英国議会、Brexit案の採決へ

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英国議会は1月7日に再開し、1月14日の週に採決が行われる予定。離脱まで3カ月を切り、2度目の採決延期は困難で、いよいよ最終段階を迎える。

付記

採決は1月15日の予定。

英議会下院は1月9日、採決で離脱案が否決された場合、メイ首相が3日以内に「プランB(代替案)」を議会に提案するよう求める修正動議を賛成多数で可決した。
規定では「21日以内」となっていた。政府はEUと十分な協
議をすることなく議会に新たな提案をしなければならなくなる。


メイ首相は2018年12月10日、英国のEUからの離脱案を巡り、12月11日に議会下院で予定していた採決を見送ると表明した。
離脱案の内容に対して野党だけでなく与党の一部からの反発も強く、このままでは採決しても否決が確実だと判断した。

特に、Backstop案移行期間中にも北アイルランド問題が解決しない場合に英国全土をEU関税同盟に残すという最後の策)では英国が永遠にEU関税同盟に残ることとなり、「EUの政策決定に関与できないまま、EU規則に縛られ続ける」と不満が噴出している。

2018/12/12 Brexit 難航

英国の与党・保守党では12月12日、メイ首相に対する不信任投票が行われ、結果は信任が200票、不信任が117票で、メイ首相の続投が確定した。

信任されたメイ首相は官邸で会見し、北アイルランドのバックストップについて、12月13~14日に開催される欧州理事会(EU首脳会議)でEUから「法的・政治的な」確約を得るべく働き掛けを行う、とコメントした。しかし、EU側は合意文書を変更することは拒否している。

報道によると、アイルランド首相は1月3日にドイツのメルケル首相と電話で協議し、現行の合意文書に変更は加えないものの、英国にさらなる確約と保証を提示することで一致したという。

メイ首相は、欧州各国の首脳から離脱協定のいくつかの条件についてさらなる確証を得ていく方針。

コックス法務長官から受けた法的助言では、Backstopについて、「恒久的なものを意図しておらず、別の恒久的な取り決めに替えるという当事者の明確な意思を記すものだが、国際法では代替的な合意が取り交わされるまでの間、無期限に存続する」と指摘、「停止する権利がないため、英国が長期的、反復的な交渉に縛られる法的リスクがある」としている。

EUは合意文書の変更は拒否しているが、どのような「確約と保証」で法的リスクを避けられるかが問題である。


メイ首相は1月1日の新年の挨拶で、議会が離脱協定を承認すればイギリスは「窮地を脱し」、「意見の違いを棚上げにできるようになる」と述べた。
合意に基づく秩序だった Brexitが実現すれば、イギリスは住宅不足や技術教育の改善、国民保健制度(NHS)の追加予算確保といった課題にエネルギーを注力できるようになると説明した。

離脱協定が発効するには下院(定数650)での合意案承認が不可欠で、正副議長らを除いた639の過半数(320)の支持が必要である。

下院の体制は次の通りで、保守党全員が賛成しても過半数に及ばない。

議員 投票
保守党 318 316 議長(保守党)と副議長3人(保守党1人、労働党2人)の計4人は採決に加わらない。
民主統一党 10 10
労働党 262 260
他野党 53 53
シン・フェイン党 7 0 アイルランドのナショナリズム政党
エリザベス2世女王への宣誓を拒否して登院せず、議員歳費も受け取らず
合計 650 639
過半数 320

労働党は採決で否決された場合、政府に対する不信任案を提出し、早期の総選挙実施を狙っている。労働党党首は、労働党が政権をとれば、EUと再交渉してより良い離脱条件を引き出す道を模索すると述べている。

肝心の与党保守党でも離脱案への反対が強い。

調査会社のYouGovは12月17~22日に保守党員1,215人を対象に調査を行った。

https://d25d2506sfb94s.cloudfront.net/cumulus_uploads/document/veyvny2qzz/QMULResults_181222_ConMembers_Brexit_w1.pd

結果は次の通りで、離脱案反対が過半数で、合意なしの離脱にも賛成の方が多い。

・ 離脱案に賛成か?  賛成:38%、反対: 59%

・ 離脱案は国民投票の結果を尊重しているか?  Yes: 42%、 No: 53%

・ メイ首相の交渉は成功か?  Yes: 15%、 Noで、他のリーダーならもっと良い結果:37%、Noで、誰がやっても同じ: 43%

・ 労働党ならもっと良い結果を出せたか?  No: 96%

・ 否決の場合、総選挙を望むか?  No: 83% (保守党敗北が必至のため)

・ 否決の場合、国民投票を望むか?  Yes: 14%、No: 82%

・合意なしの離脱    好ましい、ほっとする:63%、失望や怒り:23%

採決で過半数をとるのは難しく、合意なし離脱の可能性が強まっている。

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