになる。
大統領は、関税引き上げで米国での生産増を図るが、輸入品よりも安価に生産することは難しい。逆に中国の報復関税を避けるため、中国での生産を図る企業も出ている。
コメントする